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異世界の旅路はトップ解決で  作者: ふきの精
旅路の始まり
10/28

10



 「んーふふーん。ふーんふーんふふーん」


 食堂で働き始めて七日目の夜、

湯浴みを済ませた私は鼻歌を歌いながら

上機嫌でデッキの編集をする。

どうして上機嫌なのか?


 それはカードパックを入手するための

ポイントを獲得していたことに気が付いたから。

ポイントは750溜まっていた。どうやら魔物を倒さなくても、

働くことでポイントが溜まったらしい。

お給金はちゃんと貰っているから、

勝手にポイントに変わったとかじゃないみたい。

戦わなくてもカードを入手できることがわかって、

なんとなく気が楽になったかな。

やっぱり戦いは怖いからね。


 まぁ魔物を倒した方がポイントを獲得できる量は多いみたいだけど…。


 とりあえず三回パックを入手できるけど…

ポイントの他の使い道もあるかもしれないし、

一回だけポイントを使って入手することにした。

ゲームと同じならゴールドの確率10%、シルバーの確率20%、ブロンズの確率70%になる。

結構シビアな確率だよね…。まぁゴールドとシルバーは枚数制限あるから、

たくさん入手できても使いきれないんだけど…。


 私はパックを入手することを意識する。


 次の瞬間、私の目の前に広がる5枚のカード。

それはキラキラと輝いて、すごく幻想的な光景だった。


魔除けの首飾り


 シルバー   コスト1   エナジー5

 マジックアイテム


 あなたが能力、スペルによってダメージを受けたときのみ使用可能。

 そのダメージを10軽減する。軽減した場合、エナジーを1減少させる。



春風のハーピー


 ブロンズ   コスト2   エナジー10

 アタック 10  ライフ 10


 あなたが風属性のスペルを使うたびに、このユニットのエナジーを1回復する。


 エナジー3:ユニット一体のエナジーを1回復させる。



コボルトの双剣士


 ブロンズ   コスト1   エナジー10

 アタック 10  ライフ 10


 エナジー2:ターン終了時までこのユニットのアタックを+10する。



コボルトの物見


 シルバー   コスト1   エナジー10

 アタック 5  ライフ 10


 あなたがコボルトの名前の付くユニットを召喚した場合、カードを一枚引く。



スペル・アンチエレメンタル


 ブロンズ   コスト3   スペル属性・無

 

 相手が無属性以外のスペルを使用した時のみ使用可能。

 そのスペルの効果を無効にする。



 私は入手したカードを一つずつ確認する。ゲームで見た事あるカードもあれば、

初めて見るカードもあるね。


 コボルトのカード二枚はゲームで使ったこともあるカードだ。

これら以外にもコボルトシリーズはいくつかあって、

相互に効果を与えあってより強力な効果を得ることが出来る。

伊吹が言うにはシナジー効果っていうらしいけど、この二枚だけじゃ使いにくいかな。

シナジーが働けばコスト以上に使えるんだけど…。


 魔除けの首飾りはマジックアイテムというタイプのカードだ。

全てのカードはユニット、スペル、マジックアイテムというタイプに分かれている。

マジックアイテムはアタックもガードもできないけど、特殊な効果を持つものが多い。

このカードだったらエナジーの許す限り、プレイヤーのダメージを軽減することが出来る。

中にはややこしい能力のものもあって、私はあまり使う事が無かった。

伊吹はこういったカードを使うのが凄く好きみたいなんだけど…性格なのかなぁ。


 


 ゴールドがでなかったのは残念だけど、

五枚でシルバー二枚は当たりと思っていいかもしれないね。

全てブロンズという可能性もあるんだから…




 今使ってるデッキは低コストのユニットを召喚しつつ、

それらを強化して相手を攻撃するタイプのデッキになる。

ある程度ダメージを与えたところで、スペルを使って止めをするという作戦。

コストを低めで揃えているので、コストが足りなくて

カードが使えないって状況がほとんどないのが強みだったりする。

とはいえ、この世界では身を守る手段も出来るだけ欲しいよね。

ゲームと違ってライフを失うということは、死に直結する。


 なので、「魔除けの首飾り」と「スペル・アンチエレメンタル」

をデッキに入れることにする。

コボルトシリーズはもう少しコボルトが揃ってからかな。

ハーピーは…私じゃ上手い使い方がおもいつかないなぁ。

強いユニットを長く存続させるくらいかな?


