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異世界の旅路はトップ解決で  作者: ふきの精
旅路の始まり
25/28

25


 私と伊吹は王都までの乗合獣車の予約をとることに成功する。

ただ次のは予約で埋まっていたのでその次のになる。

二つの獣車を使って交互に行き来しているから、あと三日後だね。

それまでの間はギルドで討伐依頼をこなすことにした。



 ちなみに私もジョブを取得した。


 ・僧侶…マスターかユニット一体のライフを20回復する。

     この能力はバトル中に五回まで使用できる。



 ゲームだと守りに入っても判定があるから勝率は低いんだけど、

現実世界だと回復する能力がすごくありがたいんだよね。

それはこの間ダンジルさんを治療したことでもわかる。


 なのでこの僧侶にしたというわけ。

伊吹からは姉ちゃんらしいって言われたけど、どういう意味だろう?

ちなみに回復手段を得ても、デッキにはドリアードは入ったまま。

うん…完全に守りに入ってるデッキだね。


 格好は僧侶というにはやけに可愛らしい格好だった。

実際の僧侶とは違ってゲームとしての職業だからね。

白を基調としたシスターの服というのか…ただヒラヒラな飾りがついてるから

厳かという雰囲気ではないかな。伊吹が黒を基調としているから正反対な見た目だね。


 ギルドの職員さんからは二人とも驚かれたけど、

まとまった収入が入ったからそれで装備を整えたと思われたのかもしれない。

特に質問とかはされなかった。


 さて、新たな討伐の依頼を探すもののどれがいいのかな…。

アガマがすごく私達と相性の良い依頼だっただけに受けれないのが残念だけど…。


 「伊吹、これどうかな?」


 私は一緒になって探している伊吹に一枚の依頼書を指さす。


 銀階の森のアンデッド討伐


 銀階の森に出没するゾンビ、スケルトンなどのアンデッドの討伐。

 アンデッド討伐時に落とす黒の結晶の回収。


 銀階の森というのはこの町の北東にある森だね。そんなに場所も離れていない。

アンデッドというのは黒の結晶という物に様々な物が集まって形成される存在。

ホラー映画などでよくあるやつだ。

たしかこれもあまり人気ではない狩り場だったはず。

ん…伊吹が無言だけどどうしたのかな?


