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・安楽イスの倉庫番 - 消滅→追走 -

 僕はナユタ。預かり所のナユタ。

 たった今、主人であり、共同経営者であり、倉庫番役でもあるリアナ様のところに、お客様を1名お送りした。


 そのお客様にからんでいた暴漢たちはさっきから、人間の突然の消滅と、輝く蝶が少年の中に消えてゆく幻想的な光景に、目をパチクリと瞬きさせて口を開けっぱなしにしている。


 しかしじきに理解が追い付き、彼らは新たに僕を標的にして動き出すだろう。


『それでナユタ。女性を守ったのはとても立派なのだけれど、あなたはあなたをどうやって守るつもりなの?』


 リアナ様は僕の中から外の世界をのぞいている。

 心配して下さるリアナ様のお気持ちが嬉しかったけれど、確かにまあ、今のままだと少しだけまずい。


 だけどどうするつもりなのかという、その質問には答えられる。

 そんなの、決まっているよ。


「逃げる!」

「あ……っっ?! ま、待ちやがれ変なガキィッッ!!」

「ど、どうやったかは知ねぇがっ、このままじゃっ、お、おお俺らが兄貴に怒られちまうだろがよぉぉっっ!!」


 剣もまともに振れない弱い僕だけど、だからこそ得意なことがあった。

 それは逃げること。隠れること。敵をやり過ごすことだった。


 若さゆえのこの身軽さと、魔王討伐の旅の中で鍛えられた基礎体力と逃げ足を、ここぞと僕はリアナ様に披露した。


 きっとその光景は、お客様であるあの女性も倉庫の窓から見ていてくれていることだろう。

 悪い人に追われる恐ろしさを堪えて、僕は確かな足取りで逃げた。


「あ、足っ、速ぇぇーーっっ?!!」

「おい待てこらっ、逃げると俺らの兄貴が許さねぇぞぉっ!!」


 そしてわざと袋小路になっている裏道に入った。

 そこは地元の人が勝手にバリケードを作って、余所者の通行を抑制している道だ。


「あっ! アイツ足速ぇけど、大マヌケだ!」

「よし、俺らで道をふさぐぞ! ぜってー逃がすなよ!」


「当然! 捕まえて兄貴の前に突き出そうぜ!」


 油断した彼らは足をゆるめた。

 そして角を曲がった先に、追いつめられた少年がうろたえる姿を期待したのだろう。


 でも身軽な少年には、そもそもバリケードなんてなんでもなかった。

 材木を継ぎ接ぎした黒カビだらけのバリケードを、僕はひょいとひょいと登り切って、後ろの追っ手に振り返った。


「の……登るなんてずりぃぞ、クソガキィィーッッ?!」

「仕事の横取りしてごめん。でも、屈することなく窮地を切り抜けようとする彼女の姿を、見ていられなかったんだ」


「この卑怯者ーっ、下りてこーいっっ!!」

「男なら拳で勝負しやがれクソガキーッッ!!」


 とか言いながら、追っ手のおじさんたちが石ころを拾おうとうろうろとし始めたので、俺はバリケードの向こう側に下りた。


「ま……っ、待てぇーっっ、この仕事泥棒ーッッ!!」


 彼らはまんまと袋小路の奥深くに引き付けられ、迂回を余儀なくされたことになる。


 そうとなれば、もはや逃げ切ったも同然だった。

 俺はその圧倒的なリードを使って、リアナ様と共同経営している小さなお店、預かり屋【ウラノスの海】へとゆうゆうと帰還した。



 ・



 おまけ


―――――――――――

 ナユタ・アポリオン

―――――――――――


 力: 4

 耐:14

 技: 6

 速:31

 魔:15

 (成人男性を10とする)

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