 ふふっ、でもこうやってデッキを編集してると

伊吹とゲームしていた時を思い出して楽しくなってくるなぁ。

いつもは伊吹にいいように負けてしまうけど、

たまに上手く作戦が決まった時なんかは本当に楽しかった。

負けたらすぐに再戦しようとするんだから、負けず嫌いだよね。


 さて、編集も終わったしそろそろ眠ろうか。

私はベッドにもぐりこむと、穏やかな眠りに落ちていった。




 んん…夜中…だよね。まだ外は暗いけど何故か目が覚めてしまった。

…ってなんだか下の方が騒がしい…。

何かあったのかな…?


 私は服を着替えて階下に下りていった。



 「えっ…一体何が…」


 食堂の中は真夜中だというのに、騒然とした人達で埋まっていた。

お酒を飲んでるってかんじじゃない。難しい顔で何か話し合ってるみたいだ。

中央には前に会った冒険者の人達が見える。

たしかリベルさんと…背の高い青年の人だ。

名前はちょっとわからない。後の二人はみあたらないけど…。


 私は調理場にいる女将さんを見つけて、何があったのか尋ねてみる。


 「あぁ、起こしちまったかい? 悪いことをしたねぇ」


 女将さんは簡単な食事をつくっているみたいだった。


 「いえ。それよりも何かあったんですか?」


 私の言葉に、一瞬女将さんは逡巡するも素直に教えてくれる。


 「どうもリベル達が危険な魔物に遭遇したみたいなんだよ…」


 「魔物……」


 女将さんが言うには、依頼で森に入ったリベルさん達だけど

採取が終わって森を出たところで巨大な魔物を見つけたみたい。

魔物の名前は土地喰らい。

巨大なミミズのような外見で、普段は地中に住んでるみたいなんだけど

時たま地上に現れては餌を求めて徘徊するんだとか。

それが村付近の森の外れにいた。


 本来は荒野や岩場なんかに住む魔物みたいなんだけど、

肥沃な土地を食い荒らすために、

時たま人里近くまで現れることもあるみたい。



 なんとか追い払って逃げることが出来たけど、

その際にダンジルさんが重傷を負ってしまった。

ダンジルさんは村長さんの家で治療をしていて、

他の人達で土地喰らいの対策を練っている最中ということだった。


 土地喰らいというのは、その名前の通り土地を喰らい荒らしてしまう。

このあたりで暴れまわったら、

村の畑などは使いものにならなくなってしまうんだとか。

もちろん人や家畜にも被害は出る可能性が高い。村にとって非常事態だ。


 「まだまだ話し合いが終わりそうにないからねぇ。

 とりあえず軽く食べられるものを作ってるんだよ」


 「私も手伝います!」


 「そりゃ助かるよ。でも申し訳ないね。

 もうすぐ町への獣車が来るって言うこんな時に」


 女将さんがわるいわけじゃないのに、謝られてしまう。

こっちこそ普段良くしてくれてる村の人達に何かしたいくらいだよ。

でも戦闘に関しては私よりもよっぽど腕の立つ冒険者の人達でも敵わない魔物…

私が力になれるとは…


 あっ…でもサポートなら力になれるかもしれない。

私はドリアードの癒し手の能力を思い出す。

あの力を使えば重傷になったダンジルさんを治療できるかもしれない。


 私は女将さんにことわって、村長さんの家へと急いだ。



 走りながらカードを見るも、手札にドリアードはない。

私はカードをマナに変えながらドリアードを引くように祈る。


 白く輝くカード…マナに変換……ドロー……きた!


