引抜き
そろそろ蝉やカエルも黙る頃だ。
すっかりアニーは《草むら》に同化している。
年々時の進みが早いと感じる‥
俺はまだ40前だと言うの困ったもんだ。
涼しげな夜に来客だ‥
「御用件を伺います‥」
俺とアニーの目の前には渋い男が座っていた。
「田宮健一さん‥私の組の専属になりませんか?」
ヘッドハントか。
「フリーですら肩身が狭いんだ。警察や公安に存在自体が狙われている。お宅にとってもお荷物になるでしょう‥」
自分を下げて返答はするが盃は店長に貰っているようなものだ。ここまで来て不義理は出来ない。
それにヤクザ社会の嫌な部分はしこたま見てきた。
わざわざ入る事も無い。
「この世界では一級のガンスミス‥公安からは死神と恐れられているではありませんか。箔が付きますよ」
「俺はトロフィーじゃない‥」
やや強気に返す。
「ほう‥やはり獣らしさもあるみたいですね。そちらの姉御さんも一緒に如何ですか?」
どんな返しにも余裕面で返答してくる。
ダルいな‥
「私は師匠の右腕です‥」
まだ皆伝はしていないのだが‥
「金で靡かないのは私にも分かりますよ。しかし我々は貴方の力が欲しい!」
「ならお引き取り下さい」
「今日の所は失礼します」
何も買わずに札束を置いて行った‥
「要らないな‥」
裏口に出てスキンヘッドと一服をする。
アニーも着いてきた。
「旦那、断ったんだろう?」
「あぁ‥」
3人はそれぞれ適当な枚数の札束を持って火をつけた。その火をタバコの先に押し当てて煙をふかす。
素早く地面に落として足でグリグリと火を消す。
「アニー‥きっとお前もマークされてる。気をつけろ」