 「どうしたの伊吹? もし駄目そうだったら他のも探してみる?」


 「……い、いや駄目ってことはないよ。うん…だめってことはないさ。

 怖くなんてないから」


 「……伊吹ってホラー映画とか苦手だったっけ?」


 私はそんなに苦手ではないので、友達とキャーキャー言いながらよく見てたけど

ひょっとしたら伊吹はこういったものが苦手なのかもしれない。

それなら無理して受ける必要はないか。


 「どれかちがう依頼にしよっか」


 「べっ別に嫌じゃないけど、姉ちゃんがそう言うならそうしてもいいよ」


 ……妙に無理してる態度が可愛くはあるけど、無理させても可哀想だね。

他のを探すことにしよう。うーん……あっ、これなら大丈夫かな。



 河畔に出没する鬼殻カニの討伐


 河畔付近に質没する鬼殻カニの討伐と

 その鬼角の回収。



 鬼殻カニというのは結構大きめなカニで鬼のような角が特徴の魔物。

アガマと同じく物理攻撃が効きにくいって特徴があるんだけど

こっちは単純に甲殻が硬いためだね。

講習では前衛と後衛の連携が大事って教えられたけど、

アガマと戦いでユニットとの連携は取れてきてると思う。


 「うん、これなら姉ちゃんのユニットが引きつけている間に

 俺の魔法で攻撃できるから、アガマと同じような感じでいけると思う」


 というわけで、私達は王都に行くまで鬼殻カニの討伐を行う事にした。




――サモン・碧鱗の戦士――


 ブロンズ   コスト2   エナジー10

 アタック 25  ライフ 20


 エナジー3:このユニットはターン終了時までダメージ10軽減を得る。



 現れたのは碧い鱗のリザードマン。いわゆる蜥蜴人間というやつだ。

こちらの世界にも魔物としているみたいだけど、

緑色の鱗って聞いてるから種族がちがうのかもしれない。

能力的にも使いやすいユニットで、ダメージを軽減しつつ相手を攻撃できるので

アタックが低いユニットなら一方的に倒すことが出来る。

ただターン終了時までなので、

ガードにも使おうと思ったらエナジーが倍かかってしまう。


 「警戒お願いね」


 私の言葉に頼もしく頷くリザードマン。

うん、これなら安心して前衛を任せることが出来るね。

今回も場所に合わせてユニットを入れ替えてある。マーコールは今回はお休みだね。

他にも水に関係してそうなユニットをいくつか入れてるけど…

流石に魚は入れなかった。

水の中に入るわけじゃないからね。


 「それじゃあいきましょう」


 「わかった」


 伊吹も大丈夫みたいだね。

河畔は岩場よりはまだ見通しが良い…とはいえ油断は禁物。

リザードマンを先頭に、私達は探索を開始した。


 岩場地帯は現れる魔物がほぼアガマだけだったけど、

河畔はカニ以外にも様々な魔物が現れる。

とはいってもリザードマンを倒せるような魔物はいなかった。

鬼殻カニもひょっとしたら

リザードマンだけで倒せるんじゃないかなぁ…と思えるくらい。

能力を使っていないけど、特に問題なさそうだ。


 「碧鱗の戦士、アタック!」


 私の言葉にリザードマンが手斧を振りかぶり鬼殻カニに突撃する。

リザードマンは片手で軽々と振るってるけど、私や伊吹じゃ両手で持つのがやっとかな。

もう片方の手には丸い小型の盾を持っていて、器用にカニのハサミ攻撃をいなしている。


――スペル・ファイアボール――


 鬼殻カニをリザードマンが抑えている間に、伊吹の魔法が炸裂する。

爆炎に包まれる鬼殻カニだけど、リザードマンに影響はない。

ユニット一体以外には本当に影響がないんだね。不思議だ。

便利な半面、複数の魔物が集まっていても

効果が無いから一長一短かもしれないけど…。


 「姉ちゃん、やっぱり魔術師をとってよかったよ!

 これならカードを節約しつつスペルをうてる。

 でも敵を倒しても回数がもどらないんだよなぁ…」


 「たしかバトル中に五回って説明だったっけ?

 バトル中がどういった区切りになってるのかわからないから

 あまり過信しすぎるのもやめたほうがいいわね」


 おそらくだけどシャッフルと同じように二十四時間な気がするんだよね。

もちろん確認してみないとはっきりとしたことはわからないけど、

それでもあるのとないのとでは大きく違うからね。


 そのまま私達は順調に狩りを続けていく。

鬼角は四本ほど集まったけど、そろそろリザードマンの時間がくるかもしれない。

次のユニットはどれがいいかな…

そんなことを思っていると少し距離が離れた場所に人影を見つけた。

岩場地帯では他の冒険者の人に会う事はなかったけど、

ここの狩り場はそこそこ人気があるのかもしれない。


 「なんだぁ…見慣れねぇ魔物がいると思ったら召喚術師か」


 現れたのは五人組の冒険者。

一人どこかで見た顔がいると思ったら、講習で一緒だった子だ。

私達と同じくらいの年齢かな。濃い茶色の髪色をした少年だ。


 声をかけてきたリーダーっぽい人はダンジルさんよりも上くらいの男の人。

熊みたいに体格が良い。その横には同じくらいの年齢の女の人。

たぶん魔法使いじゃないかな。あとの二人は革鎧を身に着けた青年。


 「父ちゃん、講習の時に一緒だったやつらだ」


 少年が熊みたいな男の人に声をかける。というか父ちゃん!?

ひょっとして女の人はお母さん? 家族でパーティくんでるのかな?


