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異世界の旅路はトップ解決で  作者: ふきの精
旅路の始まり
11/28

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 ダンジルさんの傷を癒した私達は、

村長さんを加えて食堂へと戻ってくる。

村長さんが書いていたのは町への緊急の援軍要請届だった。

ただ町までは急いでも数時間はかかるし、

そこから援軍を招集してこちらにくる時間を考えると

あわせて半日はかかるみたい。

援軍が到着するまではなんとかこちらだけで被害を抑えるしかない。


 食堂では元気になったダンジルさんの姿に驚くリベルさん達。

私はリベルさんに簡単な説明をする。

とはいえ詳しく説明できるほどの知識を持ち合わせていないので、

召喚術に近い力(ただし呼び出せるものは安定しない)とだけ伝えることにした。



 ちなみにドリアードはもう消えてしまっている。

村長さんの家でダンジルさんに説明している途中で

消えちゃったんだよね。

能力を使ったので、消える時間が速かったのも関係しているんだけど。


 私のデッキにはもう一枚ドリアードが入っているけど、

次にいつ引くのかはわからない。

だから回復を期待されても、

上手く召喚できるかわからないとは伝えておいた。

じゃないと大事なところで呼べませんじゃ

取り返しのつかない事になりかねないからね。


 「いえ、ダンジルさんの治療をして頂き感謝いたします。

 仲間の傷を治してくれてありがとう」


 リベルさんから丁寧なお礼を頂いた。私が治したわけじゃないので、

なんだかむずがゆいけど、ドリアードにも伝えておきますと言っておいた。

そういえば呼び出したドリアードだけど、

どうやら最初に話したドリアードと同じ人だった。


 どういった法則かわからないけど、

同時にもう一枚ドリアードを呼び出したらどうなるんだろう…

機会があったら試してみたいところだけど、今はそんな余裕がないね。


 「マイったら召喚術師だったんだねぇ。全然知らなかったよ」


 女将さんからもびっくりされた。まぁ言う機会もなかったしね。

でもいまは少しでも戦力が欲しいのなら、協力するつもりだ。

この村が荒らされるなんてみたくないから…。


 「ありがとう。マイさんのお気持はありがたくうけとっておくわ。

 でも無茶はしないこと」


 リベルさんからはそう心配された。すごく優しい目で。


 土地喰らい対策の話し合いはその後しばらく続けられた。

土地喰らいは魔物の危険度を示すランクとして銀-5の位置にいる。

ランクは銅、銀、金の順番に強く、それぞれ1から5に分けられている。

金-5というのが、冒険者ギルドの設定している枠のなかでは

もっとも危険とされている。


 つまり銀-5っていうのは…かなり危険らしい。

リベルさんに私が今まで見た魔物…

苔人間と森神はどのくらいか聞いてみたところ、

苔人間(正式な名前はモールドイーターらしい)が銅-2。

森神(こちらはベルンガープという魔物の特異種なんだとか)が金-3。


 冒険者ギルドで討伐依頼がでるものだと普通は銀-3くらいまでなので、

普通の依頼では出てこない魔物…ギルドが緊急招集をかけたり、

騎士団に要請を出すくらいってこと。


 なんだか聞けば聞くほど不安が増していくんだけど…。

救いなのは土地喰らいという魔物は、

人間を好んで捕食するタイプの魔物ではないということ。

雑食なのでもちろん獲物と思われるんだろうけど、

魔物の中には人間を好んで襲うタイプも多いので

そういった魔物よりは対策も取りやすいんだとか。


 作戦としては援軍が来るまで、

村から離れるように引き寄せつつ時間を稼ごうというもの。

上手くいけばそのまま荒れ地の方へ誘導してお帰り願おうと言うものだけど、

最悪でも村の中で暴れまわらないように村の外で足止めするという方針になる。

残念なことに今この村にいる冒険者の人達はリベルさん達だけ。

だから取れる作戦も限られてしまう。


 「引き寄せる役は私達が行います。万が一村に魔物が向かった場合は、

 村長さんの指示で避難してください。

 土地喰らいは見た目以上に移動速度が速い魔物です。

 どうしてもの時は家畜を囮にしてでも、逃げることを優先してください」


 リベルさんが魔物への対策を集まった人達に話している。

とはいえ戦うって言う選択肢はない。

いくら武器を持っても冒険者の人達みたいに戦えるわけじゃないし、

その冒険者の人達でも勝てない相手に挑むのは無謀だよね…。


 私は…どうだろう。召喚が上手く出来れば援護くらいはできるかもだけど…


 「マイさんも村の人達と一緒にここで待機してください」


 私の逡巡を見てリベルさんがそう声をかけてくれる。


 「ここは私達専門家にまかせてね」


 そう言ってにっこりと微笑むリベルさん。

うーん…力になりたくてもなれないもどかしさを感じるなぁ。

でもなにか力になりたい…何かあったかな…


 私は自分の手札を表示する。他の人達にはみえないんだけどね。


 サポートできそうなのはない…

ユニットを呼び出すにしても時間制限があるからなぁ。


 「そういえば、今は魔物どこにいるんですか? 

