第0話
近未来的なビルが並ぶ東京に朝日が昇る。
空はAIドローンが飛び交い、ダンボールを運んでいる。
時計の針が7:00を指すと共に目覚ましが鳴る。
私は目覚まし時計を止めて布団の中をモゾモゾ移動しながら起きた。
食パンを焼き紅茶を入れる。トーストを犬歯で千切り食べ、紅茶を飲み朝ご飯を済ます。
歯を磨き薬を飲んで私服に着替えた。
少し藍色が混じった黒髪を結ぶ。
バッグの中に筆記用具と教科書ノート、スマートフォンを入れて出かけた。
バス停に無人バスが到着した。
中に入ると、学生達が乗っている。みんな知らない人だけど。
アサルトライフルを持った警備ロボットが道を歩いている。
ここは2045年の日本。私は私立閃光高校の2年生、筑波 一二三。
技術開発が進む中、世界は夏と冬を繰り返すほど地球温暖化も進み、夏の気温は40℃を普通に超えている。
バスが学校前に到着し、扉が開く。
バスから透き通った青空と雲が見える。
教室に入ると、室内には誰もいない。今日も1番乗り。
この私立閃光高校は2023年に建ったまだ新しい学校だ。制服はなく私服。だからみんなお洒落をしている。髪型も自由。私は少し長めにしている。元々毛量も多い。でも、ある理由で常にパーカーでフードを被っている。
「いろちゃん。おはよう」
「おはよう」
「相変わらず落ち着いた声だね〜」
この子は赤城 火乃夏。クラスメイトで、小学校からの親友だ。
数十分も立つと、朝練や登校者が多くなり、いつも通り賑やかな教室になった。
「座れー。SHR始めるぞ」
先生もやってきて、いつもの学校生活が始まる。
昼休みはいつも屋上で赤城とゆっくりしている。なんだか青春=屋上ってイメージがあるし…ちょっと雰囲気がイイ。
「いろちゃんってさぁ。結構キラキラネームじゃない?」
「まぁ、読み方がね」
確かに、一二三をいろはと呼ぶのは珍しい。まさにキラキラネームだ。
「読み可愛いよね。いろはって、なんだか優しい感じがする。実際優しいし可愛いし。アニメのキャラみたい。おまけに八重歯でしょ?」
私は確かに八重歯。だから口から鋭い犬歯が少し出ている。左だけだけど。
「それにしても、世界って凄い早く変わっちゃうものなんだね。私達が12歳の頃までは春も秋もあった。地球温暖化で夏と冬しかなくて、それにドローンが飛び回って、無人機が世の中に溢れて、職業も少なくなってるし。私達のお父さんお母さん世代の頃はもっと大変だったらしいし。戦争もあって物価も高くて、ウィルスも流行って。だから、今の世界って結構便利だと思うんだ」
微風が吹く。
そんな時事ネタや現代のことを話して、今日も私達の青春の1日が過ぎていく。いつまでもこんな平和な世界でありたいと願っている。
だけど、現実はそんなに甘くはない。
嫌な予感が急激に私の体を襲う。
ドォンと、遠くから花火のような音が聞こえた。
「お祭り?こんな平日に?」
ビルから黒煙と炎が見える。
「…え?あれ…」
私は赤城の手を握って階段を降る。
「ど、どうしたのいろちゃん!?」
「嫌な予感がする!ここから逃げないと!」
配達ドローンが3機ほど屋上に墜落して爆発する。
4階諸共、天井に風穴が空いた。
学校中に火災報知器が鳴って、生徒達が慌てて外に避難している。
外まで降りると、消防車や救急車が並んでいる。
これが私達の悲劇の始まりだった。