魔導技師技能検定/だい大大丈夫です
PV感謝します。
1万文字も超えて次なる目標は10万文字と言ったところで。世の中にはうん百万と文字を書き連ねる猛者がいるということですので、最終的に目指すのは1000万文字ですわよ。
「えーっ!⠀ダイア、魔導技師認定証持ってなかったのか!?」
「うん、そうだけど……」
日も暮れてすっかり暗くなった住宅街に、ミナカの加減を知らない大声が響き渡る。先日のことでミナカも気分を落としていないか心配だったが、こうして今日Mk-IVを持ってきているのだから、彼女の胆力は本当にすごいものだな、と感心する。
「そういえば明日からだったっけ、魔導技師技能検定」
「そうだぞ!⠀Mk-IIIは本当は明日のために作っておいたものだったのだ!⠀壊れたけど!」
トルマ級魔導技師と呼ばれる、国が認める魔導技師の中で最も低い肩書きを持つ彼女は、明日、レギルス級への昇格試験を受けに行くらしい。
実の所、姉が技師をやっていた頃は、今のように人に対価をもらって修理するなんてことなど夢のまた夢の話だと考えていた私は、試験を受ける気がなかったのだ。
もちろん、認定証はなくても魔導技師を名乗ることは出来るのだが、そういった技師は扱える魔導器に制限も多く、仕事にしたとしても町の修理屋としての域を出ることは許されない。
「ダイアも明日受けに行こう!⠀トルマ級でも取っておくだけで大型魔導器の扱いも許されるんだぞ!⠀実技も学科も簡単だし、受け得だ受け得!」
いつかは受けなくてはと考えていた私は、こうして早朝から重装備で駆り出されることになった。
「ねぼすけ起きろー!⠀遅刻するぞ!」
まだ朝鳥も鳴き始めていない時間から、住宅街にミナカの大声が通り過ぎていく。大声でねぼすけと呼ぶのはやめて欲しいが、ミナカに呼ばれていなければ確実に当日募集の締め切り時間を過ぎてもなお寝ていただろう。
意志とは反対に閉じようとする瞳を無理やりこじ開けながら、寝間着のまま窓を開け、準備万端という様子のミナカを屋根裏部屋から見下ろす。今行く、と軽く伝えて身支度を整える。
ミナカは私が寝坊するのを見越してサンドイッチを作ってきてくれていた。二口でそれを平らげた私は、直らない寝癖を左手で抑えながら、早歩きで中央広場へ進んでいった。
大通りにでてしばらくした時、ミナカと話している最中に肩にどん、と強い衝撃を感じる。前から走ってきた女の子とぶつかってしまったのだ。
「あっ、ごめんなさい。前をちゃんと見てなくて」
尻もちをついている少女に話しかけたが返事はない。どうやら相当焦っている様子で、こちらのことなど眼中にないようだった。
何気なく見た彼女の手には、技能検定のパンフレットが握られていた。この少女も試験を受けに来たのか、と理解した私はもう一度彼女に話しかける。
「もしかして、技能検定を受けるんですか?⠀実は私も一一」
「あっ!⠀その事なんですけど!」
彼女の純白のうさぎ耳がぴんと立ち上がった。まるでそのことを聞かれるのを待っていたかのように、少女は早口で話し始める。
「あの、中央広場がどこにあるのか分からないんです、あたし、北東のグラスヘイムから来たので、この辺りのことよく分からないし、遅刻したら受けられないし、どうしようかと思って」
グラスヘイムというと、住民のほとんどが幻獣族の霧の街か、随分遠くから来たんだなあ、などと頭に浮かべながら、彼女の上下逆の地図を指摘する。
「ミナカ達もちょうど向かっているところだったのだ!⠀せっかくだし一緒に向かおう!」
「ぜひお願いします、ミナカさん!⠀あたしはシエルっていいます!」
「ダイアだよ。シエル、よろしくね」
自身の発明品を場所も選ばす自慢しようとするミナカを静止しながら、三人で広場へと向かっていった。
