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親友

あんなに早く起きたのに今日は全然眠たくない。


「行きたくない」と思っていたはずなのに、自然と体がいつもと同じ朝を迎えようと頑張っている。


以外にも足取りも重くなく、こころとからだが反発しあっているようにも感じた。


最寄り駅の改札をいつものように抜けると、ホームの奥には「あゆ」が立っていていつものようにスマホを見ていた。


なんてかわいいんだろう。


「佐久間あゆ」はわたしが中学生の頃、2つ隣のクラスだったにもかかわらず、わたしがその可愛さに魅かれて声を掛けた唯一の子で今は親友だとわたしは思っている。


ずっと変わらないうっすら茶色のボブの髪にくりんとした大きな目だけど、目じりが少し下がっているせいか表情はいつもやさしく穏やかな感じがする。


誰にあっても「君、ハーフなの?」と聞かれるのがあまり好きじゃないみたいだが、いつも一緒にいるわたしでもよくそう思ってしまうのだから仕方ない。


喋り方もわたしとは違い、おっとりしていてどこにいっても「ありがとうございます」と頭をぺこりと下げる丁寧さも兼ね備えているが、計画性をきちんと持っていて自分がしっかりある芯のある子。


私にとってもったいないくらいの親友。


あゆを傷つけるやつがいたら絶対許さない。


「お待たせ」


ニコッとわたしを見ながらほほ笑んだあゆが最初に発した言葉はわたしと同じだった。


「寒いね、今日」


「わたしも同じこと思ってた!昨日さ、天気予報見るの忘れてさ、朝見たら最低気温20度ってなってた。20度ってこんなに寒いんだね。」


昨日まで着ていなかった学校指定のグレーのカーディガンをわたしもあゆも羽織っていた。


さほど待ち時間もなく、電車がやってくる。


いつもと同じ学生だらけの満員電車。


いつもと違うのは今日、この電車に慎が乗っていないということ。


親友なのにあゆには慎とのことを話したことがない。


親友だからかな。


いつも同じ電車に乗るのに目も合わせず、お互い知らない人のように通り過ぎる。


でもお互い存在に気付いているから、改札を出た後、正面にあるコンビニでわたしは必ず毎日オレンジジュースを買い、慎はグミを買う。


グミを選んでいる慎の横を通り過ぎる時必ずわたしの手の甲と慎の手の甲が触れ合う。


ただそれだけ。


それだけなのに今日1日頑張れるだけのエネルギーが満タンになる。


わたしが必ず先にコンビニを出ると決まっている。


あゆには慎がいることを気づかれたくない。


親友なのに、あゆを傷つけているのはもしかしたらわたしなのかもしれない。


こころがもろくてあまい

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