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物語を始める前に、僕の融通の利かない能力について知ってもらいたい。
僕はナユタ・アポリオン。
代々勇者を支える一族、アポリオン族の最後の一人だ。
僕たちは何百年か前に、勇者に尽くす存在として神様に造られた。
だから片目が無く、生殖能力が低いのだと、そう教わっている。
僕の力は誰かに『依頼』された時にだけ発動する。
どんなに願っても、自分の意思では発動出来ない。
その代わりに僕の『預かり所』の能力は、依頼人が代価、あるいは利息さえ支払えば、ここではない別次元に、品物を無限に収納することが出来る。
その品物は『依頼人が認める限り』誰にでも引き出せる。
依頼人が死去した場合は『依頼人の仲間に』権利が移譲する。
ただし『利息が支払えないと全てが没収』となる。
僕は、異世界の書物で言うところの、歩くATMであり四次元ポケットだ。
勇者に尽くすためだけに造られた、人の姿をした別のナニカ。
それが僕たちアポリオン族だった。
敬虔な人たちは僕たちを天使アポリオンと呼び、心ない人たちは人と神の奴隷アポリオンと呼ぶ。
どちらが正しいのかはわからない。
ともかくそんなわけで、僕の能力は使い方さえ間違えなければ非常に有益だけれど、結局、僕自身の意思ではどうにもならない、ということだった。
今日はあと5話。
明日からは1日2話ずつ更新してゆきます。
ボリュームは1話あたり、2000字ほどになります。