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私は逃げない。

作者: 読色

初めて、重たい文章を書いてみましたが、とても思うようにはいかずに、穴だらけの文章になってしまいました…。

部屋は段々と明るさを失っていた。窓を見れば、夕日は沈む。私の目には夕焼けのオレンジも届かない。だけど、私の胸は恍惚と高鳴る。陽が沈めば、沈むほどいい。

20時まであと、2時間。大切な気持ち。自分が抱えていたもの、高校生のわたしにとってはかけがえのないもの。わたしは全て捨てた。

「ごめんなさい。私。」

でもこれは間違ってない。信じたいものを信じてるから。わたしは何よりも自分の心を信じてる。蒼い空、茜色の夕焼けは見れなくても、眩いほどの月明かりが差し込むこの部屋に居れば、わたしは大丈夫。


19時59分。その瞬間がやってくる。部屋にノックが2回。わたしは返事をする。扉の向こうに、わたしはここにいることを伝えるため。


20時00分。ギシギシと音を立てながら開くドア。わたしの方からだと相手の身体全身は見えない。内開きのドアの隙間から見えるのは相手の腕。差し出された食事。毎晩、彼はわたしに食事を与える。夜ご飯と、翌日の朝、昼の分のきっかり3食。割り箸が2膳。


ほら、この部屋にいればわたしは安全。食事だってもらえる。今のわたしにとっては、ここにいることが全てだ。


「ごめんなさい私。私はここにいなくちゃいけない。」


夜が終わり、また朝が来る。そして、次の日もまたその時が来る。


19時59分。またいつもの瞬間がやってくる。わたしの拳に力が入る。緊張しているのが全身でわかる。だけど、大丈夫。このためにここにいるんだ。わたしは逃げられたのに、ここに残ることを選んだんだ。


20時00分。


20時30分。

「私へ、我慢してくれてありがとう。もう自由です。」


-翌朝ABCテレビ報道-----------


「新たな展開があった1ヶ月前の誘拐事件。山本茜さんがついに見つかりました。昨夜21時、山本さん本人からの通報によって発見されたものです。容疑者はすでに死亡しており、警察は詳しい経緯を究明中です。」


-昨夜21時00分------------

「警察です。110番でございます。」

「わたし、山本茜と言います。1ヶ月ほど前に誘拐されたものです。わたしを連れ去った犯人を殺しました。」

電話越しに、警察の方が慌てている様子が伝わるなか、茜はそのまま続けた。

「彼は毎晩、わたしに食事を与えます。その時に渡される割り箸が凶器です。1ヶ月。ずっと割り箸を床や壁に擦り付けて、尖らせ、待っていました。尖らせた割り箸を束にして、まずはドアから覗いた右手を突き刺しました。わたしに食事を与え、生かし続けた右手を。狼狽えた彼は、こちらに顔を向けた。その瞬間に眉間にもう1束を突き刺しました。」

「少し、待ってください!いま、あなたはどちらにいるのですか!!」

茜は警察の質問に答えることなく、淡々と続けた。

「私は自由になりました。本当は逃げられる隙なんて沢山ありました。本当は心の底から怖かったです。だけど、自分を騙して、なんとか耐えました。わたしはこれでやっと、父と母のもとへ帰ることができる。ご迷惑をおかけしました。」

「ご両親の元へ帰るって…。待ってください!!あなたのご両親は誘拐犯によって…、まさか、あなた…。」

「知ってますよ。わたし、目の前でしたから。その隙にわたしは逃げられたけど、わたしは逃げなかった。大切だったもの全部捨てて、付いていったんです。警察の方達に責任はありません。お気になさらず。誘拐事件は解決しました。」

電話はプツリときれ、そこから15分後。110番通報の逆探知から割り出された住所へ、警察が向かうと、山本茜が首を吊っているのが発見された。

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