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白い馬

始まりの街、いい響きですね。

物語の始まりって感じで好きです。

レドーさんに歌を聴かれていたことが恥ずかしく、私の顔は赤く染まっていた。

レドーさんはおかまいなしに話を進める。


「な~にをそんなに恥ずかしがる? さっきも言ったがほんとに綺麗な歌声だったぞ?」

「うっ、あの、その……お褒めにいただいて光栄なのですが、だとしても恥ずかしいのです。それにもとより誰にも聞かれていないと思っていたものですから……」

「う~ん。そんなもんなのかのぅ? まぁええわい。わしはラッキーだったと思うことにしよう」


そう言ってレドーさんは大笑いした。

気持ちよく笑う人だなぁ。


「あぁ、あとお前さんその喋り方、無理しとらんか? なんとなくだが気持ち悪いぞ」

「……そんなに違和感がありますか?」

「あぁなんというか、仮面を無理やりかぶっとる感じがする。本来のお前さんはもっと自由の気がしてならない」


驚いた。まさか感覚でここまで見極められるとは。

……しかし、自由、か。私が戦争に身をなげた理由も、自由を求めてだったが……まさか私自身が自由な人間になれるとは、改めて考えるとすごいことだな。


「そう、か。ならば自然体で喋らせてもらう。こんな感じだが、不愉快はないだろうか?」

「ないない。むしろそっちのほうがええ。さっきよりものびのびとしとる」


レドーさんは白い歯を見せて笑った。

ダンディだなぁ。


「それでお前さんは街に行って何をしようと思っとる?」

「特にこれと言ったものはないな。まずは街を観光してから、仕事かなにかあれば探してやっていこうかと思っている」

「なるほどな。街に知り合いとかはおらんのか?」

「いないわ」

「そうか~。大変だな。そもそもお前さんはなんで街に行こうと思ったんだ?」


天使に街に向かうといいって言われました、なんて言えるわけないわね。


「別に何も考えてないわ。自由気ままに旅してて、近くに街があるって聞いて、じゃあ行こうって考えただけ」

「お前さん、逞しいのぉ。がっはっはっ!」


レドーさんと話していて、自身の今の立ち位置が危険であることがわかった。

何かしら身分を説明できるよう設定を考えておいたほうがいいわね。


「まぁ草原がここまで広いとは思わなかったけどね。でも迷ってよかったわ。いいこともあったしね」

「ほう。いいこととは?」

「とってもきれいな白い馬を見つけたのよ。それで私は気分が良くなって歌っていたってわけ。その結果レドーさんと出会えたもの。いいこと尽くしよ」

「白い馬? ジャンヌ、今白い馬を見たと言ったか?」


レドーさんが驚いた顔を近づけて聞いてきた。

あまりの迫力にたじろいてしまった。

……正直怖い。


「え、ええ。白い馬を見たわ」

「そいつには一本の角はあったか?」

「あったわ」

「……ほ~~~。お前さんはほんと運がいいなぁ」


どういうことだろう。

とにかくレドーさんは白い馬について何か知っているようだ。


「レドーさん、教えて。その白い馬ってなにか危険だったりするの?」

「危険とも言えるし、安全とも言えるな」

「? どういうこと? あっ、その白い馬はただの馬じゃなくてユニコーンとか?」

「残念ながらユニコーンではないな。ここら辺はユニコーンの住処ではない。ユニコーンはここからもっと離れた場所の森の中にいるからな」


気になってつい聞いてしまったが、ユニコーンっているんだ。

しかもアルセレスでは、伝承ではなく間違いなく実在するみたいだ。

いつか見てみたいなぁ。


「お前さんが見たというのは麒麟だろう」

「キリン?」

「そう……ん? 何か違うような? まぁええ。麒麟がなんなのか知らんみたいだし説明しようか?」

「お願い」

「麒麟というのは神獣だ。神々によって遣われた強き獣と言われておる。実際とんでもなく強いからな。この草原の主にして守り神なんて呼ばれておる」

「そんなすごい存在なのか」

「あぁそうだ。それに麒麟は警戒心が強く、めったなことでは見ることがかなわん。たとえ見つけることができたとしても殺されてしまうことになろう。ゆえにお前さんは運がいいと言ったんだ。麒麟を見ることができ、殺されもしてない。よかったな」


こわっ!

そんな恐ろしい存在だったの!?


「そんな危険な存在、野放しにしててもいいの?」

「麒麟は守り神だと言ったろう。確かに強い獣だが、それゆえにここら辺は麒麟の縄張りとして機能しておる。人間が敵わないような危険な魔物はおらん。それにこちらから仕掛けたりしなければ麒麟も襲ってこんからな」

「なるほど」

「だからといって不用意に近づくものでもないがな。さっきも言ったが麒麟は警戒心が強い。好奇心に負けて近づいてみろ。あの立派な角で一突きだ」

「こわ~」

「もしくは強力な魔法で消し炭だろう」


レドーさんは大笑いした。

いや、笑いごとじゃなくない?

普通に怖いよ?


「まぁでもおかげで綺麗な歌を聞けたのだから、麒麟に感謝だな」

「そっ! れは……どうも」


あ~、もう。恥ずかしい。


「さてもうすぐ街につくが、その前にジャンヌ、お前さん泊まる当てはあるのか?」

「街についてから探そうかと思っていたが」


あれ?そういえばお金ってあったっけ?


「金はあるのか?」

「ちょっと待って」


……ないわ。


「がっはっはっ! ないみたいだな。ちょうどいい。うちに泊まっていけ」

「えっ! そこまでお世話になるつもりは」

「気にするな。というか今のお前さん見てると、ちぃとほっとけないわい。それにお前さんなら妻も歓迎するだろう」

「レドーさん、結婚してたの!?」

「おうよ」

「なおさら悪いわよ」

「ええって、ええって。それに金もないんだろ? ないならうちにしばらく泊まって稼げばいい」

「……いいの?」

「かまわんぞ」

「ありがとう」


レドーさんはまたがっはっはっと笑う。

本当にありがたいな。


「ジャンヌ、見えてきたぞ。あそこがわしらの街、レネスだ!」

「わぁ!」


ようやく街が見えてきた。

街にはなにがあるのか、考えただけでも心が躍っていた。

街の名前も人の名前も考えるのってとても難しいです。

ここに一番時間がかかっちゃうから、これから先が大変なのがよくわかりました。

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