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異世界の旅路はトップ解決で  作者: ふきの精
旅路の始まり
19/28

19



 「いっぱいあるわね。どれがいいのかしら…」


 私は柱にかけられている、いくつもの服を見ながら伊吹に尋ねる。

今私達はちゃんとした防具を買う為に、冒険者御用達の店に来ている。

伊吹は騎士団の人から貰った頑丈そうな革鎧を着ているからいいんだけど、

私は日常着るただの布の服だ。


 流石にこの格好で登録にいくのは、ふざけるなと追い返されそう。

なので私でも身に着けられそうな防具を探しに来たんだけど…


 「これは…ちょっと大きすぎるか…」


 「こっちは重くて無理ね…」


 私と伊吹は色々と見て回るも、着れそうなものが無い。

大きすぎたり、板金補強してて重かったり…


 「あっ、これなら着れそうだわ」


 私は一着の革鎧に目を止めた。

所々補強の為のプレートが埋め込まれているけど

ほぼ革だけの為、問題なく着て動けそう。

パンツはショートというよりもハーフくらい。

前に出て戦うというよりは、サポートに適したかんじかな?

そういえばマヨリさんもこれと似たような格好だったっけ。


 昨晩の話で、私達は召喚術師兼魔術師として名乗ろうという話になった。

カードの力は理解されないだろうし、変なトラブルの種になっても困るからね。


 あとパーティを組むのはやめたほうがいいと言う結論になった。

これは手札がランダムに配られると言う欠点があったから。

上手く使いたいカードを引ければいいけど、

そうでない場合他の人を危険にさらすことになる。

召喚したユニットに時間制限があるというのも、頭を悩ませる。

依頼によっては時間がどれくらいかかるか

わからないようなものもあるだろうし…。


 というわけで、私と伊吹の二人パーティを組み

近場の時間があまりかからなそうな依頼から受けていくということに。

それでも魔物と遭遇する確率は高いし、油断はできないけどね。


 「姉ちゃん、これも持ってたら? 一応護身用ということで」


 伊吹が手渡してきたのは杖だ。

見た目は魔術師が使ってます! というかんじだけど…


 「それなんの力も付いてないただの杖みたい。

 でも頑丈だし、いざという時にそれで叩けば」


 なるほど…たしかに苔人間に襲われた時も、

何かあればなぁと思ったからね。

刃物を使うのは正直ちょっと気持ち的に難しかったけど、

これならなんとか振り回すくらいはできそう。


 魔力が付いていないからなのか、値段はかなり安かった。

普通はこれに魔力を付与することで魔術師のサポート武器になるんだとか。

つまり、まだ素材の段階というわけだね。

店員さんに魔術付与のお店も紹介されたけど、やんわりとお断りした。

私のカードは別に魔力とかを使うわけじゃないからね。


 伊吹はその間に剣を買っていたみたい。

訊くとどうやら騎士さん達に稽古を付けてもらっていたんだとか。

伊吹って運動神経いいもんね…その辺は正直羨ましい…。


 「いや、実戦じゃほとんど戦ったことないから形だけだよ。

 ラハンにも勝てたことないんだよなぁ」


 いかに新米騎士っぽいラハンさんといっても、

正式な騎士なんだから勝てないのは当たり前だと思う。


 そんな会話をしながら装備を整えた私達は、

ようやく冒険者ギルドへと向かう事にする。

場所は私達の住んでるステアと同じく大通り沿い。

冒険者ギルドだけじゃなくて、

出入りの激しい施設は大通り沿いにあるんだけどね。


 「姉ちゃんに絡んでくる奴いたら、俺が守るから」


 扉の前で伊吹がそんなことを口にする。

小説の読みすぎなんじゃないかな…

そうそうトラブルなんて起こらないよ。


 身構える伊吹の背中を押して、ギルドの中へと入っていく。

思ってたよりも清潔なかんじがする。

って私も伊吹の影響をうけてたかも。

人もちらほらいるけど、ごった返してるって感じはしないね。

何人かの人から視線を感じたけど、

たぶん見たことない奴らが来たとか思われてるのかも。


 とりあえず受付らしい場所を見つけたので、

周囲をやたら警戒する伊吹を引っ張ってそちらに向かう。


 「いらっしゃいませ」


 簡潔な挨拶をしてくれたのは受付のおにいさん。うん…おにいさんです。

伊吹が受付が女の子じゃない!? とか小声で言ってるけど気にしない。


 「あの、私達迷い人なんですけど、こちらで登録できますか?」


 私の迷い人という言葉に、一瞬表情が驚いた顔になったけど登録できるのかな?


 「はい、問題ありません。

 もしよろしければこちらで講習を用意できますがいかがいたしますか?」


 「講習…?」


 説明を聞くと、どうやら迷い人など関係なく

新たに登録に来た人には、講習というシステムが利用できるんだとか。

講習では冒険者としての基本的な知識、そして心構えなんかを学ぶことになる。

少しでも無謀な行動をして命を落とす若者を減らすために、

そういったシステムができたみたい。

私は二つ返事で受けることを伝えた。

むしろこちらからお願いしたいくらだったからね。


 登録するに際して簡単な申請書を書くことになったけど、

出身地って日本なんて書いても分からないよね?

