初めての街
僕を拾ったこのエルフの名前は『メガルス・ガルドラ』。魔導士で、僕はこの人の弟子になったみたい。そしてこの人に拾われてすぐ、おかしな事に気づいた。尿意や便意が全く来ない。そう思っていたら師匠が丁度よく知りたい事を言った。
「なるほどね。魔力返還体質か、これは早めに魔法を教える必要があるな…。だがそれは、もう少し大きくなってからだね、それまでは魔力吸収で何とかしよう。エンフィル、君はやはり…」
エンフィルの頭を撫でて優しい笑顔を浮かべるメガルス。
4年程時が経ち、僕は魔法を習うようになった。
「師匠! 見て見て僕できたよ!」
僕は風魔法で石を定位置に浮かせていた。そして僕は、体の影響か、精神まで幼くなっているみたいだ。あの嫌な記憶はあるし、思考だけなら今まで通りだ。だが、今まで以上に好奇心旺盛で、話す時は純粋無垢な感じだけど、それでいい…僕は、新しい僕になったんだから。
「すごいじゃないか。では他の魔法を試してみようか。次は…」
メガルスが魔法を発動しようとした途端、エンフィルの腹が鳴る。
「師匠、お腹すいたー」
「ふふ、では夕食にしようか。何が食べたい?」
「うーん、あれ! 鳥とレタスのあんかけ!」
「わかった、それじゃあ少し待っててくれるかい?」
「うん!」
メガルスが調理をしている間、エンフィルは風魔法で物を浮かせて遊んでいた。
そういえば…。風魔法だけ他の魔法と何か感覚が違うんだよね…何でだろう?
「うーん…」
すると、調理を終えたメガルスが、エンフィルを呼ぶ。
「できたよ。エフィ」
「はーい!」
二人は向かいに座り食事を始めた。
「はふっはふっ! ごくん! やっぱり熱いけど美味しい!」
「ふふ、それはよかった。エフィ」
「うん?」
「明日、一緒に街に行くかい?」
『雷壁の街・サンノス』。師匠がたまに、買い物や何かしらの用事で行ってる所。師匠は僕がもう少し大きくなったらと言って、連れていってくれなかったけど、やっと行ける!
「うん! 行きたい!」
「うん。朝早くに行くから、準備をしておくんだよ」
「うん!」
食事を終えた後、エンフィルは急いで部屋に戻り、明日の為、服の準備をしていた。
「ふふんふ~んふふ~ん♪」
支度が終わった。そして夜を迎え、就寝。
早朝。二人は、生存の為の魔法が付与されたローブを羽織り、街へと向かい始めた。
「ねえ師匠。サンノスってどんな所なの?」
「サンノスは、壁で覆われていてね。その上から、『雷の恩寵を享けし者』が張った結界に守られている所だよ。そしてその結界は、攻撃の意思があるものだけを拒絶する。おかげで、街は平和で、賑わっているんだ」
エンフィルは目を輝かせ、わくわくで胸がいっぱいだった。しばらく歩いていると、街が見えてきた。
「ほら、みえたよ」
「わあ~! あれが、サンノス!」
高い所から見えたサンノスの大きさに興奮するエンフィル。そして二人は、サンノスへと向かった。
「ほぉ~…わぁあ~!」
「エフィ、あまり離れないようにね! ……仕方がない子だ…」
しばらく進み、エンフィルはメガルスにここへ来た目的を問う。
「ねえ師匠、ここで何をするの?」
「食材の調達、あとは…探索する?」
「うん!!」
二人はまず、市場へと向かった。市場へ着くと、青果店の店主に話しかけられた。
「お! メガルスの旦那じゃねーか!」
「繫盛してるね」
「おかげさまでな! おん?」
僕は師匠の裾を掴み、後ろに隠れて顔を覗かせていた。
「あんたに娘がいたのか…⁉」
「いや、この子はエンフィル、私の弟子だ。この子は親と生き別れてね、私が面倒を見ている。それと、この子は捨てられた訳ではない」
店主は何かを察した様子。
「そうか…。嬢ちゃん、これやるよ…」
店主はエンフィルにりんごを手渡した。
「え…いいの?」
「ああ! だが次は、ちゃんと払ってもらうがな!」
「……ありがとう、おじさん!」
「おう!」
メガルスは、他の買い物をして、それらを魔法で創り出した異空間に収納した。そして店主は、最後に一言。
「今後ともごひいきにな!」
それを聞いた二人は軽く手を振り、離れた。そして二人が街を散策をしていると、突如後ろから女性に話しかけられた。
「メガルス…? メガルスなの⁉」
メガルスはその声に聞き覚えがあり、驚いた様子で振り返る。そこには、若い女性がいた。
「リリィ…⁉ まさか…ここで会えるとはね…」
メガルスは、少し気まずそうだった。すると『リリィ』という女性の顔が、少しこわばる。
「何で…何で急にいなくなったの…!」
リリィの目には、涙を浮かべていた。一方エンフィルは、メガルスの後ろから顔を覗かせていた。
この人何だろう? 師匠とどんな関係なのかな?
「いや、置手紙を残したはずだが…」
「そういう事じゃないの!! って…え? あんた、子供いたの⁉ ……子供の前で怒るのは大人げないよね…。ふぅ…それじゃあね…」
リリィは怒りを抑え、立ち去った。
「さっきの人は?」
「君が生まれる前、私は冒険者だったんだが、彼女はその時の仲間だ…」
「勘違いしてるけどいいの?」
メガルスは少しの間を置いて、質問に答える。
「私が言っても聞いてくれなさそうだから手紙でも送るよ…」
「……そっか」
二人はその後、帰宅の為、街を出た。空は既に夕暮れだった。
「本当ににぎやかだったね!」
「楽しめたかい?」
「うん!!」
二人は、来た道を歩く。そしてエンフィルは、気になった事を質問した。
「ねえ、師匠って結構遠いのにすぐ帰ってくくるよね? 魔法使ったの?」
「鋭いじゃないか。その通り、魔法を使ってすばやく移動している。エンフィルもいつか同じ事ができるかもね」
エンフィルは得意げなひょうじょうだった。
「もちろん! 僕もすぐに追いつくからね!」
メガルスはエンフィルの頭を撫で、微笑で返した。
それよりさっきの女の人…手紙だけで大丈夫なのかな?