受付を済ませた私たちは、実技試験が始まるまで何気ない会話をして時間を潰していたが、三人の中で唯一レギルス級の試験を受けるミナカは、試験で使うから、とMk-IVのセットをしに一人先に行ってしまった。
いつも何かを話しているミナカがいなくなり、無言でいる時間が長くなる度に、緊張からかシエルの耳がどんどん垂れていくのが見て取れた。ほとんど初対面の私たちの間に気まずい空気が流れていく。
「緊張してる……?」
お腹を抑え、いよいよ青ざめてきたシエルには、さすがに声をかけざるを得なかった。かくいう私はというと、少し緊張しているとはいえ、初めてやることに対しての高揚感のようなものも感じている。だが、いつ不安が勝ってしまうとも分からない状況だった。
「い、いえ。だ、だい大大丈夫です。いや、ちょっとダメかも……です」
建前と本音がごちゃ混ぜになったシエルの言葉を聞きながら、なんとか不安を和らげてあげられないか考える。が、彼女の苦悶する表情を見ていると私もお腹が痛くなってきそうでどうにもならない。
二人とも顔を青ざめさせながら長い長い待ち時間を耐え忍ぶ様子は、傍から見たら近寄り難いことこの上なかっただろう。ようやく開始のアナウンスが流された私たちは、そそくさと会場に入っていった。
試験内容は、いくつか用意された小型の魔導器を指定時間内に修理する、という至って普通のものではあったが、これが意外と難しかった。複数箇所が壊れている魔導器や、そもそも直したことのない珍しいものさえあった。これだから天才の簡単だという言葉は信用したくないのだ、と心から大きなため息をつきたくなる。
作業が落ち着いて、長時間マナを集中させていて強ばった右手への緊張を解いて、ふう、と軽く息を吐いて気分を楽にさせる。ふと、シエルは順調に進められているのか、と気になる思いが頭をよぎった。
目立たないようにちらちらと辺りを見渡してみる。シエルは右斜め前のスペースで作業をしていた。
彼女は見るからに苦戦していた。未だにお腹を抑えているのを見ると技量的な問題だけでは無いのだろうとは思うのだが、それでも作業の一つ一つが不慣れなように感じられる手つきだった。
大丈夫、と声が出かけるものの、はやる気持ちを抑えてルーペを掛けた。今はとりあえず自分のことに集中しなければ。
視界の端にしきりに映る彼女へ助け舟が出せないことにもどかしさを感じつつも、手を止め、自分が試験を放棄することもできなかった。上手くやってよシエル、と祈りながら作業を続けた。
「お!⠀おつかれ二人とも!⠀ミナカが言った通り簡単だったでしょ!」
先に試験が終わって、待ってくれていたミナカが私たちを出迎えてくれた。
普段から魔導器に触れていて、工具の扱いに慣れていた自覚があった私でさえ、指が小刻みに震えているのが分かるほど疲れが溜まっていた。屈託のない笑顔で話しかけてくるミナカに対しての煩わしさよりも、期待に添えなくてごめん、という申し訳なさが先に来る。
「ミナカさんはあたしとはレベルが違いますね……」
「うむ!⠀ミナカは天才だからな!」
疲れを知らない、と言った様子の彼女にこの歩くこともままならない体ではついていけそうにない。今日、この子は私よりも難しい試験をやっていたんじゃかったのか。
「明日の筆記のために、今日はダイアの家で英気を養うのだ!」
宿を探さなきゃ、と言うシエルを気づかっているのか、それとも単純に私の家に上がりこみたいだけなのか、おそらく後者なのだろうが、あまつさえスキップをしている彼女に力なく笑いながら二人を連れ込んだ。
最後まで読んでくれてありがとう。
ライセンスは恒星の絶対等級から順番つけさせてもらいました。宇宙と星々に感謝。




