第3話
あれから1ヶ月。代替施設で高校生活が再開したが、警察や自衛隊がまだ巡回している。寮には戻れず、あの倉庫で暮らしていた。もう5月下旬で、体育祭の時期だった。
「後もう少しで体育祭だね」
「いやぁ、生徒会としても準備が大変だよぅ」
「団Tシャツ着るの楽しみー」
「小道具のことなんだけど…」
クラスはお祭りムードで、なんだかやっと平和な1日を見た気がした。とはいえ、まだ精神的にも肉体的にも苦しんでる生徒もいる。
「とりあえずどうやって犯人なんか見つけるの?」
「手がかりを見つけよう。ね、ポベーシャ」
赤城の机の前には、透き通った藍色の目をしたミニマムな子がいる。彼女はポベーダ・ペレスヴェート・周防。愛称はポベーシャ。ロシア人と日本人のハーフである。あまり話したことがない人との交流はかなり避けている内気な子だ。既に赤城達の倉庫で住んでいる。低身長。
「うん。私も手伝う」
ちなみに、日本生まれなので日本語ペラペラな上にロシア語ペラペラ。
話が長くなりそうだ。私は忍足でその場を立ち去った。
窓から見る空は、私の思い描いた夏とは違った。自転車を扱ぎ、積乱雲を見ながら、学校で勉強して、部活して、夕方とか夜空を見ながら帰るなんて、アニメのような青春をしようとした。今振り返ると、ドローンが飛んで、自衛隊の戦闘機が飛んで、銃弾、黒煙が立ち昇る混沌な青春。どうして、こうなってしまったのだろう。
「寮に行こう。何かわかるかも」
寮…
規制線をこっそり越えて私の部屋に訪れると、弾痕や風穴があり、修理されていないままだった。
「わぉ…」
「まるで戦場」
「これは何?」
ポベーシャが床に落ちている物を拾い、見せてきた。
「赤城、これ…何?」
「…わからないけど、多分、ドローンの部品かなぁ。アーロンが撃って命中させた時に弾けたのかも。よく見つけたねポベーシャ」
「えへへ」
倉庫に帰り、部品を調べる。
「わかったこれ受信機だ!」
「受信機?」
「うん。ドローンのコントローラーをプロポって言うんだけど、プロポから発信された無線を受信機が受信してドローンは操作できる。逆を言えば、どこから無線が来てるのかわかるんだよ!つまり、犯人がどこから操作してるか逆探知できる!」
「おぉ!…逆探知できるの?」
「んー…まぁ、頑張るよ」
ちょっと心配だが、可能性が少しあるだけでもいい。警察も捜査しているのにどうにかして逃げている。見つかるのを待つより、見つけに行った方が早い。
今度は私達の番だ。