 三回目のドローでドリアードを引くことが出来た。

私は手札のドリアードを確認しつつ、村長さんの家へと入っていった。


 村長さんの家は食堂と同じように慌ただしい状況にあった。


 「おや、お嬢ちゃんか」


 疲れた顔の村長さんが机の上で何か書き物をしていた。


 「あの、重傷の方がこちらにいると聞いたんですけど」


 「あぁ、ダンジルさんか。奥の方で安静にしているよ。

 治療をしたから命に別条はないが、動ける状態じゃないんだ…」


 それを聞くと、私は奥の部屋へと向かう。村長さんは何か言いたげだったけど、

それどころじゃないんだろう。再び何かを書く作業を再開する。


 奥の部屋ではダンジルさんがベッドに寝ており、村長の奥さんが看病していた。

ダンジルさんはところどころ包帯で身体を巻かれており、痛々しい。


 「あらマイちゃん。どうかしたのかい」


 村長の奥さんが私を見て声をかけてくる。

ここ何日か村長さんと一緒に勉強を教えてもらってるんだよね。

優しいおばさんといった雰囲気の人だけど、いまは疲れていて表情がかげっている。


 すぐにでも治療を試みたいところだけど、

いきなり召喚すると驚かせちゃいそうかな。


 「あの、私その方を治療できるかもしれません」


 その言葉に驚いた顔をする奥さん。

この村でカードを使ってる姿を見せたことないから、

そりゃびっくりするよね。でも隠したいわけじゃないし、

役立てるなら使うのを惜しむ理由はない。


 「ちょっとびっくりするかもしれませんけど、危険じゃないですから…」


 そう前置きをして、私はドリアードの癒し手のカードを手にする。


 ――サモン・ドリアードの癒し手――


 その言葉とともに現れる妖艶な美女。


 当然のことながら、奥さんは目を丸くして口をポカーンとさせている。

でも今は治療をすることが優先だね。


 「ドリアード、能力を使ってこの人を癒すことが出来るかな?」


 説明ではマスターかユニットの回復ができるんだけど、

この人はユニットとして認識されるのかどうか微妙なんだよね。

できなかったら私にできることは無くなってしまうんだけど…


 ドリアードは寝ているダンジルさんを見つめてなにやら確認している。

……どうかな……


 「マスター、回復は可能のようです。能力を使用してもよろしいでしょうか?」


 そう言ってドリアードは微笑んでくれる。よかったぁ。


 「うん、お願い」


 私の言葉でドリアードがダンジルさんに手をかざす。

するとうっすらとした光がダンジルさんを包み込んで…

やがて消えていく。治療するところ初めて見たけど、これで大丈夫なのかな…?


 ドリアードがかざした手を下すと、

ダンジルさんが「うぅっ」と声をあげて目を開ける。

ってかなり高い効果があるんじゃないの? 

ダンジルさんそのまま身体を起こそうとしてるけど、

さっきまで重傷で身動きできなかったんだよね!?


 奥さんもドリアードを召喚した時以上に驚いている。

傷の状態は看病していた奥さんが一番よく知ってるはず。

奥さんの驚きようから、よっぽど酷い怪我だったんだろうと推察できるけど…。


 「ここは…たしか俺は土地喰らいの体当たりを受けて…

 なんともない…?」


 自分の身体を見ながら不思議そうな顔のダンジルさん。

きっと怪我した時に意識をなくしたから、頭が混乱しているのかもしれない。


 「ダンジルさんよかったよぉ。

 あなたの治療をマイちゃんの呼びだしたこの方がしてくれたんだよぉ」


 奥さんがダンジルさんに説明してくれる。

その説明を受けてマジマジと私とドリアードを見るダンジルさん。


 「……女神か…?」


 私とドリアードはお互いに顔を見合わせて…

なんと反応していいものやら困った顔をし合う事になった。




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