登山
四人に増えたことで移動の速度は低下したが、モンスターの討伐は随分楽になった。今まで手を出さなかったウナギは高いスキルポイントが獲得できるため、バンバン討伐していった。おかげでどんどんポイントを貯めていける。全ステータスカンストもイケるのでは、と思えるほどには。あ、そうそう。カンストはHPとMP以外は999だった。
「宝箱がありますね」
「お、何かアイテムが手に入るのではないか?」
いつも通り傘で開けようと私とグレンが動こうとした瞬間、アオトの銃が宝箱をぶち抜いた。私達は大胆な行動に開いた口が塞がらなかった。こ、こいつ警戒心が欠落しているんじゃないか。グレンを見ると、ブルブルと左右に首を振った。私の視線の意味が分かったのだろう。そして、グレンは否定した。昔はこんなやつじゃなかった、と。
セイラちゃんもセイラちゃんだ。何でそんなに冷静に宝箱の中を物色してるの? おかしいでしょ。今までよく生き残れたな。
「ねえ、ちょっと、頭のネジ、外れてるんじゃないの? あの二人」
「俺に言うな、俺に」
私は思わず素で話してしまった。そのくらい衝撃的な行動だった。こいつら、なかなかやべぇやつらだ。天使と王子は見た目に反して常識外れなのだと、私達は思い知った。
宝箱の中はユニーク武器の杖だった。ヒーラ-や魔法使い用の装備。所有者のHPを歩数に合わせて自動回復してくれるのだとか。銀色の柄に、先端には占いの水晶玉ぐらい大きい空色の宝石。いかにも白魔術師の杖って感じ。いいなあ、皆武器持ってて。私だけ初期装備のままだよぉ。嘆かわしい。
「シオンだけだな、武器無いの」
「うっせえ」
私はそっぽを向く。グレンとセイラちゃんはそんな私を見て笑っていた。アオトは、相変わらず笑みを張り付けている。グレンとセイラちゃんを見た時は、ちょっとイラっとしたけど微笑ましいと思った。しかし、アオトを見た瞬間、冷静になった。ほんとこいつ感情死滅してる。
「アオト、嫌いじゃ」
「え、突然の謎発言、何」
ほら、顔色一つ変えやしない。セイラちゃん達は二人で楽しそうにおしゃべりしてる。むう、私のセイラちゃん返せ。私は隣にいるアオトに怯えながら二人の後ろを歩く。こいつと話すくらいなら黙って歩きたい。
そんな感じで歩いていると、ウナギに遭遇した。私達はパターン化された戦いを繰り広げる。もう、それは戦いとすら呼べない、蹂躙だ。一方的な蹂躙。ウナギとの戦いで私は違和感を覚えた。ウナギが弱くなっている。私達が慣れたから、とかではない。明らかに私達の戦いに合わせて行動している。データを取る、の意味がやっと分かった。
「クソゲーが」
私の呟きは幸い、誰の耳にも届かなかった。
「このマグマはどこから流れてきているんでしょうか」
セイラちゃんの呟きに全員が反応する。辺りを見回すと、案外簡単に見つかった。右斜め前にでかでかと火山があった。今の今まで何故その存在を認識できなかったのか、不思議なくらい存在感あるし、威圧感もあった。
「あれに、登ってみるか」
「グレン、貴様まで壊れないでくれ」
冗談じゃなくて、マジで。そんな祈りは残念ながらグレンには伝わらなかった。火山に向かって歩き出してしまった。登山か、早く次の階層に行きたい。疲労は感じないはずなのに、何故か足が鉛のように重かった。
ダンジョン小話
セイラちゃんのモデルとなった花:ネモフィラ
花言葉:可憐、あなたを許す
落ちはね、決まってるんですよ。落ちは




