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ダンジョンズ・プレイヤー  作者: 星空月夜
第一章 始まりの旅
2/9

転移

高校三年生の夏と言うのは随分憂鬱なものだ。理由は単純。本格的に大学受験を視野に入れて勉強しなくてはならなくなるからだ。私は推薦を貰えるほどの成績はないから、AO入試で行こうと思ったのに先生に却下されるし。


「異世界転生したいなあ。いや、死にたくはないな。なら転移か」


何の気なしに呟く。それにしても日差しが痛い。地球温暖化のせいなのか、私自身のメンタルがやられてきているのか。無意識に足を動かし帰路につく。


「にゃにゃ! 本当に異世界に行きたいのかにゃ?」

「は?」


どこからか若い女性の声が聞こえた。辺りを見回すが、声の主らしき人は見当たらない。私は怖くなって、早く立ち去ろうと再び歩き出そうとした。が、足元に三毛猫がいて、再び歩みを止める。


「君は、本当に異世界に行きたいのかにゃ、峰行美央」

「ね、ねねねねこがしゃ、しゃべって・・・」


明らかに目の前の猫がしゃべっている。だって、口が声に合わせて動いてるんだよ! おかしいわ! 私の頭は猫がしゃべっているという不可思議な現象でパンクしてしまった。何か問われていたような気がするけど記憶の彼方に飛んで行ってしまった。


「まあ、君ならいい戦闘データが取れそうにゃ。精々主様の役に立ってにゃ」


突然ふざけた口調から突き放すような言い方になった。刹那、地面が青白く光り、何事かと思って足元を見た瞬間、エレベーターに乗った時のような浮遊感に襲われた。



「ん・・・」


全身が、痛い。体に鞭打ってなんとか四つん這いになる。辺りは薄暗く、どこにいるのかよく分からない。地面が若干湿っていて、ごつごつしてるのは分かるんだけど。


「えっと、スマホはどこかなー」


案外冷静な自分に内心驚きつつ、スマホのライトを付ける。光源が手に入ったことは喜ばしいことだが、今の状況はすこぶる喜ばしくない。いや、雨風凌げる所にはいるんだけど、これは、ねえ?


「洞窟って、なんだよ」


はい、洞窟です。一応上の方に松明が点々と設置されているけど、低身長の私にとってはあまり効果はない。手元にあるスマホの方が頼りになる。とりあえずここにいても仕方がない。幸い、道は一本だ。分かれ道がない限り、極度の方向音痴の私でも迷うことはないだろう。そう思って一歩踏み出した途端、目の前に何かが出現した。


「うおっ! なんだこれ?」


青緑色のビジョン、とでも言えばいいのかな。よくアニメとかで見るステータス画面のようだ。そう言えば、あの三毛猫が異世界だかなんだか言ってたな。あれ、何で私の名前知ってたんだろう?


「にゃっにゃにゃにゃにゃ~! ようこそ、神が作り給いし洞窟『ダンジョン』へ! 突然こんなことになって困ってるかもにゃけど、詳しくはステータスを見てにゃ。『ステータスオープン』で開けるにゃよ。ま、がんばってにゃ~」


あの三毛猫と同じ声が今度は頭上から降ってきたと思ったら、言いたいことだけ言って切りやがった。なんて身勝手な。まあ、そんなことより現状把握に努めなくては。確か、ステータスを見ろって言ってたよね。何故か呪文を唱える前に開いていたけど、深く考えるだけ無駄だ。うん、言われた通りにしよう。


ステータス画面には色々な情報が載っていた。これは、口で説明しにくいね。ちなみに、こんな感じ。


名前:未登録

職業:未登録

スキル:なし

MP:10

HP:100

攻撃力:20

防御力:30

速度:5

スキルポイント:100


速度が極端に低い! まさか、実際の身体能力が反映されているのか。むう、運動神経壊滅的だからなあ。ここが本当にダンジョンなら真っ先に殺されそう。あ、でもスキルを獲得すれば上手く生き残れるかも。サポート要員として。


「とりあえず、名前と職業を登録しないと。職業ってスキル獲得に関係あるのかな?」


名前のところをタップするとパソコンのキーボードが現れ、打ち込めるようになった。本名、はなんか味気無いよねえ。


「あ、シオン」


花の名前でそんなのがあった気がする。響きもきれいだし。さて、問題は職業だけど・・・


「あ、ありすぎだろ・・・」


めっちゃありました。どうやら五百種類もあるそうです。前衛、後衛、生産職の三つに大きく分かれている。この一覧見るだけでもきついぞ。目が回るほどの数に圧倒されて、ふと別のところに目を向けると、メールボックスとアイテムボックスのマークを発見。ゲームだ。これは、神様の娯楽なのだ。漠然と、理解させられた。ぞっとする。肌が粟立つ感覚と言うのはこれのことか。


「やめだやめだ。メールボックス確認しよ」


メールにはこの世界で生き抜く術が書かれていた。


まず、職業はスキル獲得に影響を与える。例えば、剣士を選択すれば物理攻撃の威力を上げるような『連撃』や『切り裂き』などの獲得確率が上がる。


「アタッカーは速度がないから向いてない。前衛じゃないとなると後衛か。せっかくなら魔法系がいいなあ」


後衛の一覧を見ていると面白そうなのを見つけた。呪術師。呪符とか使って攻撃するようだ。お、他にも転移スキルとかも獲得できる。いいね、これ。これにしよう。


「名前及び職業の登録が完了しました。これより、種族を決定します」


無機質な声が洞窟内に響いた。すると、私は気絶した。またですか・・・

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