第十世界・「ファイティング・カウントダウン」
お久しぶりです
第10話更新です
────時刻は8時55分。場所は変わらず海底トンネル内にて。
時国は獄とヴェントットの二人が見守る中、『鎌・異門獣』との戦闘中である。
更に忘れては行けないのが、この戦いは長期戦になってはならないということである。
あと数手でどちらかが勝利し、このトンネルから出なければならないのだ…でなければ、どちらも熱中症、脱水症状等でジワジワと死へ近づくことになってしまう。
この戦いのタイムリミットはあと『34分』…これは、異門獣と、獄一行に課せられた『死へのカウントダウン』である。
───ジリジリと熱気が漂う、薄暗いトンネル内。『鎌』の『闘志』と、時国の鋭い『殺気』がぶつかり合っている。
この緊迫した中、『鎌』は両鎌をキラリと光らせると、右の鎌で真っ直ぐ線を書くような素早い斬撃を時国へ突き出した。
しかし時国も負けじと、刃が無数に生えるように付いている右手でその攻撃をガードした。
その刃同士の迫り合いは、野球ボールがバットに当たるような鋭い音を鳴らした。
攻撃をガードされた『鎌』は時国の姿を『複眼』に映しながら喋りかけた。
「まだ倒れてくれるなよチビ助…33分は斬り合えるんだからな!! ……行くぞ!『鎌倉・連鎌』!!!!」
『鎌』は両鎌を後ろに引き戻し力を貯めると、右の鎌でまた先程のような『鋭い斬撃』を突き出した。
しかしまた時国はそれをガードする…だが、その攻撃は『ブラフ』に過ぎないことを次の瞬間気付かされることとなる。
『鎌』はその攻撃の後、左の鎌を同じように突き出した。
その突き出し方は、右の鎌の後ろから…時国からすれば、『死角』となる方向からの攻撃だった。
これに時国は、目で追えたものの、対処とまで行かず『脇腹』にザシュッと斬撃を喰らってしまった。
さらに『鎌』は止まることを知らない。その攻撃の後、右の鎌を『時国の右腕』を避けるように回しこみ、時国の背中に切り傷を負わせた。
そしてまた左…次は右…というように、左右の鎌を交互に突き出し、時国を『斬撃のラッシュ』で追い込んでいった。
4、5発当たると、時国は血だらけになりながらも刃の右腕で応戦する。
キャキンキャキンと刃どうしの擦れる音を鳴らしながら時国は『鎌』の攻撃を防ぐ。その速さはついに、見守る獄とヴェントットの目では追いかけることも出来ず、ただ、戦う二人の腕が消えているように見え、ただ快い音が響くだけだった。
時国はこのラッシュによる体温の上昇、そしてこのトンネル内にこもる熱によって今にも倒れそうである。
息も乱さない目の前の『鎌』に向けて、時国は話しかける。
「はぁ……はぁ……てか、息も乱さず2分も攻撃し続けるなんてまさに『化け物』って感じだな…だけど、アンタとのこの戦いでひとつ学んだよ。それは、『遅さは相手の判断を惑わせる』ってことだよ。」
すると時国は、一瞬、ほんの一瞬ビタっとその場で停止した。
そうなると、当然一手速く『鎌』の斬撃が時国の無防備な左腕を貫いた。
「タイミングを間違えたなチビ助!! 俺の鎌はお前の腕を貫通させたァァァ!!!!」
しかし、これは時国による、『鎌』のブラフに対する、『ブラフ返し』だった。
時国は左腕に突き刺さった『鎌』の右の鎌を、まさに『手刀』、切れ味抜群のその斬撃は、鎌とは関係の無い腕ごとザックリと切り離した。
一瞬、『鎌』は斬られたことに気が付かなかったが、痛みが脳へ到達すると、斬られた右腕を抱え込みながら後退した。
鮮血がドボドボと流れ出る腕の断面を見つめながら、時国へ向けて話す。
「グッ…! やはり痛いな。お前もなかなかやりおる……しかし、あと28分…その時間内に終わらせるつもりだ…!!! …冥土の土産に見せてやろう…『真の斬撃』を…いずれ、お前も習得するかもしれん…『宙斬り』を…『宙斬り・一尖核飛翔』!!!!」
『鎌』は斬られていない左の鎌を真横へ伸ばすと、その刹那、まばたきも間に合わないほどの速さで、素早く右側へ鎌を振った。
その鎌からは、眩い光と共に凄まじい風圧が時国を襲う。しかし襲うのはこれだけではなかった。
キリキリと胸の辺りが痛み始める。さらにみるみるうちに、その箇所からジワリと出血を起こし始めた。
何が起きたのか理解のできない時国。ただ痛いと訴える表情で身体を停止させている。
『鎌』は時国へ説明するように話した。
「この技は『斬撃』の極意だ。素早く刃を振り、『斬撃のダメージを飛ばす』技…。それを『宙斬り』と呼ぶ。まだまだ行くぞ!!!」
『鎌』はさらに一発、また一発と斬撃を飛ばし続ける。
