新しき刃の行方‐7
「すいません団長来てませんか」
「団長見かけませんでしたか」
「団長知りませんか」
あの日から数日。事態は全く変わっていなかった。オルガはたびたび師団を抜け、シューリは研修には行っているものの師団の任務に顏を出す回数は減ってきている。一度、オルガ自身に尋ねにいったのだが、“まだ若いんだ。それに事情も事情だ。不安なんだろ”帰されてしまった。その口ぶりからしてオルガもシューリの事情を知っているのだろうかと思うが、そんなこと関係ない。幸いにもオルガは師団に戻っていない分深夜動いているからプラスマイナスゼロであるが、シューリはマイナスに進む一方だ。これでは第五師団に戦力が加わるどころか減るだけだ。団員の士気も下がってきている。団長としてこの事態は見逃すことが出来ない。
原則団員関係のことは最高責任者のオルガを経て、国王様に報告するのだが今回は特殊なケースだと判断した私は直に国王様のもとを訪ねた。国王様にことの全てを話すと国王様の耳にも入っていたらしく、話は速い展開を迎える。
「その件に関しては風の噂で聞いておる」
「既知でいらっしゃいましたか…」
「私も手を考えていたところだ」
「…どういたしますか」
一息置いたのは、国王様が下す手の内容に目処がつくからだ。私だって長い間死神としてやってきたのだ。シューリに下されるべき罰ぐらい分かる。
「追放、だな」
予想的中。
師団異動してもきっと彼女は変わらないだろう。どこの師団にいても利益を与えず、更生の余地がない最悪の場合追放されるのだ。
「すまんな…アリネ」
「いえ、国王様に非はありません」
追放が出てしまう以上師団にも影響は出てしまう。だが、彼女の保留と追放を天秤にかけた時、より不利益を齎すのは彼女の保留のほうであることは一目瞭然だ。おそらく磨けば良い人材になるのだろうけど、生憎ここにそれを磨く道具はない。だから、追放させてもらう。彼女にとってもこれが正しい道なんだ。
追放にもさまざまなレベルがあるが、国王様が選んだのは正規部隊から予備部隊への降格の追放だった。追放の中でも最も軽いものだ。まだ更生の見込みがあると私が国王様に言って軽くしてもらったのだ。本当は更生の見込みなんてじゃなくて、ただの同情なんて言えなかった。
***
翌日、シューリ=アルヘッドは現国王カッシュ=グレーブの名に於いて正規部隊から追放された。
誰もこの判断に否定を述べなかった。誰もがこの決定は正しいものだと思い込んでいた。だが、彼女のもたらした刃は深く突き刺さっていた。そして、その刃はゆっくりと歯車の動きを変えていこうとした。
Episode.2新しき刃の行方