迷った結果受付のおにいさんに聞いてみると、迷い人でいいらしい。

家族の名前を書くところがあったので伊吹の名前を書いたけど、

どうやら万が一の時の連絡先になるんだとか。

二人とも冒険者になるから、あまり意味が無いのかもしれない…

万が一の時は絶対起こらないようにしないとだめだけど。


 「お二人は姉弟なんですね。たしかにどことなく似てますね」


 昨日から町の人達を見てるけど、

黒髪と黒眼ってほとんど見かけないんだよね。

だから並んでると姉弟に見られやすいんだと思う。

同郷から来た人は流石にいないのかもしれない。

申請書をなんとか終わらせたものの、どうやらこれで完了とはならないみたい。


 「まず最初に、基本的な戦闘能力を確認させていただきます。

 こちらは最低限の能力がなければ命の危険がありますので、

 テストに合格できませんとギルド証の発行が出来かねます」


 まぁ流石にフリーパスで冒険者になれはしないよね…。


 私達は受付のおにいさんに案内され、ちょっとした広場にやってくる。

うっ…召喚の力があれば大丈夫だと思うけど、

やっぱりテストってなると緊張するなぁ。

伊吹はなんだかやる気に満ち溢れてる。


 ギルドの職員さんは途中でおにいさんから、

中年のおじさんへとバトンタッチした。

この人がテストの相手なのかもしれない。ダンジルさんよりちょっと上くらいかな。

スキンヘッドの怖そうな見た目の人だ。

ギルド職員というよりは、傭兵とか…山賊とか?

ちょっと失礼なことを考えてしまった。


 「俺の名はブラス。

 ギルドの職員をしているがこれでも元は冒険者をやっていた。

 今からお前達の力を見せてもらうが…二人とも魔法職でいいのか?」


 「はい。俺は魔法をメインに戦います」


 「私は召喚術を使って戦います」


 私の言葉に、ブラスさんがほぉと声をあげる。

召喚術師自体が少ないからかもしれない。


 「ふむ…武器を使ってのテストなら俺が直接見るんだが…」


 そう言うと、ブラスさんは広場の中央に何やら埋め込んだ。


 「いまから土ゴーレムが出てくるから、それと戦ってもらう。

 強さ的には銅-1の魔物と同レベルだ。これを倒せるのが最低条件になる」


 うっ、倒せないとだめなのか…。

ううん、倒せないと実戦じゃ命にかかわるんだから当然か。

とにかく手札のユニットにがんばってもらうしかない。


 「ではそちらの魔術師の…そういえば名前を聞いてなかったな」


 「伊吹です」

 「舞です」


 「そうか。ではイブキからテストを始めよう。準備が出来たら教えてくれ」


 そう言って、私とブラスさんは広場の端っこに移動する。

戦いの邪魔になったらまずいからね。

伊吹はなにやら集中してるっぽいポーズをしている。

うん…でもあんなポーズ必要だったっけ?

たんに魔術師っぽい振る舞いをしてるだけかもしれないけど…。


 「お願いします」


 少しして、伊吹の言葉が広場に響く。


 「ではテストを始める」


 そう言うとブラスさんは何かを地面に突き刺す。

次の瞬間、ブラスさんが何かを埋めたらしい場所から

一体の土で出来たマネキンが現れる。

思ったよりは小さいけど、私よりは普通に大きい。


 土ゴーレムは伊吹の姿を認識すると、

両手を構えて突撃する。見た目よりも速い!?

正直ゴーレムっていうくらいだから、鈍重そうなイメージがあったけど…。

伊吹は向かってくる土ゴーレムを見据えたまま動かない。

ひょっとして虚をつかれて動けない?


 私の心配をよそに、伊吹は手を前に突き出して叫ぶ。



――スペル・獄炎槍の投擲――


 その言葉とともに灼熱の槍が生み出される。うねりを上げて槍は飛んで行き、

迫りくる土ゴーレムをバターを溶かすかのように一瞬で地面に還す。


  「なっ1?」


 横にいるブラスさんが驚きの声を漏らす。

テストでここまでの威力の魔術を使う人はいなかったんだと思う。

伊吹は良い笑顔で私に向かってガッツポーズをとるけど…

昨日の夜あまり目立つようなことはしないっていってたの誰だっけ…?

私も使ったことのあるスペルだから分かるけど…


スペル・獄炎槍の投擲


 シルバー   コスト3   スペル属性・炎

 

 敵ユニット一体に50ダメージを与える。

 

 サンダージャベリンの強化版といった感じのスペル。

コストの割に高いダメージをだす…んだけど、マスターには使えない。

高ステータスのユニットなら死神の手のほうが確実性があるから、

こっちのスペルは人気がないみたい。

ただ、どう考えても土ゴーレム相手には過剰すぎるよね…。


 「う…む。合格だ。というか、なんだあの魔法は?

