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「浮気調査から暗殺まで、依頼金次第でなんでも仲介」社  作者: 倉石 雨


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6/9

捜査協力依頼:県警本部爆発ス

「県警本部爆発ス」

1月1日夜明け前、唐突にそれは起こった。

なんの予告も前兆もなく、なんの犯行声明も無い爆破テロ。

死者28名(確認されたもののみ)、重軽傷者100名超、行方不明者数名という凄惨極まりないこの事件は全国で大々的に報道されたものの、その報道内容は憶測や不明瞭な言葉が並んでいるだけの大変薄いものだった。

「"東京国内軍"傘下組織による報復的犯行か」

「公安主導の捜査本部設置、捜査本格化の可能性。しかし他県に対する捜査員徴収は行われないものと確定か」

「捜査本部声明『絶対に逮捕する』しかし捜査員人数不足という"裏側"」

どれも事件の内容にはあまり触れていない。


「…で、捜査を手伝う有能な人員が欲しいということですか」

私が今いるのは、その爆破された県警…ではなく都内の千代田区霞が関2丁目1番2号にある警察庁だった。

具体的に言えば警察庁の警備部。

より具体的に言えば、この前の依頼人である追崎瑞彦のいる場所。

対面に座る追崎は疲労感を全身で体現していた。

寿命が10年は縮んでいそう。

「どんなに探しても証拠が出ないんだ…本当に申し訳ないが…手を貸して欲しい」

「相応の額を出してくれるのであれば…喜んでその依頼、お受け致しましょう」


今回は単独では難しそうなので、専門家と探偵のバディチームを特別に用意することにした。

「今日のは表でやる仕事です。報酬は○○○ほど、専門家として探偵の補助に付いてください。あぁ、ハム(公安)には話を通してあるので堂々と今回は動けますよ」

「珍しく捜査協力依頼…ありましたよ。貴女もテレビで1度くらい観たんじゃないでしょうか、例の爆破テロの件です。そんな謙遜しなくて良いですよ?知識に関しての補助さえあれば、貴女は強いですからね」

そう電話で声をかけて、癖の強い二人を呼んだ。


早朝、某県警本部、1.1爆破テロ特別捜査本部。

今日も相変わらず捜査は進まない。

僕は爆破跡の捜査に志願してみたものの、実際に捜索してみたところで、よくわからなかった。

警察庁からの増援として、今日から特別な民間協力者二人が助っ人として来るらしい。

噂によると、なんでも"探偵"と"専門家"が来るのだそう。

フィクション作品の某名探偵じゃあるまいし、まぁただの与太話だろう。

4回ノックの後、捜査本部が設置された部屋の扉が開く。

どんな奴らなのだろう。

扉が開いたと同時に周りのざわめきが止まった。

僕も少し遅れて"それ"を見て、絶句した。

天然パーマと短い髭が特徴的なダンディな180cm近い身長のスーツ男と、160cm程の背丈の紺色のブレザーを着た黒い長髪の少女。

何だろう…こう…場所によっては仲睦まじく…或いは、場所によっては犯罪臭のする組み合わせだ。

…眺めていると、変に男の方と目が合って少し気まずくなった。

「注目されてますね。きっと援交やってるみたいな組み合わせって思われてますよ」

少女がそう言う。まぁ…思った。

「いや、多分入学式だか卒業式だかで一緒に記念撮影してる仲睦まじい歳の離れた兄妹っぽいとか思われてるんじゃねえの?」

そう男が返す。それもまぁ…思った。

「初対面の人間を兄妹扱いですか。良い度胸ですね」

少女が男に目を向け、無表情でそう言う。

「いいじゃないか?今回は俺とお前のバディなんだからな。な?探偵さんよ。ハッハッハ」

そう言って少女の肩をバンバンと叩く。

探偵…?え?そっちが探偵?

「まぁそうですね。私とバディである間は、くれぐれも"やらかさないで"くださいよ?専門家(爆弾魔)さん」

そう言って少女は肩を叩いてきた男の手を振り払った。


「お二人には最新の事件資料をお渡しいたします」

一人の若い女性が私達の目の前の席で、そう言う。

私は専門家こと爆弾魔の横で、今事件について説明を受けている。

爆弾魔の名は斧鳥 隆。父親は康介と言うらしく、聞いたところによると東京国内軍で爆弾製造をやっていて、逮捕されそうになり最後は派手に自爆したらしい。

彼自身は小学生の頃から、父親の"英才教育"を受けていたらしく、東京国内軍の爆破テロ事件に関して、幾つか手伝ったこともあったのだそう。

少なくとも"彼女"からの説明ではそのように言われた。


俺はいかにも探偵らしくない探偵少女の横で、事件について説明を受けている。

探偵少女の名は麻世井 真衣香。姉は音寧と言うらしく両親は死んだらしい。姉妹はどちらも探偵をやってるのだそうで、姉は事務所を持っているのだそう。

今は高校に通っているそうで、中学生の頃「しと旅館連続殺人事件」に巻き込まれ、その際、犯人逮捕に貢献した事で「中学生探偵」として一時期有名だったらしい。

少なくとも"彼女"からの説明ではそのように言われた。


事件内容は大体こんな感じだった。

・車両爆弾3発による攻撃

・犯行声明や予告は無い

・車両爆弾の設置は当日夜間のうちに行われたようで、計4人(逃走車運転手含む)が実行犯であったと防犯カメラの映像で判明。


「これ…」

…もしかして?

