表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

【6】オオカミさんは食べられた

色々とエロ方面R15です。無理矢理な描写もありますので、苦手な方はご注意ください。

 目が覚めるとオオカミさんは鎖に繋がれて、手足には重い鉄製の枷がついていました。

「おはよう、オオカミさん」

 にっこりとアウルが笑います。

 がたがたと揺れていて、どうやらここは馬車の中のようです。


「ねぇオオカミさん。ちゃんとぼくからの贈りものはずっと身につけていてくれたんだね?」

 服の下に隠してあったはずのネックレスが、アウルの手元にありました。

「もしかして、ずっと離れてからもぼくの事、思っていてくれてた?」

 アウルが囁きます。

 図星を言い当てられて、オオカミさんはふいっと横を向きました。

 そんな風に嬉しそうに言われたら、アウルには好きな人がいるのに勘違いしてしまいそうでした。


「そんなわけはないだろう。元々はひとりだったんだ。いつも通りに戻って、せいせいしていた」

「へぇ……そっか」

 またアウルの声が、甘やかなものから冷たいものへと変わります。

「今のオオカミさんには、こっちの方がふさわしいかもね」

 びくりとしたオオカミさんの首に、アウルは首輪をつけました。

 犬につけるような真っ赤な首輪です。


「うん、よく似合ってる。これでオオカミさんはぼくのものだから」

 ちゅっとアウルがオオカミさんの唇に、音を立ててキスをしました。

「んっ……」

 舌が割り込んできて、それが深くなります。

 口内をかき回されれば、オオカミさんの思考ごと奪っていくようでした。


 まるで食べられてしまうと錯覚するような激しいキスから解放され、オオカミさんが息をつけば、目蓋に口付けられます。

「この傷、ぼくを庇ってついたものだよね」

 うっとりとした様子でそういって、アウルは愛おしそうにそこに口付けを何度もふらせました。

 そこから舌がつたうようにして、オオカミさんの獣耳をアウルが食みます。


「ふぁっ」

 変な声が出てしまうのに、手が自由にならないので、口を押さえることもできませんでした。

「ふふっ、オオカミさんて昔から耳弱いよね。あと尻尾の付け根をさすられるのも好きでしょ?」

 そんなところを触らせた覚えはありません。

 なのに、的確にオオカミさんの気持ちいいところに触れながら、アウルは囁きます。


「……やぁ、やめろっ。アウル!」

 どうしてこんなこんな事をするのかと、オオカミさんは混乱しました。

 アウルには好きな人がいるはずなのに。

 息も絶え絶えに抵抗すれば、アウルはくすりと笑います。


「オオカミさんはぼくに捕まったんだ。つまりはぼくの食料だよ。だから、そんな事いう権利はない」

 するりとアウルの手は、オオカミさんの体を撫でていきます。

 こんな意地悪なアウルを、オオカミさんは知りませんでした。

 オオカミさんの知るアウルはいつだって可愛くて、オオカミさんの嫌がることをしませんでした。


 目の前のこいつは誰なんだろう。

 そう思うのに、やっぱり彼もアウルに見えて。

 それどころか、オオカミさんの知るアウルも、こんな風に時々熱のこもった瞳でオオカミさんを見ていたことを思い出しました。

 色んなところを撫でられて、舐めまわされた後。

「オオカミさん可愛いすぎ。家に着くまで味見だけで我慢できるかなぁ?」

 アウルはくすくすと笑いながら、くったりとしたオオカミさんをようやく解放してくれました。

 


