爆発してる
ファミパン(ちょっと違うけど)から1日明けて。
ドンドンドン! ドンドンドン!
……なんだぁ。うるさいなぁ。
ドンドンドン! ドンドンドン!
どうやら誰かがドアを叩いているようだ。
せっかく気持ちよく寝ていたのに……このベッドすっごくふかふかで気持ちいいんだぞぉ……
……うん? ベッド? ふわふわ?
あれ? 私はどこで寝て、どこにいる?
「ジャンヌ! 朝だぞ! もう8時だ! そろそろ起きて朝飯を食うぞ!」
この声はレドーさんの声……レドーさん!?
「うわぁぁぁぁぁ!」
「!? どうした! ジャンヌ!」
「い、いや。なんでもないわ。ごめんなさい。今起きたわ」
「がっはっはっ! なんだ怖い夢でも見たか? まぁ起きたのならよし。さっきも言ったが朝飯の時間だ。支度をして下りてくるといい」
「ええ。わかったわ」
ドア越しに返事をして、レドーさんも笑いながら下りていった。
そうだ。私は昨日アルセレスに来て、レドーさんと会って、マリアさんとかぞ……お世話になって、このベッドで寝たんだったわ。
あまりにもベッドが気持ちよすぎて気が緩んでたわね。戦場だったら殺されても文句は言えないわ。
でもこのベッドが気持ちいいのよ。仕方ないじゃない。
「そう考えるとミレアに会ったのも昨日か。なんだかとんでもない1日だったわね」
そう呟いて、窓を開けて空を見上げる。
今日も晴天だ。新たなスタートを切るにはちょうどいい。
レドーさんが朝飯と言っていたし、早く向かおう。
私はパジャマから着替えて、簡単に身支度をして1階におりた。
ちなみに着替えはマリアさんがくれた。
そう、借りることは許されなかったよ。
「おはようございます」
「おはよう! よく寝てたな!」
「ええ。おかげさまで」
普通はよく眠れたかって聞くところじゃない?
まぁレドーさん、笑ってるし、確信犯だろうけど。
「おはよう。ジャンヌちゃん」
「おはよう。マリアさん」
「あら? もう着替えてしまいましたか。かわいいパジャマ姿を見たかったのに」
「いや~、さすがに……」
「ふふっ。ジャンヌちゃんに似合ってるはずですから、気にしなくてもいいのに。朝ごはんできてますが、ジャンヌちゃんは先に顔を洗ってきなさい。髪はあとで整えてきなさい」
「へ? 髪?」
「なんだ、気づいてなかったのか? お前さん、髪が爆発しとるぞ」
「え゛?」
マリアさんが笑いながら手鏡を渡してくれた。
そこには顔色はいいが、明らかに寝起きの顔で髪は言葉の通り、右にも左にも上にも爆発している私が映っていた。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
「あらあら」
「がっはっはっ! 朝から元気だな!」
もういやだーーーーー!
―
顔を洗った私は髪はどうしようもないので諦め、3人で一緒に朝ごはんを食べた。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま。今日もうまかった」
「お粗末様でした」
「それでジャンヌ、今日はどうする?」
「今日はレネスの街を観光したい。そして仕事も見つけることができたらいいなとは思っている」
「そうか。それならちょうどいい。わしが案内してやろう」
「それは助かるわ。ぜひお願い」
「わしも納品しなくちゃならんものがあるからな。ジャンヌ、手伝え」
「最初からそのつもりだったくせに」
「お前さんも最初からわしに案内させる気だっただろう」
二人してほくそ笑む。
レドーさんとは昨日会ったばかりのはずなのに、長年の付き合いがあるかのように感じる。
「二人とも本当に仲がいいわね。羨ましいわ」
「ジャンヌはアリアみたいでな。同じように接してしまうわい」
「確かにそうですね」
「アリア?」
「うちの娘だ。次女がアリアという」
「昨日のジャンヌちゃんに年齢が近いって言ったでしょう。それに性格も似てるの」
「あぁ、なるほど」
アリアさんか。覚えておこう。
「アリアは冒険者でな。今日もどこかに仕事で出かけておる。多分もうそろそろ帰ってくるはずだ。その時に紹介してやろう」
「それにジャンヌちゃんと気があうと思うわ」
「あいつはあいつで気難しいからのう。がっはっはっ!」
「気難しいって?」
「なぁに、あいつは少しプライドが高くてな。冒険者はソロで活動するのはできなくはないが厳しい世界でな。高ランクになればなるほど目に見えてわかる。もちろんいないわけではないが、それはほんの一握りだ。アリアもそこそこできるんだが、だからと言ってソロは厳しい状態でな。だから誰かとパーティを組むんだが、プライドが高いから長続きがせん」
「今回も臨時のパーティに入っていきましたが、帰ってきたら抜けてくるでしょうねぇ」
……仲良くなれそうな気はしないのだが。
「プライドが高いって言っても可愛いものだがな。なぁにジャンヌとは仲良くなるだろう」
「ええ。そうね」
「まぁどっちにしろ、会ってみてからだな。私に似ているというのも気になるし」
親ゆえの自信だろうか。妙に確信をもって言うな。
「ついでに長女と3女のことも話しておこう」
「そうね、教えてくれると会った時に対応はしやすいわ」
「長女はセレナ、三女はレニーという」
セレナさんに、レニーちゃんね。
「まだ家を出るまで時間があるわ。お茶をだしますので、ゆっくり教えてあげてください」
「ああ。そうしよう。わしは冷たいので頼む」
「はい。ジャンヌちゃんは?」
「あ、えっと、温かいほうが飲みたい、です」
「ふふっ。まだまだ遠慮してるところがあるみたいね。可愛らしいわ。それとお茶を入れてくる間に髪を整えていらっしゃい」
「がっはっはっ! 確かにそうだな! そのままにしてたから気にしてなかったわい」
……忘れてた。
私は顔を赤くして髪を整えに洗面所に向かった。
あれ?おかしいな?
街の中を書くつもりだったけど……まだ家?