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異世界の旅路はトップ解決で  作者: ふきの精
旅路の始まり
7/28

7


 「おーい、こっちブラウンボアセットをひとつー」


 「はーい、少々お待ちくださいませー」


 私はエプロン姿で店内を慌ただしく駆け巡っている。

今はちょうどお昼時。狭い店内にはたくさんのお客さん。

この村ってこんなに人いたんだねー。


 村長さんとあった次の日から、早速私は食堂で働くことになった。

幸い日本でもレストランのアルバイト経験があったので、

なんとなく流れは掴みやすかったけど…


 当然ながら携帯メニューなんてなく、呼び出し鈴もない。

お客さんからの大声の注文を、調理場の料理人さんに直接伝えに行く。

メニューも初めて聞くものばかりだから、かなり悪戦苦闘した。


 今日は二日目。初日よりは手慣れたものだけど、

やっぱり知らないメニューだと覚えるのが大変だ。

それに昨日よりもなんだかお客さんが多い気がする。

私はバタバタと店内を駆け巡りながら、必死に業務をこなしていった。


 「マイ、お疲れさまー。あんたのおかげでずいぶん助かるよ」


 「ははは。ありがとうございます。なかなか慣れなくて申し訳ないです」


 お昼のピークを過ぎて、お客さんもあらかたひいたあとの休憩時間。

この食堂の女将さんから労いの言葉とともに、お昼ご飯を頂いた。

アルルバードのハーブソテー。

アルルバードというのは鶏のようなズングリむっくりな体型ながら、

華麗に飛行する鳥だ。

もちろん地球にはいない。なにせ魔法を使うんだから。

まぁ魔法といっても飛行の魔法だけど。

鳥が飛行の魔法で空を飛ぶ。……深く考えないでおこう。


 味は鶏というよりも白身魚に近い。

不思議な味と食感だけど、癖がないからソースによく合って

結構美味しかったりする。


 「いやいや、マイのおかげで仕事もはかどったよ。

 それに今日は男の客が多かったろう?」


 「……んーまだ二日目なのでどうなのかわからないですけど…

 昨日よりはお客さん多かったですね」


 必死だったのではっきりとお客さんを一人一人記憶していないけど、

言われてみれば男の人が多かったのかな?


 「この村は毎日変わり映えしないからねー。そこに違う世界の人間、

 しかもこんなに美人がきたとなりゃ、男共も見に来たくなるもんさね」


 「えっと…あ、ありがとうございます」


 面と向かって美人といわれると流石に照れるな…

伊吹が聞いたらぜったいにひやかしてきそうだけど…。

流石に私を見にお客さんが増えたとは考えにくいけど、

女将さんが喜んでくれるなら、そういうことにしておこう。


 「マイがよければ、この店でずっと働いて欲しいくらいなんだけどね」


 「すみません…私、どうしても元の世界に戻りたくて…」


 「いやいや、私の勝手な願望だからマイが謝ることはないさ。

 帰れると良いねぇ、元の世界に」


 「はい!」


 食事を終えたら一息ついて夜の為の仕込みに移る。

夜は半分酒場のようになるので、私は出なくてもいいんだとか。

酒癖の悪い客もいるからねぇとは女将さんの談。

なので、仕込みが終わったらあとは自由にしていいと言われた。


 せっかくなので、空いた時間はこの世界のことを勉強することにした。

村長さんにその旨を言うと、村長さん自ら教えてくれることになった。

何から何までお世話になりっぱなしだね。

ちなみにホイフクローさんは来た日に森へと帰っていってしまった。

ホイフクローさんが言うには、魔物である自分があまり村に留まっていると

村に迷惑がかかるかもしれないから。


 この村の人達はホイフクローさんのことを良い魔物とわかっているけど、

村以外から来た人にとっては村に魔物が徘徊していると思われてしまうんだとか。

そこまで気の回るホイフクローさんには頭が下がるばかりだ。

落ち着いたら、改めてホイフクローさんには会いに行きたいな。

最初に出会うのがホイフクローさんじゃなかったら、

今頃どうなってたかわからなかったしね。


 あっ……最初に会ったのは苔人間だったけど…。いや…森神が先だったかな?


 あまり戦いとかはしたくないけど、

あんな風に避けられない戦闘がこれからもあるかもしれない。

こっちの世界は魔物がその辺りをウロウロしている。

戦いたくないと思ってても、向こうから襲ってきたら撃退するしかない。

理由はわからないけど、せっかく戦う力を得たんだから有効に活用しないとね。

元の世界に戻るまでは死ぬわけにはいかない。


 ということでデッキを編集したり、

カードの効果を現実に使った場合を検証してみたりと

カードについても考えることにした。

伊吹だったら私なんかよりも上手く使いこなせるんだろうなぁ…

もっと色々と聞いておくんだったよ。


 夜の自室。湯浴みを終えた私は、ベッドに腰掛けてカードを表示させる。



ドリアードの癒し手


 ブロンズ   コスト1   エナジー10

 アタック 10  ライフ 10


 エナジー3:マスターかユニット一体のライフを10回復する。




ブラックドック


 シルバー   コスト2   エナジー10

 アタック 20  ライフ 15


 エナジー3:このユニットはターン終了時までガードされない効果を得る。



 

ミノタウル


 ブロンズ   コスト3   エナジー10

 アタック 30  ライフ 35




スペル・サンダージャベリン


 ブロンズ   コスト1   スペル属性・雷

 

 敵マスターか敵ユニット一体に20ダメージを与える。


 この四枚にプレートボアを合わせて

五枚のカードが私の目の前で白く輝いている。

サーベルウルフとプレートボアはそれぞれ二枚入れているので、

手札に来ることが多いんだよね。

デッキには同じカードを組み込む場合、枚数制限がかけられる。

ゴールドは二枚まで、シルバーは三枚まで、ブロンズは四枚までだったかな。


 伊吹にはバニラ多すぎとよく言われるけど、

能力があるカードもそこそこ入ってるんだからね。



 マスターのライフは250から開始される。

相手のライフを0にするとゲームに勝利するんだけど、

それ以外にも20ターン経過すると判定によって勝敗が決する。

この時判定に影響するのが、相手マスターに与えたダメージの総数。

回復などの減少は考慮せずに、単純に与えたダメージだけが参照されるので

守ってばかりじゃ勝てないんだよね。


 でもこのルールは現実になった今は関係無くなってる気がする。

というのも、私はライフが250もある気がしない。


 理由としては苔人間に何回か攻撃されたけど、

それだけで満身創痍に近くなったから。

まともに受けてたら、一撃で死んじゃうかもしれなかったし…。


 サーベルウルフと死闘を繰り広げていたのも、私の考えを後押しする。

ゲームだとユニット同士が戦闘を行うと、

お互いのアタックをぶつけあって一瞬で勝敗が決する。

極端にアタックが低くてライフが多い場合は別としても…。



 つまりアタックとライフは目安のようなもので、

ダメージなんかは現実の法則にのっとっているという可能性。

アタック15のサーベルウルフの攻撃でも

私は一撃で死にかねないくらい弱い存在だという認識。

ゲームだとあえてユニットをガードに回さずに

自分がダメージを受ける作戦もあったけど、

現実になった今はそんなことしていたら命がいくつあっても足りないだろう。


 意識をゲームから切り替えないと、

思わぬ事故で死んでしまいそうで怖いな…。




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