写真機/閑話休題
PV、感謝する(強者感)
今後の投稿予定を活動報告に載せましたので確認していただけるとありがたいです〜!
この季節でも珍しい晴天の日。空気は冷たいけれど、日差しの暖かい日。
シエルは今日、この街に来てから出来た同じ幻獣族の友達と泊まりでハイキングに行ってしまったし、一方ミナカは出張で昨日からゴートに行っている。店にいるのは私しかいない日など本当に久しぶりで、こんなめったにない日を謳歌しようと、のびのびと背伸びをする。
さて、今日は何をしようかと虚空に手を伸ばすものの、何をすればいいのか思いつかない。こんな日なのだから普段やっていないことをしようと思っても、普段していることがなんなのかすら分からず困惑する。
「私、いつも何してたっけ……?」
眉を顰めて脳内のタンスを一つずつ開けていくが、料理、修理、シエルとの雑談……在り来りなことは思い出せるものの、これといって今日だからできること、というものが見つからない。
思えば、私が能動的に何かをしようとしたことはほとんどなかったような気がする。姉がいた頃からべったりで依存体質ぎみではあったものの、シエルが来てからは彼女の言う突飛なことや、彼女のした意味のわからない失敗の対応につきっきりで、自ら何かをしようとしたことはあっただろうか。
何をしなければいけないのか、何をしたいのか脳内で判断が出来なくなり、混乱しながらふらふらとリビングを歩いていると、机の上に白い紙が置いてあった。またシエルがこんなところに置きっぱなしにしているな、と思って紙を手に取る。
一一そうだ。絵を描こう。
やっと思いついた。私のやりたいこと。シエルとミナカの絵でも描いて、彼女たちが帰ってきた時にあっと言わせてやろう、と袖をまくって息巻く。
鉛筆を手に持ち、紙にシエルとミナカの姿を思い描く。真っ白なうさぎ耳、濃紺のサイドテール、シエルの好きなピンクの大きなリボン、ミナカが普段から持ち歩いている大きなリュックサック……
まるで画伯にでもなった気分で意気揚々と筆を動かしていた私は直後に後悔する。
……なんだこれは。
出来上がった絵はおよそ人間とは思えない何かだった。恐らく見た半数以上がこれは何らかの固有生物なのだろうと推測してしまうであろうクオリティに自分でも驚く。
初めから人間を描こうとしたのがいけなかったのだ、と解釈した私は、外に出て色々なものを描いてから二人を描こうと思い立ち、足早に外へ出た。
寒いながらもこの時期では珍しい晴天の空を仰ぎながら、何を描こうか辺りを見渡す。
園芸好きのおばあさんの庭に咲いているクレマチスや、冬だと言うのに汗だくで作業をする鍛冶師のおじさんが鋳造した両刃の剣。いつもなら目に入ってこないようなものが、描くという意志を持って外の世界を眺めると見えてくる。
だが、どう努力して描いてみても上手くいかない。自分の腕が悪いのか、それともこの世界を自分がよく見れていないのか、できない自分にいらいらする。
姉がいたころ、自分の手に思っていたように。
自分の描いたそれを手にする。壊したい。こんなもの破り、引き裂いて、目の前から消してしまいたい。
『自分自身で見た美しい景色を、僕も遺したいと思ったんだ。』
ケアルの言葉がふと頭によぎった。苛立ちが支配していた脳内が彼の言葉をきっかけにして冷静になっていく。
そうだ。
私が絵を描こうと思ったのは、ただ何かしたくてやった訳じゃない。
もう一度、描いてみよう。
ペンを手にゆっくりと、丁寧に二人のことを思い浮かべる。拙いけれど。私も遺したいと思ってしまったから。二人との思い出を。美しい、大好きなこの街の景色を。
どれくらいの時間がたっただろう。太陽の灯りは月の灯りへと変わり始め、電気をつけていなかったこの部屋では、自分のしたことすら確認できなくなっているほどだった。
「ただいま戻りました先輩! 驚かないでくださいよ! なんとスペシャルゲストを連れてきてました!」
「後ろ見えてるから。出張おつかれ、ミナカ」
「うむ!久しぶりの出張疲れたのだ!」
二人を店に連れ込み、コーヒーを淹れる。二人が帰ってくる前に机にしまおうと思っていた絵を完全に忘れてテーブルに置いていたことは忘れてしまっていた。
「お!? これダイアが描いたのか!? 嬉しいのだ!」
「上手い……とはちょっと言えませんけど、頑張ったんですね先輩! 私も嬉しいです!」
「素直に上手いでいいじゃん。でも、ありがとう」
恥ずかしさと嬉しさが相まってぎこちない笑顔になる。
自分の作ったものを他人に認められるというのは、自分の修理したものを褒められた時とはまた違った感覚を感じていた。
描いて良かったな。私は三人の並ぶ自分の絵を見ながらそう思った。
最後まで読んでくれてありがとう。
早々にネタ切れの気配を感じて焦っております。もっと書きたいのに思いつかないのは辛いね。




