捜査協力依頼:警察に頼られる探偵?
ここは某府の警察本部。
「どうか頼みます。無理なのはわかっているんですが、他にもう宛が無いんですよ」
私が頭を下げているのは高校生くらいの銀髪碧眼の少女。スーツにネクタイ、黒手袋といった出で立ちで、若干大人びているように感じる。
…少女という見た目に騙されることなかれ。
彼女は有能で最適な人材を紹介する仲介業者としてトップクラスの実力を持っており、我らが府警も彼女を頼って数々の最適な民間協力者を得た経験がある。
「ふむ。囮として立ち回れるほどの実力と経験を持ち、かつ弱々しそうな容姿をしていて、ある程度の体力がある、ひ弱そうな性格或いはそう演じれる実力を持つ人材…ですか」
「はい…いませんかね?依頼料は200万が出せる精一杯なんですけど」
安すぎるだろうか…だがこれくらいしか予算が無いのが現実だ。
少し考える仕草をした後、彼女は言う。
「いますよ。おそらくこの上なく最適な人材が」
マジ?
「是非是非お会いしたいです。その民間協力者に」
「依頼料は前金で100万、達成で100万で良いですね?」
「はい。もちろんです」
前もって用意しておいた100万の封筒を渡す。
彼女が受け取り、中身を取り出し素早く確認する。
「依頼、承りました。」
無表情な顔で彼女はそう言った。
"前金で10万、達成で150万の依頼です。依頼人の場所は○○府警察本部で、1度会って貴女自身が依頼内容を確認してください。○○府行き新幹線のチケットも同封しておいたので良ければ利用してください。(ちなみにチケットの費用は私持ちです。その事をよく理解して依頼に臨んでください)"
朝起きたら郵便にこんな手紙が入っていた。
丁寧な字、言葉遣い、名前が書いてなくともわかる。"彼女"だ。
麻世井は頭を抱えた。2つの理由で
1つ目は某府行きの新幹線のチケットの日付が今日だから
2つ目はいきなりこんな高価な依頼、唐突過ぎて情緒がおかしくなっているから
最低限の荷物をキャリーバッグとバッグに詰め込んで急いで電車に乗り新幹線駅に向かう。
冬にも関わらず汗だくになりながら新幹線駅に着いて、ギリギリで乗り込めた。
セーフ…
すると電話がかかってきた。
急いでスマホを取りだして電話に出る。
「ご機嫌よう。新幹線、ちゃんと乗れました?」
平坦な声。やっぱり彼女だ。
「はい!ギリギリでしたけど」
「日頃から早寝早起きしないから、そんな余裕の無い日程になっちゃうんですよ」
確かに昼前くらいまで寝てたせいでギリギリになってしまった面もある。
「毎日5時起きくらいが普通ですよ。その事を胸に刻んでおいてください」
「はい…」
冗談っぽいことを言われても、何も言い返せない。私の落ち度だし。
「具体的な仕事内容、今のうちにある程度聞いておきたいですか?」
「お願いします。」
「まず前提として、依頼人は府警の刑事さんです。つまり不倫調査とかじゃなく事件捜査の協力依頼です」
「なるほど…」
まるで小説とかアニメの探偵みたい
「で、捜査対象は現在、関西広域連続誘拐殺人事件の被疑者とされる編田 茜さん28歳。」
「…なるほど…わかりました。頑張ってみます」
「結構。今回頑張れば私と貴女の府警での評判が上がりますからね、人脈を得るという意味でも、頑張ってください」
ぶつりと切れる。
…殺人犯の捜査…怖いけど頑張ってみよ。
「貴女が、今回の?」
私は目の前にいる少女を見て戸惑っていた。
小柄で細身、服装はシャーロック・ホームズのソレ。
いかにも相手を"捜査している"とわかりやすい囮役で…もしかするとそういう専門の人なのかもしれない。
「ご依頼人様でお間違いないでしょうか。私、麻世井探偵事務所の所長をやっております、麻世井音寧と申します」
ぺこりと頭を下げる。
名刺交換はしない主義なのだろうか。それともそういう"設定"でしかないから初めからそんな事務所存在しないのか
「早速、依頼内容の方を…もしや、既に前もって確認されましたかね?」
「はい。彼女を通じてある程度は」
速いな。
「では、軽くおさらいを。捜査対象は編田 茜さんで、貴女には積極的に張り込んで捜査する役をやってもらいます」
"役"つまりそう見せかけろという意味だ。
「はい…頑張ります」
ちゃんと好印象を残せただろうか…相手が名刺を取り出してたのにこっちは無いから交換できなかったし…途中緊張がマックスに達しちゃって弱そうな声出ちゃったけど…結果を残せば…きっと良いよね。
よし頑張ろう。
と、言うことで今私は茜さんの住む家の近くに張り込んでる。後ろの方では万が一を想定して刑事さんが張り込んでくれてるらしい。
ここ数日、私の周りを付けている子がいる。
カフェで、コンビニで、マンションで、何かに隠れながらずっとこちらを見てきている。
そして私に向けられる監視の目がそれ以外に無くなった気がする。
あんな探偵もどきが新任の警察とは思えないし、多分、
私への捜査を切り上げた警察と、それが許せなかった被害者家族に雇われた探偵もどきが入れ違いになったのではないだろうか。
ちょうど良い。趣向は少し違うけれど、あの子をストックして、新しくこれから仕入れる予定のショタと何かさせようかしら。
「ご機嫌よう…お嬢さん?」
捜査対象の茜さんに話しかけられた。
「ご…ご機嫌よう…?」
「もしかして私を尾行でもしてた?」
「えっと…」
途端に首を袖絞込みで絞められた。
苦しい。
必死に足掻くものの上手くいかない…
死んじゃうのかな…私
やらかしちゃった…
「…ごめん…なさい…」
涙なんて流して可愛らしくそう声をあげる。
落とした探偵もどきの少女を抱えて家に入る。
いつもの防音室に入り、服を脱がせ椅子に縛り付ける。
さてどう痛めつけよう。
防音室を出て倉庫に器具を取りに行くことにした。
「これより!警察官職務執行法第5条及び第6条の規定に基づき、被害の未然防止を目的として強制立ち入りを行う!」
前もって張り込んでいた武装状態の刑事達を率い、私は即座に編田宅に突入する。
彼女は身体を張って私達の突入する機会をくれた。
その機会を無駄にする訳にはいかない。
「徹底的に探せ!」
「マル被確保!」
奥へ先行していた刑事の声がそう叫ぶ。
「マル害を探せ!絶対に死なせるな!」
「で、結局目立った傷もなく見つかった訳ですか」
「一応少しの間検査のため入院しましたけど、元気です!」
某府某市内のカフェで、2人の少女がそんな風に話す。
麻世井は事件協力に関して感謝状が贈られたらしい。
「これが依頼達成の報酬です」
150万の入った封筒を銀髪の少女が出す。
「やったぁ」
「名が少しは売れたのできっと次の依頼も早めに来ますよ。それまでアルバイト、また頑張ってくださいね」
銀髪の少女がそう言い残して席を立った。
彼女の席にお金が置いてあるので、多分自分の代金分は払って行ったのだろう
「はい!頑張ります」
麻世井は彼女の背に向けそう言い放った。
次回、マッチポンプなテロリスト退治




