表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツバサ  作者: 皐月メイ
1/3

はじまりの物語

夢を見ていた。

長い長い……夢を。


まだ子供だった頃の夢。

父さんと少女が笑っている夢。

すごく懐かしくて、暖かい気持ちになる夢。


納屋の前で柵に腰かけた少女が俺を見て手を振った。

片手にシロツメクサの冠を持って。


あれは……誰だっけ?

幼なじみの……。


彼女が俺の名前を呼んだ。


「…………グレン」






<<はじまり>>



聖都アスガルドに伝わる伝承にこのような記述がある。


まだ、地上に文明が栄えていた頃、何百年にも渡る内乱によって土壌は汚染され、生命を脅かすものとなってしまった。作物は実らず、水は汚染され、資源は底をついた。更に天候の不順も重なり、多くの人々は死滅していったのだ。

その惨状を憂いていた時の王、ライネルは王位を弟に譲り旅に出たという。


数人の共と出た旅の目的は古から王家に伝わっていた楽園である約束の地を探す事であった。各地を探し回って数年、北の砦を訪れたライネルはとうとう無理がたたって床に伏してしまった。高熱が続き、次第にやつれていく身体。最早、身体を起こす事すら、難儀な程に衰弱していた。


それは、吹雪の夜の事だった。何かに導かれるように家来達を休ませ、彼はひとりフラフラと寝室のテラスに出ていった。外に出てすぐに彼は異変に気付いた。


寒くない……。


彼は自分がおかしくなってしまったのかと思ったという。極寒の地の果てであるはずなのにと。彼は思わず頬をつねってみた。


「痛い」


その時空から笑い声が聞こえた。鈴のような小さく可愛らしい声。彼は声のする方を見て言葉を失った。

無理もない。ブロンドのウェーブがかった髪の少女が光に包まれて降りてきたのだから。更に少女の背中には……大きな翼が生えていたのだから。


「俺は……死ぬのか?」


思わずライネルは少女に尋ねた。少女は首を振って微笑んだ。


「私は貴方達を助けに来たのです」


「助ける?」


ライネルは眉をしかめながら訊いた。少女は彼の様子を気にしない様ににっこりと笑いながら、空を指差しながら言った。


「約束の地アスガルドに」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