「はい、オオカミさん。ご飯だよ?」

 ご飯の時間になれば、アウルは手ずからオオカミさんに食べさせます。

 拒否は許されませんでした。

 けれど毎食出てくるこのスープだけはどうしても飲む気になれなくて、少しでも飲まなくていいように唇を閉じます。

 オオカミさんは知りませんでしたが、そのスープには狼に変身できなくなる薬や、獣人の身体能力を人間と同程度まで下げてしまう薬が入っていました。


「オオカミさんって、勘がいいよね」

 楽しそうにアウルはそう言って、スープを口に含むと、舌でオオカミさんの唇をこじ開け無理やり口に流し込んできます。

「んぅ……ふ」

「駄目だよ……んっ、こぼしたら。全部飲まなきゃ」

 叱るような口調はオオカミさんの知るアウルなのに、容赦はしてくれませんでした。

 そうやってオオカミさんは、アウルに飼われることになってしまったのです。



●●●●●●●●●●


 馬車は何日もかけて、オオカミさんが元住んでいた森に着きました。

 オオカミさんの家は昔のままそこにあって。

 ちゃんと手入れもされていたようでした。

 こんな風に帰ってくるつもりはなかったのに、足を踏み入れれば懐かしいと思ってしまう自分がいました。


「おかえりなさい、オオカミさん!」

 にっこりとアウルがそんなことを言って、先に家に入って、オオカミさんを招き入れてくれます。

 手にはオオカミさんを繋ぐ、鎖を持ったまま。

「……ただいま」

 そう呟けば嬉しそうに、アウルがオオカミさんを抱きしめました。


「よくできました」

 首輪についた鎖を手繰り寄せて、アウルがオオカミさんの腰を自分の体にぐいっと密着させます。

 そのまま上を向かせられて、オオカミさんの口の中にアウルの舌が入ってきました。

 くちゅくちゅと耳を塞ぎたくなるような音がして、息ができなくなります。

 おかしくなりそうなほどにくらくらして、しがみつくようにアウルの服を掴めば、ふっとアウルが笑った気配がしました。


「ぼくが食べることが、オオカミさんのご褒美みたいになってるよね。凄く気持ちよさそうな顔してた」

「っ!」

 意地悪なことを耳元で囁かれ、ただでさえ熱くなっていた血が、更に沸騰したようでした。

 きっと睨みつければ、それさえも嬉しそうにアウルは笑います。


「ほら、オオカミさん。行こう?」

 アウルが中に入っていきます。

 いつも二人が寝ていた絨毯の上に、アウルが腰を下ろしました。

 膝をぽんぽんと叩きます。膝枕をするので、眠れということでしょう。獣姿の時に、アウルがよくやってくれたことでした。


 言うとおりにすると、アウルが優しく髪を撫でてくれます。

 その手は大きくなって、それでも温かさは一緒でした。

 今のアウルはオオカミさんの知らないアウルで怖いのに、やっぱり安らぎを覚えて。

 体の力を抜いて目を閉じれば、アウルの手が首輪をなぞりました。


「……こんなものなくても、オオカミさんが側にいてくれたらいいのに」

 それは小さな声でした。

 叶わないとわかっている願いを諦めきれないかのような呟き。

 寝たふりをしながら、オオカミさんは苦しくなります。

 そんな風に求められてしまうと、オオカミさんも側にいたいのだという気持ちを口にしてしまいそうでした。


 会えなかった日々を埋めるように、オオカミさんはアウルとずっと一緒に過ごしました。

 逃げられないんだから、しかたない。

 オオカミさんは逃げようともしなかったくせに、自分にそう言い訳をします。

 これがアウルにとってよくない事だと思いながら、それでも縛り付けてくれることをどこかで喜んでいたのです。

 アウルのオオカミさんを『食べる』行為はどんどん深くなっていくようでした。


 もはやオオカミさんはアウルのものです。

 ならば、例えアウルに好きな人がいたって、ものならば持っていても問題はないのではないでしょうか。

 そんな考えが浮かぶほどに、オオカミさんはアウルに落ちていました。


 オオカミさんの中にできた穴が、アウルの側にいることで満たされるのです。

 けれど今度は、一度埋まったそれを失うのが恐ろしくて、アウルが側にいなくなることを考えるだけで狂ってしまいそうでした。

 もう、すでに首輪なんてなくたって、オオカミさんはアウルから離れられなくなっていたのです。


 オオカミさんはこれでも幸せでした。

 けれど、オオカミさんを好きに扱っているはずのアウルの顔は晴れません。

 オオカミさんを自分のモノ扱いするたびに、自分自身が傷ついているような顔をするのです。

 そんな顔をしてほしくなくて、オオカミさんはアウルが望むことを何でもしましたが、アウルはどんどんとその瞳に闇を抱いていくようでした。


 ある日起きると、鎖が外れていました。

 アウルが鎖をつなぎ忘れたのかもしれません。

 オオカミさんはそれを、壁にしっかりとかけなおしました。

 何事もなかったかのように待っていたら、やがてアウルが現れました。

