第一章新天地 見知らぬ土地
第一節 見知らぬ土地
目が覚めると、そこは、何もないただの野原だった。
「ここは、どこだ。俺はいったい――」
そのとき、ズボンのポケットに入っていた昔ながらの携帯が震え出した。不審に思いながらも電話に出ると、急にあたり一面真っ白になり、目を開くとそこには、年輩のおじさんが座っていた。
「ここはいったい――」
「ここは、異界じゃ。お前さんは、ワシの魔力の手違いで違う土地に飛ばしてしまったのじゃ」
「あの、それは、いったい――。そもそもあの何もない世界は――」
「あそこは、天国と精霊界の時空の狭間と言った方が早いか」
話を聞いて質問していても話が進まないので、
「俺はこれからどうすれば――」
「あの土地は、君のいた土地とは違うが、大丈夫であろうが。」
そう言うと神様は、
「ではな。何か困ったことあればその機械で連絡をくれ」
そして、急に視界が晴れると、一人の女の子が、木の枝で僕の頬を突いていた。
「おーい、正人。大丈夫か?」
「あれ。ここは。てか、なぜ、奈柚がここにいる?」
「私もさっきここに飛ばされたみたい」
足元には、僕と奈柚の鞄が落ちていた。なんで死んでしまったのか記憶にない。
彼女は、浅上奈柚。いわゆる幼馴染だ。
ここはいったいどこなんだろう?マップがあればな・・・。僕がそんなことを考えていると、再び携帯に神様から電話がかかってきた。
「着いたかの、お二人さん。ちなみに、そこはソニア帝国のある森の中じゃ」
「・・・・・・・・・、はい?」
「そこから十メートル先に、ワシの生まれ故郷である、“ニーレ”がある」
「はあ!?」
おい、待てや、故郷って言ったよな。
「とりあえず行ってみます」
「あと君の鞄に入っていた、タブレットはそちら仕様になっているからの、
では、うまくやるのじゃよ、我が甥と姪よ。」
なんか今爆弾発言しなかったか。おい。
とりあえず、ニーレに行くか。僕と奈柚は歩きだした。自転車か車ががあれば速いのにな――って思いながらも、歩くと三時間、ニーレの町に着いた。まずは、どこかでお金を稼がないとね。ギルドか、でも武器もないな。さて、お金をどうするか考えながら鞄の中を見ると、何故か、ミスリルとオリハルコンが入っていた。そこで一軒の換金屋に入ると、一人金貨六〇枚で買い取ってもらい、宿舎を探していると、どこからか叫び声が聞こえてきた。声のするところに行くと、男たちが二人の女の子にからんでいた。
「どうしようか」
と、奈柚に聞くと、
「助けたら?私に、聞くまでも無いでしょ」
「ありがとう。少し行ってくる」
「うん」
細い路地を入っていくと、女の子が襲われていた。二人ともどこかのお嬢様かな。頭の上には、華やかなティアラをつけていた。
「あのー、そこの野蛮な方たち。その子らを離してやってくれませんかね」
「なんだ。てめぇ?死にたいのか。あぁ?」
「死にたくはないが、困っている人は助けないと恥だし」
「はっ?」
「さて、話し合いって雰囲気じゃないな」
「ほざくな!」
男の一人が、短剣を向けて突進してきたが、足を軽く引っかけたら盛大にこけた。“えっ?弱!! ”
とりあえずかかと落としをすると、他の連中は逃げ出した。“えっ?弱くない?何さっきの威勢は?――まっ、いっか”そう思い、僕が女の子二人に声を掛けると、
「先ほどはありがとうございます。私は、ユニア・アルカス・ソニアで、こっちが、私の友達の、エレス・レア・アースと言います」
二人の女の子のうち、一人は、黒髪で無邪気そうな活発な女の子で、もう一人の子は、栗色の髪をした性格が大人しく今にも消えそうな子だった。
「僕は、森長正人、あっちにいるのが幼馴染の浅上奈柚です」
「とりあえず、ここから離れませんか?また、あのゴミみたいな連中が来ますし」
「そうですね」
「で、今からどうされるのですか?」
「僕らは今さっきここに着いたばかりなので、宿を探してから、これからの事を決めようかと」
「なら、私たちが泊まっている宿に来ませんか?」
「えっ!いいのかい?」
「助けて頂いたお礼です」
僕たち四人は、ユニアが泊まっている宿に来たが、僕は、これ場違いじゃないかい・・・・・・と思った。
「奈柚、お金いくらくらいかな?」
奈柚に話しかけると
「金貨2枚だって」
「高いのか?」
「まぁ、今はここで泊まろうか。で、明日ギルドと武器、防具揃えようか。」
ユニアは、その話を聞いていたのか、明日は町の案内をさせてほしいと言われてきた。
「いいの?」
「はい。明日お買いものして王都に帰るので」