 あれほどの威力の魔法…Aランクの魔術師でもそうそう使えんぞ」


 ブラスさんが感嘆の声をあげてる。イブキはやり遂げたぜって顔してるし…

まぁ伊吹の気持ちもわからなくはないけどね。

とはいえ、私まで目立つとそれこそギルドから目をつけられそうだ。

呼び出すユニットはコスト1のにしておこう。


 「では次はマイだな。準備が出来たら教えてくれ」


 その言葉に私は伊吹と入れ替わる様に広場に立つ。


 「お願いします」


 「…? 召喚術師なんだよな? よびださなくていいのか?」


 あっ…そっか。ゲームだと始まってから呼び出すけど、

普通は召喚術師って戦闘が始まる前に呼び出すものだよね。

ホイフクローさんが普通の召喚術師と違うっていってたのも

こういったところを見てたのかもしれない。


 「すみません、今呼び出します」



――サモン・サーベルウルフ――



 見慣れた姿の獣が私の前に現れる。


 「お願いね」

 

 優しく頭を撫でると、嬉しそうに尻尾を振る。うん…頼りがいあるし可愛いわ。

っと和んでる場合じゃなかった。


 「お願いします!」


 私の言葉に、ブラスさんが先ほどと同様に土ゴーレムを呼び出す。

苔人間よりは弱そうだから、サーベルウルフで押しきれるかな?


 「サーベルウルフ、アタック!」


 私の言葉で勢いよく躍りかかるサーベルウルフ。

爪を突き立てながらそのまま押し倒し、

牙を首にめり込ませる。うん…仲間だから心強いけど、やっぱり怖ろしいね…。

土ゴーレムはそのままボロボロと土にかえっていった。


 「それまでだな。マイも合格だ」


 「ありがとうございます!」


 伊吹の時よりは驚いた様子が無かったけど、合格できれば問題ないね。


 「ギルドの講習を受けるんだったな。講習は午後から行う事になっている。

 それまでギルドの中を見学するなり、昼食をとるなりして時間をつぶしてくれ」


 講習は何人かまとまって受けるのかもしれないね。

私達はブラスさんにお礼を言って、とりあえずギルドないを見て回ることにした。

伊吹じゃないけど、たしかになんだかワクワクした気分になってくる。

私も冒険者になってみたかったのかもれしない。





 「お疲れ様、ブラス。何かすごい音がしたけど?」


 訓練場を出たブラスに声をかけてくる女性。

 

 「ヒルリスか。いや、新米とは思えない魔法を使ったからな。

 多分その音だろう」


 ブラスはそういって、先ほどのテストの時に少年が

Aランクもかくやという魔法を行使したことを説明する。


 「へぇ、それは凄いわね。迷い人は時たま凄い力を持ってる事があるらしいけど

 その子もそのタイプかもしれないわね」


 「迷い人なのか?」


 「ええそうよ。二人ともね。お姉さんのほうはどんなかんじだったの?」


 「ん? 姉弟だったのか? たしかに似ているなとは思ったが」


 「このあとの講習を私が担当するから、参加者のプロフィールはチェックしてあるの」


 そう言ってヒルリスは手に持った書類をパンパンと軽く叩いた。


 

 「そうだな…」


 ブラスは召喚術師である姉のことを思いだす。

弟の魔法に驚いて隠れがちではあったものの、

姉の方も召喚術師としては優秀なのだと考える。


 「召喚に際してのレジストがまったく感じられなかったな。それにえらく懐いている。

 どちらかというとビーストテイマーに近い気がしたが…」


 普通は召喚術を使用すれば、召喚した魔物にある程度抵抗をされる。

それを魔力で無理やり使役させるのが召喚術師だ。

ブラスが見たところそんな様子は微塵もなかったし、

ましてや召喚した魔物が喉を鳴らすなど聞いたこともない。

ビーストテイマーならば動物と意志疎通をして、

無二の友の如き関係を築くものもいると聞いているが。


 「呼び出した魔物は見た事が無かったが、

 銅-2から銅-3といったところだろう」


 「へぇ、ひょっとしたら元いた世界でも

 名の知れた術師だったのかもしれないわね。

 なんにせよ、期待できる新人は大歓迎ね。最近魔物達が騒がしいもの」


 ヒルリスの言葉に、ブラスは何が言いたいのか察する。


 「魔災か…」


 ブラスの言葉にヒルリスは頷く。


 「騎士団からも各地で普段とは違う魔物の動きがあると通達が来ているわ。

 ギルドに入る依頼も、銀が増えてきている。間違いないでしょうね」


 「天災ならぬ、魔物による災厄…。だが新人には少々荷が重かろう」


 「それでも戦わないといけなくなるわ。

 じゃないと、守りたいものを守ることが出来ないんですもの…」



 そう言うとヒルリスは訓練場をあとにする。

これから起こるであろう災厄を重い気持で考えながら…。


 

 



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