種が解った時国は飛んでくる斬撃をとにかく防ぎ続けた。
そしてその技を受けながらも学んで行く。
ガキンガキンと、刃は交じりあっていないのにも関わらず激しい音を鳴らし続ける。
5分の斬撃飛ばしの末、ついに、この飛ぶ斬撃を30発時国が防ぐと、時国は目の前の『鎌』と同じように右腕を真横へ伸ばした。
そして同じように、見よう見まねで、『引っ掻くように』左側へフルスイングした。
正直、このほぼアドリブの行為に、ここにいる皆が出来るとは思っていなかった。しかし、その予想とは裏腹に、なんとその右腕から『斬撃』が前へ飛んだのだ。
ひとつ違う所があるとすれば、その斬撃は小さいながらも、引っ掻くように放ったため『斬撃の数は五つ』なのである。
咄嗟に時国はその場で考えた技名を叫んだ。
「お、おお…!!! 喰らえ『宙斬り・黒刃五枚刃爪』ォォォ!!!!!」
ブーメランのように回転しながら進み続ける五つの斬撃は、『鎌』に避ける隙を与えず、頭部、胴体、右脚、左脚、左腕の五つのパーツへ『解剖』した。
この誰も思わぬ攻撃に獄は空いた口が閉じなかった。
解剖され、頭部となった『鎌』は、地面へボトリと落ちると時国へ向けて話しかけた。その声はかすれ声で、よく聞かなければ聞き取れないほど小さな声だった。
「……何をされたのか分からなかった。なんて学習スピードなんだ…見事…。おい、そこのトレンチコートの男よ…。耳を貸してくれ。」
そのかすれた声の呼びかけに獄は「クソッ俺もかよ」と座り込み、聞き耳を近づけた。
「……こやつは良い戦闘センスを持っている。お前は指導者か? もしそうなら是非アイツを強くしてくれ…そう誓ってくれ……!!!」
獄は面倒くさそうな顔で見つめる。校長先生の朝礼を聞く小学生という感じである。
『鎌』はその顔を見て、かすれ声で怒鳴った。
「聞いているのか!!」
獄は思わずビクッと背筋を伸ばした。
『鎌』はまだ話し続ける。
「誓うか!? 誓うと言え!!!! このウスラボケ!!」
頭を掻きながら面倒くさそーに獄は答えた。
「わ、わーったよ。誓いますよ誓います……ってかお前いつ死ぬんだよ…!!」
「俺は死んでも死なん!! …それよりお前ら、早くここを出ろ。あと15分くらいで熱中症で倒れるぞ。」
……『鎌』がそう忠告したその時である。
トンネルの後ろ、つまり獄一行が入ってきた方向から、何やらドシンドシンと『何かの足音』のようなものが聞こえてきた。
獄は立ち上がると、ヴェントットに言った。
「なぁ。この音って何か工事してるとか、換気扇の音とかじゃねぇよな…?」
ヴェントットは懐から水の入ったペットボトルを取り出して飲み干すと、腕を組み答えた。
「さぁな…俺にゃ検討持つかねぇサウンドだ…一体なんの音だ…?」
そのどんどん近づいてくる音の正体…それはしばらくすると判明した。
それは三人が見たことのあるものだった。
なんと、『四つん這いの白い巨大な赤ん坊』である。
「あれは『ミランダ・ド・ドウロ』か!!!」
ヴェントットが反応すると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「よく覚えてたわね!! そう、この子は『ミランダ・ド・ドウロ・2エイジ』よ!!!」
その声の主は『愛』である。身体は戻ったのか、『男と女の彫刻が左右溶接された』ような元の姿で、その赤ん坊の背中に乗っていたのだ。
手を振りながら、四つん這いの赤ん坊の上で話始めた。
「よくも我を置いてけぼりにしたわね!! 結構寂しかったんだから…!! それはそうとここから出るわよ!! あんたらに着いてかないとただ討伐されるだけなんだから!! 早く乗りなさいよポンコツ!!!」
獄達は戸惑ったが、言われるがままに赤ん坊の背中へ搭乗した。
そして『愛』が手をパンパンと、二回叩くと、『ミランダ・ド・ドウロ』は動き始めた。
「この子ならあと三分で出口へ着くわ!! あと、我のことを『グング』って呼びなさいよ!! いちいちフルネームで呼ばれるのめんどくさいんだから…!」
───…ドシンドシンと重い足音を立てながら、出口へ全力疾走でハイハイする『ミランダ・ド・ドウロ』……その後ろ姿を見ながら一言、頭部だけとなった『鎌』は呟いた。
「悔しいが俺の負けだぜ……『あのお方』に顔見せ出来ねぇなら死んだ方がマシか…。」
灼熱漂うトンネルの中、血濡れのカマキリ頭は静かに息絶えたのだった。
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