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義手少女のてしごと  作者: 獅子魚
ゴールデンターキー
8/12

ゴールデンターキー/私の……?

PV感謝。

毎日投稿と言ったくせに早々にさぼってしまった……

6日休んだら1日休みということでお願いします……

 成長した植物たちによって遮られていた日光が、時を経るごとにさらに暗くなっていく。ぼんやりと見えなくなっていく視界にマナを集中させ、なんとか辺りを見渡していた。


 が、やはり黄金七面鳥が現れることは無かった。


「これ以上はダメです。本当にダメです」


 私自身、これ以上時間を使うと捕まえるどころか、家に帰れるかどうかすら怪しいことは理解していたし、普段の私なら、こんなに強くウルルが言うより前に引き揚げていたはずだった。だが、なぜこんなにもウルルに反発してしまったのか不思議で仕方なかった。


「……ごめんなさい。ウルルに従うって言ってたのに、約束を破ってしまって」


「いいんですよ。お二人が無事なら狩りは成功です」


 ランタンが仄かに照らす夜道を馬車が進んでいく。その日の夜は恒例行事を潰してしまった姉と、わがままを言って迷惑をかけてしまったウルルとシエルへの申し訳なさでいっぱいだった。


 一夜明け、私とシエルはリビングで作戦会議を行っていた。


「さて、本日の議題ですが」


 組んだ両手で口元を隠し、シエルは参謀の真似事をする。乾いた笑いで苦笑いする私を眺めながら、彼女は続けた。


「収穫祭のメインディナーである、黄金七面鳥が入手できませんでした。議長、どういたしましょうか?」


 なーにが議長だ、と茶化したい気持ちもあるが、自体はそれほど楽観的なものでもなかった。何せメインがないのだ。姉が作ってきたこの店の伝統を守れないかもしれないということは、もはや私たちにとってパーティーを開催するかどうかすら躊躇われるほどのものだった。


「どうしようね本当に……やっぱり危険を承知で森に残るべきだったのかな……」


「フラフラしすぎですよ先輩〜。捕まえられなかったのは私の責任でもありますし、今更考えても無駄です無駄無駄!」


 ネガティブなことをしきりに口をしてしまう私をきっぱりと断つようにシエルが口を挟んだ。だが、どうしても姉のようにはできないものか、と考えてしまう一一


 …………あ。


 思い出した。「隠し味って言うのは、たとえ妹でも教えないの!」と言っていた姉の言葉を。


「そう言えば、姉の黄金七面鳥の燻製(ローストターキー)には隠し味があった気がする」


「おお!先輩よく思い出してくれました!味さえわかればなんとかなるかもですね!」


 シエルは両手をテーブルについて身を乗り出した。先程までの参謀っぷりはどこへ行ってしまったのだろうか。

 ちょっとした事で一喜一憂できる彼女だからこそ、話を聞いたことがあっただけの私が肝心なレシピがどこにあるのか、本当にレシピがあるのかすら分かっていない、ということを伝えた直後の肩の落としようは凄まじいものだった。


「なら、善は急げです!⠀先輩の舌を頼りに、お姉さんの燻製を再現しましょう!」


 何事も無かったかのように顔を上げ、レシピがないならとりあえず作ってみようという彼女の無鉄砲さには驚いたものの、二日前となった今、新しく料理を作る時間を設けるとなるとあるかどうかも分からないレシピを探す暇など私たちには残っていなかった。


「とにかく、まずは今日の予定通り、必要な食材を買いに行こう」


 魔術戦争時代の城の跡地から発展したこの街ルティアの周辺には、西のリラ川をへだてて穀物、畜産物が主な輸出品のオッドスフィールや、南のゴート、北にギルディリーズなどといった街があり、その輸出品のほとんどがルティアを経由して運搬される。そのため、一年中を通してこの街の市場は賑わいを見せている。


「今日はオッドスフィールからの交易商が多くて、良い七面鳥が調達できそうな気がしますね!」


「シエル、もう少し落ち着いて歩いて。人も多いから危ないよ」


 こういう日の出費はしっかり考えていかないと、とメモ帳を片手にポテトとにらめっこする私とは対照的に、シエルは早足で市場を眺めて回っていた。


「クランベリー……は昨日採ったし、とうもろこし、かぼちゃ……うん、よし。あとは七面鳥だね」


 とんでもない額の出費に顔を引き攣らせて笑う私は、拳を普段の倍以上の強さで握りしめながら歩いていた。これもあって姉は毎年巨大樹の森まで出向いていたのだろうと思うと、姉のよく考えられたパーティー設計に嫉妬してしまう。


 目の前に並ぶ普通の七面鳥を見る。ああ、今年は()()なんだなあ、と思ってしまう気持ちもあるが、仕方ない、と心の中で自分に言い聞かせて手に取った。


 買い物で半日を使った私たちは、翌日の夕方まで隠し味の再現に全力を注ぐ羽目になったが、なんとか前日中に準備を終えることが出来た私たちは、疲れから泥のように眠ってしまった。




 そして、収穫祭当日。


 日が傾き始めたころ、撫子魔導器の庭には普段の閑静な店とは全く違う様相を呈した賑わいがあった。


「みっ、皆さん!⠀本日はお集まりいただきっ!⠀ありがとう!⠀ございます!」


 緊張のあまりに声は裏返り、噛んでしまったスピーチにどっ、と笑いがおこる。耳の先まで顔が火照っているのを感じながら壇上を降りる。今日はミナカやウルルも来てくれているが、私のような人見知りがするよりもはや彼らに任せた方が良かったのではないかとすら思えてくる。


「ダイアの割にはよくやったとミナカは思ってるぞ!⠀頑張ったな!」


 ミナカの優しさとも取れる言葉が余計心に刺さる。だが頂点を迎えた私の気持ちの高まりは、今度は私たちのローストターキーが受け入れられるのか、ということへと変わっていった。


 店の裏に向かった私とシエルは、緊張と不安から重い足取りでディナーを運び出した。庭でこんな表情を見せる訳には行かない、と両頬に喝を入れる。


「「皆さん!⠀待ちに待ったディナーでございます!」」


 一線に視線が集まるのを感じる。衆目に晒されることに慣れていない私はもはやパニック状態で、とにかく食事を落とさないように運ぶので精一杯だった。


 ターキーを渡された人々が一口、また一口と頬張って行くのを、神妙な面持ちで眺めていると、心配そうにミナカが駆け寄って来てくれた。


「今日のダイアはなんか変だぞ。そんなに不安そうな顔してどうしたんだ?」


「毎年あったメインのローストターキー、姉が捕ってた黄金七面鳥だったんだ。でも私は捕まえられなくて、それでなんとか普通の七面鳥で姉の味にできないか頑張ってみたんだけど、お姉ちゃんのに似せれてるのか不安で……」


パーティーの影で、ひそひそと囁くように不安の種を打ち明ける。すると、ミナカからは思ってもいない返答が帰ってきた。


「なんだ、心配して損したぞ!⠀そんなの、みんな好きに決まってるだろ!なんたってダイアの手作りなんだから!」


「私の……?」


 ローストターキーを口にしたお客さんから、「去年とはまた違っていい!」「味変えたんだ。こっちもいいね!」という声が聞こえてくるのを庭の端で聞いていた。どうやら、姉の味付けにはなっていなかったらしい。だが、私の心持ちは軽くなっていた。


「お姉ちゃんのじゃなくても、良かったんだ……」


 私は小さく呟いていた。


最後まで読んでくれてありがとう。

遅筆過ぎるの何とかしないとね。

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