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最弱を自負する男、本領発揮する

 名前 銀鎧熊


 種族 獣系モンスター


 レベル200


 HP549800/549800


 MP6850/6850


 うん。鑑定で確認しても間違いなく銀鎧熊(シルバーナイト・ベア)だ。コイツからは、高確率で武器の錬成に必要なアイテムが落ちるんで、年がら年中ポップしては即座に消えるゲーム内でもトップクラスに狩られているエリアボスと言えるだろう。

 おーおー。いっちょ前に牙をむき出して威嚇している。まぁ相手は非アクティブなので、こちらから攻撃しない限りは決して攻撃してこないって特性が――


「グルアアアアアアアアア!」

「あれ?」


 別に今は欲しい素材でもないんで、そのまま無視して村へと向かおうとした瞬間。なぜか銀鎧熊がその巨体に似合わない速度で飛び出し、僕達に向かって剛腕を振り下ろしてきた。ステータスはパワー特化型だから、速度はそれほどじゃなかったけれど威力がもの凄い。周囲の木々がその余波だけで十数本なぎ倒され、地面には銀鎧熊をまるまる収められるくらいの大きなクレーターが形成されている。

 とんでもない威力だけど、これだけのレベル差があれば十分に避けられるし、何よりこの装備であれば痛くもかゆくもない。


「ご主人様っ!?」

「大丈夫大丈夫」


 非アクティブの銀鎧熊がいきなり襲い掛かて来たことには驚いたけど、僕の装備の性能と純然たるレベル差を考えれば別段慌てる程じゃない。それに万が一にもあれが直撃したところで、HPが5パーセント減ればいい方だろう。

 そういう訳なんで、この程度のエリアボスを相手に狼狽えているようじゃ最強と言われていたギルドのマスターなんてとても務まらないので、さっさと終わらせるとしますか。


「よくもご主人様に……っ!」

「メースラ。少し試したい事があるんでここは僕に譲って」

「かしこまりました」


 僕の言葉に従い戦線から退くと、銀鎧熊がすぐさまこちらに向かって突撃してきた。始めて数か月の頃はあれでもかなり怖かったけど、今ではわざわざ近づいて来てくれてどうもってしか感じない。


「えーっと……これとこれとこれだな」


 鞄の中から弱体化薬とデバフリキッドとバフキャンディを取り出し、前者二つを敵に、キャンディを口に入れてかみ砕く。

 弱体化薬はステータスを1割ほど低下させる効果がある物だけど、そこは生産皇帝としての腕を振るってもれなく+99なんで、おおよそ8割もダウンさせる事が出来。次のデバフリキッドはあらゆる状態異常を5パーセントの確率で付与する事が出来る悪あがきアイテムだけど、それを+99にする事で5割程度まで引き上げる事が出来る。

 結果として、まぁボスという事もあってステータスは6割ほどまでしか減らなかったし、デバフも20あるうちの15は通ったけど結果は上々と言えるだろう。

 最後に、使用者にバフ効果を付与する事が出来る物を使って準備完了。正直、この程度の弱者にここまでする必要があるのかと問われればないんじゃないかなぁって思うけど、非アクティブがこちらの攻撃もなしに襲い掛かってきたり、2500年経過しているとかNPCが表情豊かに動き回るとかよく分からないバグが起きているんだ。とりあえずセオリー通りに大技を誘ってのカウンターだ。


「なっ!?」

「ん?」


 かるーくハンマーを振るった瞬間。銀鎧熊の腕があっさりと消え去り、とんでもない量の出血が草木を染め上げて、周囲が一瞬で鉄臭くなる。ん? これってゲームだよな。それなのにどうして鉄臭いとか感じ取る事が出来るんだ?

 うーん。あんまり考えないように考えないようにってしていたけど、やっぱりこれって……普通のバグの領域を完全に逸脱している。口に出したり頭に思い浮かべるのは大人としてどうかとも思うんだけど、これって所謂……ゲームじゃなくて似た異世界に飛ばされてしまったと考え他方がよっぽど筋が通る――いわゆる転移に巻き込まれたって事なんじゃないかな?


「ご主人様っ!?」


 おっとっと。とりあえず考えるのは後回しだ。いくら大した事のないボスモンスターだからって、考え事をしながら戦闘をするのはいけないな。パーティーを組んでいるならまだしも今はソロだ。少しの油断が命取り。何しろ僕はギルドで最弱の存在なんだからね。

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