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第5話

一二三が倉庫の自分の部屋で籠る。

赤城が扉の前まで来て話し出した。

「いろちゃん。色々、混乱すると思うけど、1つ聞いて。代理人として、ヒューマノイドが役を演じていたの。いろちゃんの郷があそこまで侵食されてるとは私も知らなかった。ごめんなさい。いろちゃんが見た妹さんや村人は…一体どこに行ったのか…ごめんね。力になれなくて…」


ヒューマノイド。機械が人間を模した姿のこと。彼らはAIで、自ら学習して人間になっていく。まさに人類の代理人である。

ヒューマノイドと人間の区別は見た目ではつかない。区別できるのは言動、行動だ。人間にしか感じないことを表す独特な表現である言動。人間にしか思わないことを表す本能的な行動。AIは"基礎"が必要になる。インコやオウムが真似をする様に誰かを真似して学ぶ必要があるのだ。

正直に言えば、ヒューマノイドは学習能力を持った動くマネキンに過ぎない。だが、人間がいることでマネキンから代理人に進化を遂げる。だんだんと人間に興味を持ち、人間の真似をする。さらに、真似という行動が無意識になっていく。この無意識に真似をするという法則性をミラーニューロンと言う。彼らがこの法則を手に入れた時、人類が滅び始め、代理人が食物連鎖の頂点に立つのだ。

とはいえ、必ずここに辿り着くわけではない。人間や動物にも起きるミラーニューロンは神経細胞の働きである。ヒューマノイドはこの仕組みがないため、神経細胞の役割を持つものが必要である。その役割を持つもの、それこそが人工知能、AIなのだ。このAIこそがヒューマノイドによる侵食の心臓であり、誕生の秘密である。

2045年、ついにヒューマノイドの侵食が始まってしまったのだった。そして今日に至る。


「…いろちゃんが受け止められないのもよく分かる。いきなりすぎて意味不明だよね。ゆっくりでいいから、こっからがんばろうよ。ね?…まだ大丈夫だからさ…今日はゆっくり休んでね…」



12月12日 宇宙…


アメリカ国旗のスペースシャトルが宇宙を飛ぶ。

宇宙には黒い衛星が浮遊している。


「これより回収作業を開始する」


衛星に触れようとした瞬間、宇宙飛行士が跳ね返され命綱がピンと張った。


「大丈夫か!」

「触るな!吹き飛ばされるぞ!」


衛星は空気を出してどんどん離れて行く。


「…あの衛星、まるでオーパーツだな」

<こちらシャトル。これ以上の回収は危険だ。衛星の軌道もずらすわけにはいかない。戻って来てくれ>


「了解」


衛星のカメラでシャトルが撮影された。


10日後…


一方、一二三はPCで検索していた。

[ブラックナイト衛星回収作業か。ドローンとの関係性は?]

[ブラックナイト衛星から発信される電波。19世紀から続く電波のナゾ]

[ドローンのハッカーは特定できるの?警察も悪戦苦闘]

[今月でテロの被害者統計は200人越え]

[ICPOを本日中に日本へ派遣か]

[ヒューマノイド 製造場所は不明]


「ブラックナイト衛星…」


ブラックナイト衛星。地球を周っている真っ黒な衛星で、正体不明の衛星。なぜ、打ち上げられたのか、なぜ、真っ黒なのか。どこの国の衛星でもなく地球外生命体が地球人を観察するためだといった、様々な都市伝説が生まれている。

記事の1つに、ブラックナイト衛星回収を行おうとした宇宙飛行士へのインタビューと書かれた記事がある。動画付きだ。

動画を再生すると、ブラックナイト衛星が映っていた。

宇宙飛行士同士の会話の中、ブラックナイト衛星に何か書かれているように見えたものがあった。

私の目が輝く。よく見ると、そこには06 Parts 01と書かれている。

私には身に覚えのある数字だった。


「6号機…」


ミニメカニカル6号機。私のお父さんが開発したロボットの名前。6号機は武装の他に追加パーツがある。私が幼い頃、お父さんの開発工場であのPartsの文字を見た。


「…でもどうして…?」


…お父さんが絡んでいる。よくわからないけど、なんらかの形でお父さんが絡んでいる。この衛星がドローンにも関わっているんだ。私の直感がそうだと言う。

…行こう。

シャワーを浴びて、いつもの格好をして、財布と、寝袋と、水と、歯ブラシと、その他諸々をリュックに詰めて持ち出かけた。ここに帰れることは、保証できない。


「行ってきます」


「え"え"っ!?いろちゃんが脱走!?」


アイスを食べ終わった赤城がアーロンからの通話内容に驚く。


「目的地も分からないって…どうしていきなり…。わかった。一応、居そうな場所探ってみる。うん。ありがとう。ごめんポベーシャ!急用できちゃった!」


通話を切ってベンチを立つ。


「うちも行く」


ポベーシャが言った。


「ポベーシャはついてこないで」


赤城に即断られたポベーシャがびっくりして落ち込む。


「…ポベーシャ。私はポベーシャが嫌いなわけじゃないよ。大切な友達だし、孤立させたくない。でもね、よく聞いて。きっと、私が行く所は危険な所だと思う。巻き込みたくないの。ポベーシャの過去だって私は知ってる。昔みたいになってほしくない。親じゃないけど、普通の学生生活を過ごさせてあげたいと思ってる。だから、お願い」


赤城は走った。


いろちゃんの部屋に入ると、机には私が調べていた武装ドローンが置かれていた。

一二三の検索履歴を調べると、そこにはドローンのことについて埋め尽くされていた。

3つ、ドローン関連のものじゃない検索履歴があった。


「…南海トラフ…ブラックナイト衛星…JAPNICAL(ジャパニカル)…」


大規模なあの大震災でいろちゃんのお父さんは亡くなった。私が1つ聞いていることは、お父さんが造っていた物。それは二足歩行の有人型ロボットだった。ミニメカニカル6号機、だったかな。そのロボットを開発し、いろちゃんのお父さんが勤めていた子会社。それがJAPANICAL(ジャパニカル)。これらにブラックナイト衛星が関与している…?


「赤城」


後ろからアーロンに声をかけられ、後ろを振り向く。


「アーロンと…ポベーシャ?」

「赤城。俺らをただの友達かなんかだと思ってねぇか?」

「…え?」

「赤城。お前な、1人で背負いすぎなんだよ。ポベーシャも俺もここに住んでる。いわば家族同然なんだ。アイツが苦しんでるなら俺らも助けるべきだろ?それにお前に何か起こったらどうする?誰が助けるんだ?」

「…ごめん、2人とも…」

「これからは俺らも一緒だ。アイツが心配なんだろ?俺らも同じだ。俺は戦友を失って、ポベーシャも家族を失ってる。これ以上、周りの奴を失いたくない気持ちはあるんだ。それに、一二三の母親から頼まれちまったんだ。あなた達に後は託すってな」


…そうだったのかな…みんな、誰かを信頼して生きてきていたのかな…私は、信頼できてなかったのかな…心の奥底で、私は1人で十分だと思っていたのかもしれない。だから、周りにも頼らず、アーロンやポベーシャにもあまり頼らず、自分の腕と、自分が作った機械に頼って…だから、いろちゃんは私に相談もせずに…出てったのかな…?

頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。

気づけば、私は涙を流していた。


「…ごめんなざぃ……」

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