1話
「ごめ、」
「うるさい。」
「違くて、これは、あ、待って葉山くん」
葉山くんは静かに歩きだした。
いつもは私の短足に歩幅を合わせてくれているのに今日は長い脚は先を行く。当然か、1時間も連絡なしで遅刻したら怒るよね。なんで私っていつもこうなんだろう...
「あ、あのね、葉山くん」
袖を掴んだら、葉山くんの髪の毛がサラッと揺れた
「なに。道に迷ったばーさんでも助けてたの?
それともじーさん?迷子?」
うっやっぱり怒ってる。ちゃんと理由を伝えなきゃ。伝えたところで葉山くんの怒りが治るかは置いておいて、とりあえず伝えなきゃ。
「あ、あのっ」
どこから説明したら良いのか、無い脳みそで必死に考えてみる。あやちゃんに話した所からの方が良いだろか、それともそんな事より理由を先に言うべきなのな。そんな事を考え葉山君を見つめながら瞬きを繰り返す。
「・・・冗談だよ、
行くよ。」
「違うの、
あの、宇宙博の特別チケットあやちゃんの知り合いの人が譲ってくれることになってて、西町で貰う約束してたんだけど、帰りに電車の乗り継ぎ間違えちゃってそれで」
「西町?どこまで行ってるの」
葉山くんが行きたいなってボヤいてた宇宙博のチケット、普通のチケットじゃなくてなんか有名な宇宙飛行士の人のサインが貰える特別チケットらしい。
葉山くんは立ち止まって私を見つめる。
ため息をつくと、大きな手がわたしの手を引いた。
「ゆ、許してくれるの?」
「ななみさ、俺のためにしてくれた事は嬉しいけど、そう言う時は連絡してよ。一緒に行けば乗り継ぎも失敗することなかったし、それに・・・まぁいいや。」
「う、うん。ごめんなさい」
でも葉山くんにサプライズであげたかったんだもん。
喜んで欲しかった。でもいつもうまくいかない。
「あの美形の人」高校入学してから名前はわからないけどそう認識してた。背が高くて目立つから、廊下や朝会でたまーに見かけると「かっこ良いよねっ」って感じで友達と騒いでただけで、高3で同じクラスになった時は「わぁ。本物が近い〜」って軽いミーハーな気持ちだった。
それが、まさか、
「ん?」
「ううん、なんでもない。
そう言えばCDショップ行きたいって言ってなかった?」
「さっき行ったから大丈夫。」
「すいません。わっ」
「ちっ」
知らない人におじさんにぶつかっちゃった。そして舌打ちをされてしまった。
やっぱ休日の街は混むなー。
「な、どしたの?」
葉山くんがぶつかった私の肩を無表情でパンパンっと汚れを取るみたいに払う。
「お、おじさん汚くないよ。」
「そう」
再び手をとられ、ズンズンと進んでいくとすごく可愛いカフェがあった。
「可愛い!
どこで見つけたの?」
「なんかさー
石田が前言ってたんだよね。」
「え、石田くんって意外と少女趣味なんだね!」
「ふっ、」
謎の笑い。そんな葉山くんも綺麗でかっこいい・・・。
受験真っ最中の高3なのにこんな浮ついた気持ちじゃダメなのに家でも毎日ドキドキして、ニヤニヤして
お母さんとお父さんには心配され弟には馬鹿にされる。
たまに、って言うかわりといつも怒らてばっかいるけど、葉山くんに嫌われないように頑張って出来る良い女になろうと思う。