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歌声と荷車

アルセレスでの生活が始まりました。

まだ何も進んでないけどね。

私は草原に立っていた。陽は高く昇っており、心地よい風が肌をなでる。

目に見える範囲には特徴的な物は何一つない。

どこを見ても、遠くを見ようと目を細めても、何もない。

私ことジャンヌ・ダルクが一人、草原に突っ立っている以外はこの草原に変化がない。

……あいつ本当に何もないところに送ったな!

近場に街があって、その反対が森らしいが、どっちがどっちか全くわからない。


「とりあえず進もう。ずっと立っているよりかはマシだ」


仮に森にたどり着いたのなら面倒だが反対方向に歩いていけばいいからな。

とりあえず風がふいている方向に足を進めた。

しかし、何もないとはいえとても綺麗な景色だ。

一面の見渡す限りが若草色で広がっている。優しい景色だ。

幼いころによく見た景色であり、戦争になったときは聖女として何度も夢見た景色。

この世界アルセレスにきて初めて見た景色がこれとは……


「感謝してもしきれないなぁ、これは」


私は心から感謝の祈りを空に捧げた。

ミレアはともかく、世界が違うのだからミカエル様には届くかどうかはわからない。

でも、きっと届いているはず。

私は美しい青が広がっている空に向かって微笑んだ。


歩みを進めてから数分。意外なことに早くも変化が訪れた。

草原に一頭の馬がいた。それも真っ白な馬だ。綺麗だなぁ。

しかしやはりここは地球ではないのだろう。

白い馬の頭には一本の角があった。


(見たことがない馬だな。あれは伝承によくあるユニコーンというやつか?……それにしても美しい……ほしいな)


よく馬に乗って駆け回ったものだ。戦場では馬の存在は欠かせないからな。

すっかり白い馬に魅了されてしまった私は、ゆっくりと近づいてみた。

しかし、馬は私の存在を察知するやいなや、ものすごい速さで逃げて行ってしまった。

……速いな。

ただただ関心しただけで終わってしまった。

また会えるといいなぁ。


美しい馬を見たことで上機嫌となり、私は景色に変化がなくとも歩みに迷いはなかった。

迷っているかもしれない、検討違いの方向に進んでいるかもしれない。

頭の中では理解していたが、どうでもよくなっていた。

そう! 私はとても浮かれていたのだ!

だからだろう。歌を歌いながら歩いていたのだ。

まさか聴かれているなんて、露とも思わずにな。

気分よく歌を歌いながら数分、後方から声がかかってきた。


「……~い。お~~~~~い! そこのお嬢さんや! ちょいと待っとくれ!」

「うん?」


振り返ってみると、馬が牽引する大きな荷車が見えた。

荷車には大きな男が乗っているみたいだ。

声を上げて、手を振っている。


「こんにちは。見ない顔だね。旅人さんかい?」

「こんにちは。そう……ですね。旅をしてはいます」

「? 何か困ってんのかい? おっと、自己紹介がまだだったな。わしはレドーという」

「私はジャンヌ・ダルクと申します」

「あや~、家名持ちってことは貴族様ですかい? これは失礼しました」

「あぁいえ、貴族ではございません。ですので頭をおあげください」


いきなり頭を下げるもんだから驚いてしまった。


「貴族様ではない? あぁならよかった。危なく打ち首になるとこだったわい。がっはっはっ!」

「打ち首って……そんなことは……」


あるかもしれないな。

気に食わなければ処刑するなど、地球でも日常茶飯事だったしな。

ミレアがあまり地球と変わらないとは言っていたが、ここは変わっていてほしかったな。


「それでジャンヌは何をしとる?」

「あぁ、それがですね。道に迷ってしまいまして。近くに街があるというのは聞いていたのですが、

どこにあるかがわからず。とりあえず自由気ままに歩いていたところです」

「そうだったか。確かにここらは広すぎてな~。迷っても仕方ないわい。ちょうどいい。荷車に乗るとええ。街まで連れていこう」

「えっ!……ありがたいですが、よろしいので? レドーさんも何かご用時があったのでは?」

「気にするでない。わしは森に行って仕事をしてきた帰りじゃ。このまま街に帰るのじゃから乗ってけ、乗ってけ」

「ではお言葉に甘えて。ありがとうございます」


荷車に乗った私を確認したレドーさんは荷車を走らせる。

よかった。無事街に行けそうだ。


「いや~それにしてもビックリしたぞ。何もない草原に綺麗な歌が聞こえてきてな~。気になって歌声のほうに行くと美人さんがいるもんだからな~」


歌声が聞こえてきた……?


「レ、レドーさん? 歌声っていうのは……どういうことでしょう?」

「お前さんは何を言っておる? お前さんが歌っていたんじゃろう」


ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!


「き、きこ、聞こえていて!?」

「それはもう綺麗な歌声じゃったよ。いや~もう一度聞かせてほしいくらいだ」


もう、やめて~~~~~~~~~~!!!!!


私は羞恥心で顔を真っ赤にして荷車の上で縮こまってじまった。

レドーさんはがっはっはと大笑いしていた。

これからちょっとずつ、ちょっとずつ物語を進めていきます。


どうしていこうかな?

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