初日の終わり
第三者視点です
さて、微妙な空気が最初漂い始めたが、料理が出され初めてからそんなことなどなかったように新弟子歓迎会は問題なく進められた。
タオの作る料理はこちらの世界でいう中華料理に近いものでありミヅキもジンパチも臆すこともなく、絶品とも言える料理に舌鼓をうった。
特にジンパチはタオの料理が気に入ったのか何度もおかわりをして、その食いップリが気に入ったのか最初のことなどなかったかのようにタオに気に入られていた。
そして・・・。
-ーーー
店に来てから一時間程たち、それなりに席が埋まってた店内も、気づいたら店内は三組に分かれていた。
「!あっ、これすっごく美味しいよマオちゃん」
「本当!これ、実は私が作ってミタノ!」
「マオちゃん、こんな美味しい料理作れるの!いいなぁ~」
「コッチニ来てもう一年近く経つからね。タオ叔父さんからも簡単なモノナラ作ってみろって言われてるノ」
まずは、女同士だからか、あっという間に仲良くなった佐藤ミヅキとマオの二人。次に、
「しかし、・・・・・・だなぁ。・・・しいと・・・・・・かなんとい・・・」
「こっちもこっちで・・・・・・だぞ。こんなの・・・」
こんなときでも仕事の話をしているのか、真剣な顔で書類を肴に酒を飲んでいるコンラッドとエリザの教官二人。そして、
「いいかお前。冒険者にとって大事なのは腕力とか魔力とかじゃないんだヨ。わかるカ!?」
「・・・・・・はい」
「マズお前ら素人に大事なの何なのかは、分かるカ?」
「・・・・・・いえ」
営業中に酒を飲んだだけじゃなく完璧に酔っぱらったタオとそれに絡まれている佐藤ジンパチの三組だ。他の客はすでに帰ったのか見当たらない。
「オレが思うにだなァ、あの、アレ、そうアレが大事なんだよ」
「・・・・・・”装備”と”準備”、あと”仲間”ですか」
「そうそう、それそれ、それヨ」
いつのまにかタオの話は二週目に突入し、ジンパチが話のフォローをしている。
「マズは装備!よく装備に頼るやつは二流だとよく聞くだロ。オレもそう思う。だがな!オマエラはそもそもズブの素人ダ!一流もクソもない!少なくとも身を守る防具に信頼できるものを選ぶのは間違ってナイ!」
「そうですね」
酔っぱらってるのにいいこと言うな。とジンパチは心のなかで呟く。
「ツギに準備!オマエラがどこを基本の狩り場とするかはシラネーガ場所によって必要なものは変わるのは当然ヨ!毒を持つモンスターがいるトコロニ解毒剤持てカナイノ自殺行為ネ!」
「そうですね」
これも確かにその通りだとジンパチは過去の自分を思い出す。自身も昔、叔父のサバイバルに付き合わされるとき何が起きてもいいように想定よりも多目に、且つ、使うかどうかも分からない物まで持っていくことは多々あった。
「ソシテ仲間!戦うコトおいて相手の数が多いことはヨクアルヨ。ソリャ向こうのフィールド行くから当然ネ。ダタラこちらも数増やせばいい。手数増えれば早く倒せるし目ぇ増えれば隙はなくナル」
「そうですね」
・・・さっきからこの人酔っぱらってるクセに尤もなことを言うな。そう心のなかでジンパチは毒づくが当然タオは気づかない。
「デモ仲間集める時、気を付ける方がイイヨ。たまにロクデモナイやつおるからナ」
「・・・そうですか」
「おう。オレがまだ現役だった頃モナ・・・」
そう言いながらタオは昔話をし始めた。ジンパチはその間にコンラッドやエリザ、そしてマオにも助けを求めたが無視された。
そして一時間後、タオが酔い潰れるまでジンパチは延々と絡まれた。
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ところ変わってミヅキとマオの席。
「・・・て言うかマオちゃん、タオさん仕事中に酔っぱらってるけど、大丈夫?」
「あー・・・、この時間帯にナルとお客さん来ないシ、もう閉店の看板もダシタカラ」
そうマオはどこか申し訳なさそうに答えた。そして・・・。
「・・・ソノ、さっきはゴメンね。叔父さんが変な空気ニシチャッテ」
「へ?・・・ああ、いや、私はいいけど、その、なんかあった?」
「・・・ウン。その、皆さんが入る前に団体で来たお客さんいたんだけど、ソノ・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・アンマリ、ソノ、”よろしくなかった”・・・ていうか」
「・・・あー」
つまり、あまりにも”よろしくない”客の相手をした後に来たのでイライラの矛先が自分達にも向いてしまった、ということをマオは詫びているのだ。
「・・・ちなみにそのお客さんたちは?」
「・・・叔父さんが外に連れ出しタノデ、その後ハ・・・ソノ・・・チョット」
「・・・・・・へぇ」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
ちらりとタオに目を向けるがどこにも怪我らしきものはない。
「・・・ソウイエバ、今日はデザートも練習で作ってたんデシタ。ミヅキサンもどうですか?」
「!えー、マオちゃんデザートも作れるの?どんなの?」
・・・微妙な空気が漂い始めたが、そんな事とは関係の無い話で女子二人は話に花を咲かせ始めた。
そしてその後、その事については触れることはなかった。
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ミヅキもジンパチもほぼ同じタイミングでそれぞれに借りた部屋に戻ってきた。
そして二人はほぼ同時に部屋のベットに横たわり、今日一日を振り返る。
・・・正直まだ現実的な感じがせず、戸惑いの方が大きい。しかし、夢と呼ぶにはあまりにもリアルすぎる。
結局・・・、とまた二人は同じタイミングで、
(・・・分からない以上、ここでなんとかやってくしかない、か)
と、同じ結論で締めた。
夢だったら良し。現実でもやってくしかない。
とりあえず・・・。
(・・・佐藤さんの件、どうしよう)
と、同じ悩みに悩まされながら、二人は眠りについた。




