修理
健一は先ず全てのパーツを分解した。
部品を入れ換えれば良い物と細かい調整が必要な物とに分けていく。
銀ダラの悪いところは表面仕上げだけで無く銃身の摩耗も含まれる。元々が人民軍の払い下げなのでたかが知れてる。
部品を全て洗浄した後に乾燥させる。
スプリングや撃針•激鉄は新品に交換した。
幸いにもトカレフ型は80年代〜90年代にかけて大量に密輸された。
丈夫なパーツは手に入りやすい。
グリップパネルに関してはエアガンの物でも問題は無かった。
実銃と微妙に寸法が違う為にヤスリがけで調整してはめる。
2日目には乾燥した部品を特別な液体につけて強度を確保する。そしてサビや劣化で歪んだ箇所を微調整していく。
中には鉄をまぶし熱を加える作業もある為に昼間の仕事は休みにした。
3日目は銃身の加工だ。
洗浄や液体漬けを何とか終わらせてブラシで少しずつ中を磨いていく。
4日目は油差しと組み立てだ。
特に弾倉の着脱やスライドの動き、照準のズレなどかなり慎重に行う。
この作業はバラしては組んでを繰り返して動作や強度に問題が無いかを徹底的に見る。
最終日は射撃テストだ。
俺は今、森の中だ。
「いつも悪いな‥金は弾む」
「こっちも小遣い貰えて嬉しいよ‥」
会話の相手はクレー射撃場の管理をしている田口だ。
60代と高齢だがピンピンした爺さんだ。
射撃場の反対側に俺たち2人はいる。
向こう側からは散弾銃の発砲音が響く。
ズバーン!!ズババーン!!
そろそろ始めるか‥
銀ダラに弾倉を込めてスライドを引く。
動作は順調だ。
田口が耳栓をする。
ズシャン!ズシャン!ズシャン!
散弾銃に混じって数発発砲する。
5メートル先のビンは一つしか割れなかった‥
「銃身の摩耗が思ったより激しい。それに照準もややズレている‥」
急ぎで照準器のみを調整する。
銃身はこれ以上無理だ。
照門と照星をそれぞれ弾のズレに合わせるように微調整した。
そして元に戻り射撃を再会する。
もう夕方だ‥
ズシャン!ズシャン!
慣らすために一弾倉分撃ってからビンを狙う。
ズシャン!ズシャン!
距離5メートルで問題なく撃ち抜いた。
「協力感謝する」
田口に札束を渡して急いで戻る頃には店の閉店に近かった。
銃の表面を磨き、銃身を清掃した後に男を待つ。