 追い払ったって聞きましたけど」


 「森の入口あたりの地中にいるわ。

 私達も多少はダメージを与えたから、少しの間は動かないはず。

 でもこのあたりの畑は土地喰らいにとって格好の餌に見えるでしょうから

 ほおっておけば間違いなくこの村に向かってくるでしょうね」


 ……私が戦いに参加しても絶対に足手まといだよね…

銅-2の魔物にすら命の危険があったんだから…

だから村でじっとしているのが一番だと思う。だから…


 「あの、私も魔物の足止めに参加します!」


 自分でもそんな言葉が出るとはおもわなかった。

だけど力があるのに何もしないなんて耐えられない。

私の言葉を聞いて、リベルさんの目がスッと細められる。

あっ…これすごく怒ってる顔だ。


 「マイさん…気持ちは嬉しいけど、

 私達はあなたの身を守りながら戦う余裕はないの。

 でもあなたが危険な状況になったら助けようとしてしまうわ。

 それでパーティが危険に晒されてしまうとしても」


 「…」


 「……ごめんなさい、きつい言い方をしたわね。でも…わかってちょうだい

 あなたを危険な目にあわせたくないの」


 リベルさんはすぐに元の優しい顔に戻ると、そっと私の肩に手を置いた。

その手の温かみが、私の為を思って言ってくれているんだなぁと感じさせる。

それが余計に自分自身のもどかしさを膨らませる。


 「ほーっほほ、ではわしが守ってやるとしよう」


 私とリベルさんが無言で顔を合わせている時、聞きなれた声が響き渡った。




 「ホイフクローさん!」


 「ホイさん!?」


 私とリベルさんの声が同時に発せられる。

リベルさんもホイフクローさんの事を知ってるみたいだ。

この村に頻繁に来るって言ってたし、

顔を知っててもおかしくないかもしれないね。


 「少々森の外が騒がしかったようなので様子を見に来たら、

 なかなか厄介な魔物が出たようじゃの」


 「それよりも守るとはどういうことでしょう?

 私は彼女が戦場に立つことは容認できません。

 たとえホイさんが守るとしてもです。失礼ですけど

 ホイさんが土地喰らいからマイさんを守りきれるとは思えません」


 ……目を細めてホイフクローさんに言葉を放つリベルさん。

さっき私に言ってた口調よりもなんだか冷ややかだ。

というか、どうして私リベルさんに抱き寄せられているんだろう…。

リベルさんはホイフクローさんに向き直ると同時に、

ホイフクローさんから隠すように

私を抱き寄せた状態だ。すごく…密着です…。


 「ほーっほほ、その娘の力お前さんが思っている以上に強いぞ。

 少なくとも足手まといになることはなかろう」


 「……」


 リベルさんは黙っている。でも納得してるようには見えない。

肩にまわされた手に力が入っているのがわかる。


 「それにのぉ…戦場に立つとはいっておらんぞ」



 続くホイフクローさんの言葉に、

私とリベルさんは困惑に包まれることになる。

あれ…私が戦場でサポートしたいって話だったよね?

いまいちホイフクローさんの言いたいことがよくわからない…。


 その時食堂の入口がざわめいた。何かあったのかな?

そちらに目を向けるとまるっこい毛玉…

というかネズミのような動物が見えた。

ネズミといってもカピバラくらいはありそうなくらい大きい。


 そのネズミは一目散にこちらに向かってくる。魔物…? 


 「あぁ、マイさん気にしないで頂戴。これは仲間の使い魔だから」


 ネズミはリベルさんの前にくると、驚いたことに言葉を喋りはじめた。


 「リーダー、あいつそろそろ動きだしそう。急いで戻ってきて!」


 その声はキツネ耳の少女の声に似ている。使い魔っていうくらいだし、

実際にネズミを通して少女が話しているのかもしれない。


 それよりもあいつというのは…間違いなく土地喰らいかな。

それが動きだしそうになっている。


 私は無意識のうちにリベルさんの服を握りしめていた。


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