暗殺依頼:「社長がとてもうざいので」
今日もまた出勤しなきゃいけない…
あんな、うざいことばっかりしてくる人の下で仕事とか無理。
…もういっそ殺せないだろうか
「と、言うことで電話した次第です」
「はぁ…それって普通、仕事を辞めるとか、内部告発をするとか、そういう路線で社長を遠ざけるものじゃないんですか?」
溜息をつきながら電話越しの女性の声が平坦にそう言う。
「あれがのうのうと生きてるということ自体がうざいので。価格は問いません。殺してください」
それなりにお金はある。
これから生きていく上で、あれが死んでるのと生きてるのとでは大きく違う。
あれを殺して美味しいお酒を飲みたい。
「わかりました。我が社が紹介できる最高の人材を用意します」
そもそもなぜ私がこんな暗殺を依頼できるような組織と繋がれたか。
結論、調べたらサイトが出てきたので、仲介を求める旨を送って住所とか書いたら、なんか数日後ポストに電話番号が書かれた郵便が来て、かけたら繋がった。以上。
実際に死んでくれるだろうか。
まぁ、既に「自分の道を見つけたいから」と仕事を辞めてるし「私が暗殺を依頼して、実際に死んだかもしれない」ということに愉悦を浸れるだけでも充分なのだけれどね。
2時間程度経った後、電話がかかってきた。
「もしもし。ご依頼人様でお間違いないでしょうか」
「はい」
「依頼に合う人材、ご用意できました。料金の方は○○○となっております」
「意外と安いんですね」
フィクション作品なんかではもっとふっかけられてるイメージがある。
「1度でこの額ですよ?高いですよ」
いや、暗殺者雇用の相場とか分からないから。
「そういう感じの常識は、私には分からないので」
「そうですか。とりあえず、これから言う番号に振り込んでいただければ、依頼を始めるので。」
といって番号を言われる。
「わかりました」
「一応確認しますが、暗殺対象は宇崎重工株式会社、社長の宇崎太郎氏でお間違いないですね」
「はい」
「わかりました、宇崎様。では、成功次第報告させていただきます」
「はい」
電話が切れる。
大きく伸びをして、欠伸が出たので、二度寝することに決めた。
自由って良いね。
「おやすみなさい」
「対象は宇崎重工の宇崎太郎です」
旧財閥系の血を継いでる人間ね
「方法は?」
事故死にでもさせられるのだろうか
苦しみながら死ぬようにさせられるのだろうか
「指定されておりません」
何がなんでも殺したいらしい
「わかった」
電話が切れる。
手段は問わないのなら…爆殺でいっか。
freeWiFiのあるファミレスを出て、家に帰る。
帰っている途中に1番最近の宇崎重工の広報関係動画を観て、使っている車を洗う。
偶然にも最近起こった不倫疑惑の件で幾つかのメディアがニュース動画をあげていた。
…見つけた。
家の地下車庫に向かう。
数台の車の中、"後部にANFOを山積みにした黒塗りの中古プリウス"を探し出し、乗り込み、走り出す。
走っている途中、私の車を追うよう"理解ある"知人に頼む。
「GPSを使って、バイクで私のプリウスを追ってきて。事故る予定だから、その後出てきた私を乗せて、走り出して」
「おいおい…今日は何やらかすつもりだ?」
「2割で良い?」
「わかった…やるよ」
大体、依頼料の2割を出せば彼は従う。
宇崎太郎は情報によると運転手を付けず、自分で運転するタイプらしい。
わかりやすい銀色のフェラーリ。
ちょっぴりセンスが古い気がする。
良い感じに追跡し、時間や速度を調整して宇崎の車の前に出る。
「ばーん」
ブレーキを踏み込み激突する。
即座に外に出てバイクを探す。
大した威力にはならないけれど、エアバッグの作動で多少の時間稼ぎはできるはず。
「乗れ!」
バイクが来た。全速力で駆けて乗り込む。
「掴まれよ!」
片手で彼を掴みながら古いガラケーを取り出し電話をかける
それに呼応して、乗っていたプリウスが爆発し、宇崎太郎ごとフェラーリも吹っ飛ぶ。
「依頼完遂。見事に吹っ飛んだね」
後ろを見ながらそう言った。
「あ?そうだな。2割ちゃんと出せよな〜」
彼は運転に必死らしい。振り向きもせずそう言う。
定員外乗車違反で警察に停められたくないのだろうか
「依頼完遂致しました」
片手で握るスマホから流れる声。
「―――本日、二台の車両が爆発炎上し、宇崎太郎さん(56歳)が亡くなりました。二台のうち一台には大量の爆薬が仕掛けられていたとのことで、警察はテロとして捜査しています。」
テレビから流れる緊張感あるアナウンサーの声。
笑いが止まらなかった。
あの毒親は文字通り木っ端微塵になって消えた。
清々しい。
「ありがとうございます」
「またのご利用、お待ちしております。宇崎様」
電話が切れる。
この会社にハマってしまったかもしれない。
次回、はちゃめちゃ浮気調査