 「おっ、ということは新人か。

 召喚術を使うとはいえ二人でここに来るなんてたいしたもんだぁ」


 熊みたいな人が感心したように頷く。たしかにパーティを組んでる人を見ると

普通は四人から五人が多い。それ以下だと戦闘の時に余裕がないし、

それ以上だと報酬が割に合わないからみたいだけど。

私達の場合は召喚術で補えるからその限りではない。


 話をすると、どうやら少年の実戦練習を兼ねてこの河畔で狩りをしているんだとか。

熊みたいな男の人と女の人はBランク。革鎧の二人はCランクだった。


 「へっ、すぐに父ちゃんと同じBランクまであがってみせるぜ!」


 そう言ってフフンと胸を張る少年。その姿を他の四人が苦笑して見ている。

横にいる革鎧の青年二人もプロってかんじの雰囲気なのにCランクだからね。

ランクを上げるというのがいかに大変なのか、なんとなく察する。


 「俺の名前はヴァンっていうんだ。お前名前なんていうんだよ」


 あっ、そういえば名前を名乗ってなかったね。

講習の時も別に自己紹介とかしなかったし。


 「わ――」


 「俺の名前は伊吹だ」


 私が名乗ろうとしたら、突然伊吹が私の前に来て名乗る。

あれ? 私に聞いてたような気がするけど…

いや伊吹も名前を言いたかったのかもしれないけど。


 「お、おう。」


 ヴァン少年はちょっと後ずさって返事をする。


 「私の名前は舞です。よろしくねヴァン君」


 伊吹の背中から顔を出して私も挨拶をする。

同じ冒険者仲間で同学年? になるからね。

知り合いになっておくにこしたことはないね。


 「俺たちはそろそろ帰るからよぉ。気を付けてなぁ。

 魔災の影響か、魔物の数が多いからよぉ」


 「はい、ありがとうございます」


 心配してくれてるんだね。結構いい人なのかもしれない。

さて、思わぬ出会いがあったけどもう少し狩りはしておきたいね。


 「……」


 「ん? どうしたの?」


 「…いや…なんでもない…」


 何か言いたそうだけどなんだかはっきりしない。

あまり私に隠し事する子じゃないんだけど…

でも無理に聞くこともないか。


 「さぁ、あと三、四本くらい鬼角を集めましょう」


 そう声をかけて、探索を再開した。






 「よーヴァン坊、ひょっとしてさっきのマイって子に惚れてるんじゃねぇ?」


 青年の言葉にヴァンは顔を赤くする。


 「なっ、ジョー兄いきなり何言ってんだよ! そりゃ美人で可愛いけどって何言わせるんだよ!」


 「いやぁその言葉どう考えても惚れてるわ。間違いねぇ」


 「ダル兄も何言ってるんだよ! 俺の言葉のどこに惚れてるって入ってるんだよ!」


 顔を赤くして憤るヴァンをジョーとダルがからかう。


 「二人ともあんまりヴァンをからかわないでやっておくれ。 

 見かけによらず恥ずかしがり屋なんだよ」


 「なっ、母ちゃんまで!」


 そんな様子を見てヴァンの父親クォガスは大きな笑い声を上げる。


 「まぁ若いってことは良いことだぁ。俺も母ちゃんと出会ったころを思い出すぜぇ」


 ヴァンは納得がいかないという顔をしながらも、さきほどの少女を思い出す。

最初に講習の時に会ったときから気になる存在だったのは否定できない。

さきほど笑顔で名前を呼ばれた時は、

たしかにヴァンは自分の心臓が高なったのを感じていた。


 (けど…あのイブキってやつと付き合ってるっぽいよなぁ…)


 姉と弟というのを知らないヴァンは、

講習でもパーティでも一緒にいる男と付き合っているように思ってしまう。


 「まぁそれはおいといても、あのお嬢ちゃんの使役している魔物…ありゃ強ぇぞ。

 ジョーやダルじゃ勝てないんじゃねぇか」


 ヴァンがウンウンと一人で唸っている横でクォガスが二人の青年に声をかける。


 「あの青い鱗のリザードマンかぁ。たしかにごつくて強そうだったなぁ」


 「クォガスさんなら勝てそうですか?」



 「まぁ俺ならなぁ。といっても正面からやるとなりゃ手こずるかもしれんなぁ」


 「そんなにですか…俺たちじゃ強そうってわかっても、そこまで力量を計れられませんよ」


 そう言ってダルが頭をかく。


 「相手の力量を知るっていうのも大事な能力だ。

 まぁ経験を積んでいけばなんとなくわかるようになるさぁ」


 ジョーとダルの頭を乱暴に撫でてクォガスが大笑いする。


 「ほらほら、雑談はその辺にして町に戻るよ。

 まだ依頼は達成してないんだからね!」


 その言葉に男達は元気よく返事をする。ヴァンだけはいまだにウンウンと唸っていた。


  

 

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