表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

第七幕 転生ヒロイン覚醒(自称)事件、発生中ですわ

覚醒、使命、選ばれし存在――それらは、響きはよくても根拠のないまやかし。

今回は“転生者あるある”を盛大に詰め込んだヒロイン様がご登場です。

けれどこの世界では、演出よりも、実力と誠意が求められますのよ?

「……リディア様。マリア嬢が、“前世の記憶が戻った”と宣言なさいました」


「……あら。前世の記憶ですの?」


「ええ。“私は地球という星の令嬢だった。名前はマリア・スズキ。特別な使命を持ってこの世界に転生してきた”と――」


「……“スズキ”?」


「はい。しかも、現代知識を使って“開運ミサンガ”なるものを校内で販売し始めたそうです」


「……それ、商業ギルド通ったかしら?」



---


私は静かに扇子を閉じ、スカートの裾を整える。


「よろしいわ。久々に“異世界転生あるある”の添削タイムですわね」



---


数時間後、王立アカデミー中庭。


そこでは、マリア嬢が熱狂的に語っていた。


「この世界を救えるのは、地球から来た私だけ! だから私は、王子殿下と“世界を変える革命”を起こします!」


「革命って……ミサンガで?」


「このミサンガには“愛と癒しと開運”の魔力がこもってるんですっ!」


……ええ、つまりは「手作りアクセを異世界で販売し始める」のテンプレですわね。



---


そのとき、私がすっと登場すると、生徒たちがどよめいた。


「……あ、ヴァンディール嬢だ」

「今回もやるのか、“令嬢式公開ツッコミ”……!」


マリア嬢がこちらを睨む。


「来たわね……テンプレ破壊者!」


「まぁ、ありがたいご紹介ですこと。では、本日は“異世界転生キャラ自己診断”の時間ですわ」



---


《異世界転生自己診断チェックリスト》


※リディア特製


1. 前世は地球の高校生かOLか主婦か?



2. 知識だけで“経済革命”を起こした気になっている?



3. 王子がやたらと好意的だから王子妃狙ってる?



4. 自分が物語の主人公だと思っている?



5. 既存令嬢を“悪役”だと決めつけていない?




「……5つ中4つ以上当てはまったら、それは“ただの自己陶酔”ですわよ」


「な、なによそれ……!」


「マリア嬢、貴女は転生者ではなく――**“転生という言葉に酔ってしまった平民の少女”**ですわ。

その夢から、そろそろ目覚めてはいかが?」



---


マリア嬢は言葉を失い、ただ震えていた。


王子は口を開こうとしたが、周囲の生徒たちは既に冷めた目でミサンガを見つめていた。


「魔力、入ってなくね……?」

「しかもこのミサンガ、先週学園祭で売ってたやつの色違いじゃね?」



---


私、静かに告げます。


「ヒロインというのは、選ばれるものではなく、“選ばれるに足る者”が自然と立つ位置のことでしてよ」



---


数日後。ミサンガ販売は撤去され、マリア嬢はしばらく静養を取ることになり、謹慎として1週間の停学となった。

王子は学園での混乱を抑えられなかった責任を取って王城での1週間の謹慎を命じられた。


騒動は終息――と、思われたが。


「……リディア様。新たに“前世は日本の社長令嬢”と名乗る少女が転入されたようで」


「……ふふ。テンプレの耐久力、思ったよりしぶといですわね」


ご覧いただき、ありがとうございました。

“私は選ばれし者”と語るヒロイン様。その言葉の裏にあるのは、空虚な設定と未熟な承認欲求。

リディア嬢が示したのは、“夢”よりも“学び”が大切だという、ごく当たり前のこと。

次章では、新たな転生者――今度は“社長令嬢”が登場いたします。

知識の乱用か、それとも本物の改革か。どうぞご期待くださいませ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