佐藤塵八の戦い
今度は違う視点に変わります
目の前の敵を見上げる。自分の身長は平均よりも高いと自負していただけに久しぶりに首の角度をあげることにすこし違和感を感じる。拳を改めて握り直しながら現状の把握に勤める。戦う前から体はボロボロで呼吸は普段とは比べ物にならないぐらい乱れている。足場は道場と比べ物にならないほど荒れていて、脆い土でできている。また、今日はいつもより暑いからか、体力の消費が激しく感じられる。
そして目の前には敵がいる。自分より大きく、自分よりも早い敵が。それは両腕両足が俺の二倍の数があり、毛むくじゃらで、目が複数あり、口からよだれらしきものを垂れ流している。
そう、目の前にいるのは、『モンスター』だ。
人間の天敵、人間を襲う化物、人間より強い存在。そんなモンスターは複数ある眼の一つでこちらを(多分)睨んで眼を離すようすはない。本気で走ったとしても、向こうの方が速いのですぐにつかまるだろう。
まとめると、圧倒的にこちらが不利で、逃げられそうにもないということである。泣きたい。
現実逃避ぎみに、今度は隣にいる仲間に意識を向ける。俺より頭一つ小さい、しかし、自身よりも大きい鎌を操る仲間の存在を。
そして。
「ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
目の前のモンスターは、威嚇なのか、大きく腕を構えながら奇声をあげてきた。そしてそれをゴングの替わりのように、俺たちは戦いをはじめた。
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