・生存→監獄
僕は預かり所そのものにして、倉庫の管理人でもある。
自分の中にあるリアナ様の倉庫を訪れた。
「リアナ様、傷、お辛くないですか……?」
「ありがとう。あなたがお友達でなかったら、私死んじゃってたわ、ふふふっ」
そこにはベッドなんてなかった。
あるのは金銀財宝や宝石、内政事情を変えるほどに便利なアーティファクトや、薬の数々があるだけだった。
リアナ様はその薬をありったけ使って、自分を治療したようだった。
といっても、今のまま外に出たら死んでしまう……。
「なんで、そんなふうに笑えるんですか……。あんな目に遭ったのに……」
「だって痛くないもの。あなたと一緒に居られるなら、いっそ、ずっとここに居ようかしら?」
「痛くないなら、よかった……。僕、もっと強い薬、探して、必ずリアナ様が外に出られるようにするから……っ! そして、あいつらを……っ!」
僕が憎悪をむき出しにすると、リアナ様が首を横に振った。
リアナ様は復讐したくないの……?
自分を裏切って、刺したやつらなのに……。
「どっちにしろね、私、この旅が終わったら去ろうと思っていたの。ギルバードの不満も知っていたし、お金や領地とかも、私にはどうでもよかったから」
でも僕にとってはどうでもよくない。
リアナ様がくれたこの状況を使って、あいつらが破滅するように、ドミノ倒しの最初の1つを押さなきゃいけない。
他でもない自分自身の意志で。
僕はもう、人間の下僕じゃない。
「あいつらを破滅させるために、リアナ様は自分自身を預からせたんじゃないんだね……」
「ええ、もうどうでもいいじゃない。一緒にどこか遠くに行きましょ。ふふ、それにお金は、ここに使いきれないほどにあるんだもの」
「ううん、リアナ様が外に出られないと、この共有倉庫のアイテムは何一つ取り出せないよ」
「あら、それは不便ね……」
でもどこか遠くに行くというのは、とてもいいかもしれない。
アポリオン族の役目はもう終わった。
後はどこかで、最後の僕が終わりを迎えるだけだ。
わがままが叶うならば、リアナ様と一緒がいい。
いや、でも……。
「リアナ様、僕思ったんだ。僕はもう、誰かに利用されるなんて嫌だ。僕のこの力は、僕のために使う! だからっ、あいつらに情けなんてかけない!」
リアナ様との幸せな第二の人生を始める前に、ここで気持ちのケリを付ける。
あいつらをやっつけないと、宝を取り返しに後を追ってくるかもしれない!
そうでなくとも、いつかあいつらは、他の人に同じことをする!
「とても良い考えだと思うわ。なら私、今度は私があなたの道具になるわ。あなたは神が造った道具じゃない、やさしい一人の人間よ」
「あ……ありがとう、リアナ様……。僕、あいつらをやっつけるよ!」
「それはしなくてもいいのだけれど……」
「嫌だ! 僕はあいつらを倒すんだ!」
困り顔のリアナ様に背中を見送られて、僕は時の停止した倉庫から出た。
リアナ様が生きている限り、僕から財宝は引き出せない。
融通の利かないところが、この力最大の難点であり大きな長所だった。
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