「あぁ…東京国内軍のやり方と似てるな」

斧鳥はそう肯定する。考えていたことは一緒らしい

「模倣犯…それか残党…?」

私は考える。模倣により世間の馬鹿さを笑う愉快犯か…はたまた残党による何らかの報復か…

Who(誰か)は置いておけ。どうせ捜査すればその内わかるからな…じゃあ、とりあえず行くとするか」

そう斧鳥は言う

「そうしましょうか」


私たちは捜査本部のすぐ近くにある事件現場に来ていた。

正直、探偵であるとはいえ、爆破現場を見せられても何も分からない。

ぼうっとそこら辺を眺めている私に対し、斧鳥の方は興味津々といった様子で執拗にあちこち調べていた。

「麻世井、幾つかわかったことがある」

そう言って斧鳥はこっちに来いの仕草をした。

「はい」

専門家にはやはり勝てない。

「まず1つ目、これはどうやらかなり計画的なもので、しかもかなりの経験がある専門家によるものっぽいな。2つ目、何度も事前に下見に来てるみたいだな。適切な位置に適切な量の爆薬を積ませて配置してる。3つ目、この感じ多分、爆薬も搭載量も全部同じ人間に作られ、計画されてるな。」

そう言って斧鳥は区切る。

…はぁ…勘が良いって最悪

私は彼が言ってほしそうな言葉を発した。

「4つ目…貴方はその人物について心当たりがある。違いますか?」

「ご明察、流石探偵さんだ。俺はこのやり方をする人間を一人だけ知ってる。」

面白がるようにそう言う。

「けれど貴方の口から出すことはできない。同族だから…違う?」

対して私は溜息をつきながらそう返した。

「そうそう…いやまぁ少し違うがな。だがヒントを出してやる」

聞く側にしか立てないのが辛い。

「5つのヒントからその人間の特徴を割り出せたら答え合わせと行こうじゃないか」

「…もしかして?」

私は既に会っている?犯人に?

「ハッハッハ…それはヒントを聞いてからのお楽しみだ。まず1つ目、この爆破テロの爆弾達は徹底した調整がなされていた」

「徹底した調整…」

…調整…?どうしてそんな面倒な事をしていた?

「車に満載の爆薬を積めてるだけ…じゃなかった?」

「そう、何故か県警全部を吹っ飛ばさなかった。その方が楽にも関わらず。2つ目、東京国内軍に傘下組織なんてものは無い。」

「傘下組織が無い…東京以外に支部は存在しないの?」

「無い。断言出来る」

つまり、東京国内軍とは関係の無い犯行…で、模倣犯…ということになる?

東京国内軍なら警視庁に爆弾を仕掛けるはずだ。

「模倣犯と断じて良いってこと?」

「そうだな。あれだけ詳細な手口を知っているにも関わらず…だ」

「なるほど」

あれだけ詳細に理解しているにも関わらず、模倣犯に過ぎないというのがおかしいということになるのだろうか

「3つ目、何の犯行予告も声明も無い」

つまり思想犯ではない…?爆破に何か意味があった?

「…爆破により何らかの利益を得ようとした?」

「4つ目、1月1日夜中の犯行」

日付がちょうど良すぎる…

「愉快犯…?」

「…両方合ってんじゃね?正確に言えば利益を得た事を隠すための愉快犯偽装だと思うが」

「なるほど…」

「5つ目。捜査本部は人員不足の癖に、碌にハム(公安)は増援を寄越さねえ。そして俺達だけがここに送られた」

「…………捜査本部それ自体が公安にとっては被疑者を囲い込むための檻?」

「おー気づいたか。そう、俺もそうだと判断した。で、だ。もうわかるだろ?」

…そういう事か。

何故、真相を理解した時点で事件現場を1度出て、誰にも聞かれず二人で話せる場所に行かなかったのか、何故、"捜査本部(被疑者達)のすぐ近く"である事件現場でずっと真相を考察していたのか。

「…出て来てください。さっさと私達を消したいんでしょう?」

少し声を張ってそう言った。

すると一人の若い女が出てきた。

私達に対する説明役だった女だ

「まさかこんなに早くバレるとは。()の計画が台無しじゃん」

そう言って私達に対して交互に拳銃を向けた。

「ハッハッハ、面白い奴だな。遅かれ早かれバレてただろうに」

「うるさい…僕がやったなんて証拠は無いんだからバレるわけないでしょ」

そう言って斧鳥に拳銃を向け、ゆっくりと斧鳥の方に歩み寄って行く。

「そうか?なら何故、証拠の残ってない事件現場に行く俺達を付けた?」

「う…うるさい…」

まともな返しが思いつかなかったらしい。

「嫌な上司でも殺したかったのか?」

「そ…そういうのじゃ…」

段々女の声が弱くなってきている。

意識は斧鳥の方に向いている。

いや、()()()()()()()()()()()()()

私はその隙に斜め後ろから女に飛びかかった。


その後無事、女は拘束でき、公安に突き出すことができた。

「ハッハッハ、よく頑張ったなカタギの癖に」

「拳銃を向けられてるのによくあんなベラベラ喋ってられましたね?」

「あいつの目には『殺る』って感じの力みが無かった。多分有名になり過ぎた事とか、殺し過ぎたことに罪悪感でもあったんじゃねえの?お前こそ拳銃1度向けられたのによく動けたな。」

「まぁ過去に似たようなことがあったので」

"しと旅館連続殺人事件"でかつて私はナイフを持つ相手に後ろから飛びかかって拘束したことがあった。

その時と同じだ。

「じゃ、報酬貰いに帰るか〜」

そう言って斧鳥は車に乗り込む。

「そうしましょうか」

助手席に乗り込んで私は少し微笑みながらそう応えた。

次回、(自称)主人公と(迷)探偵

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