 最近では身につけていなかった、黒ずきんを被っています。


「何で……逃げないの?」

 アウルが呟きます。

 どうやら鎖は意図的に外されていたようでした。

 そういえば逃げられたなと言われてオオカミさんは思いました。


「逃げてよオオカミさん。抵抗してよ! なんで受け入れちゃうの! ぼくはオオカミさんにこんな……酷い事をしたいわけじゃないのに!」

 癇癪を起こすように、アウルは叫びました。

 酷い事と言っても、アウルはオオカミさんを丁寧に扱ってくれます。

 首輪や鎖はありますが、ごはんは出ますし、散歩にも連れて行ってくれます。

 体をもっと動かしたいなと思うことはありましたが、それもまぁ代用行為でどうにかなっていました。


「私はアウルのものなんだろう? アウルがそう言ったんじゃないか」

「っ!」

 オオカミさんがそう言えば、アウルは唇を噛み締めます。

「ぼくは……こんな風にオオカミさんを自分のモノにしたかったわけじゃない。ちゃんとオオカミさんにぼくの事好きになってもらいたかったんだ!」

 心からの声を絞り出すように、アウルは叫びました。


「こんなぼくを受け入れてくれたオオカミさんが大好きで。オオカミさんから襲ってくれるように色々しかけたのに、気づいてもらえないし。今度はこっちから仕掛けようって、告白しようと思ってたのにぼくの前から消えちゃうし。捕まえて無理やり自分のものにしたって、空しいだけなんだよ!」

 まくしたててアウルは、肩で息をして。

 激しい感情をぶつけられて、オオカミさんは戸惑いました。


 ――アウルが自分を好き?

 それを知ったオオカミさんの心臓が、喜ぶようにとくとくと音をたてます。

 告白しようと思っていたのも、自分だったと知って、オオカミさんは今までしていた勘違いにようやく気づきました。


「もういいよ、オオカミさん。解放してあげる。好きなように生きてよ」

 アウルはふいと顔を背けると、オオカミさんの鎖を外し、外へと出て行こうとします。

 オオカミさんは駆け出して、その背に抱きつきました。


「なっ!」

 驚くアウルを振り向かせ、オオカミさんは自分から口付けをしました。

「……アウルは、私が好きなのか」

 確認するように尋ねれば、アウルは真っ赤な顔で口をぱくぱくとさせました。それが肯定のサインだと鈍いオオカミさんでも分かりました。

 愛おしくて、嬉しくて。

 アウルを喰らうように、舌をねじ込んで絡ませます。

 口を離してやっと息をしたアウルは、少し涙目でした。


「……オオカミさん?」

 戸惑う子供のような、アウルの声。

「私もアウルが好きだ」

 素直な気持ちを告げれば、アウルは目を見開きました。


「アウルは私以外の誰かが好きなんだと思っていた。きっとそれは人間で、アウルは私よりも人間といたほうが幸せになれるんだと思ったんだ。アウルと離れてから、元のひとりに戻っただけなのに、ぽっかり心に穴が空いたようで。いつも苦しくてしかたなかった」

 ぎゅっと抱きしめれば、アウルの体温がオオカミさんにまで伝わってきます。


「逃げなかったんじゃないんだ。食べられてもいいと思ったからここにいた。それにアウルに好きな人がいても、私がアウルのモノなら関係なく側にいられるだろう?」

「っ、オオカミさんはずるいよ……」

 オオカミさんの言葉に、アウルが泣きそうな声を出します。


 黒いずきんに手を掛ければ、アウルはそれを押さえました。見られるのが嫌だというように。

「アウル、私はどんなお前でも好きだよ。だから、もうこんなもの被らなくていい」

「……っ」

 オオカミさんの言葉に、アウルはずきんをゆっくりと外します。


 赤い髪の上には、ぺたんと折れた赤銀色の狼の耳があって。

「アウル?」

 驚いてオオカミさんがその狼の耳に触れれば、ぴくんと反応しました。

 まさかと思って、アウルのお尻に手を伸ばします。

 そこにはローブで隠れされた、ふさふさした尻尾がありました。


「これはどういう事だ」

「ずっと研究してたんだ。オオカミさんと同じ狼族になれるように」

 オオカミさんの質問に、アウルがバツが悪そうに答えます。

 アウルが夢中になって研究していた薬は、狼族になるためのものだったのです。


「ただあの薬は、狼族になるのを促進させる力しか持たないんだ。狼族になるにはオオカミさんの協力が必要で。オオカミさんも狼族は狼族と一緒がいいとか言うから、無理やり……したんだ」

 呟くアウルの言葉には、懺悔のような響きがありました。


 アウルによると人と狼族は実は近く。

 長い間愛し合い交わっていれば、感染するかのように人が狼族になるのだとアウルは言いました。

 それは伝承や噂話程度のものでしたが、アウルはそれを調べ研究し、獣人になるのを促進させる薬を作り出したようです。


 本当はオオカミさんと引越しをする日、アウルはオオカミさんに薬の事を話して告白し、狼族にしてもらう予定だったのだと告げました。

 けれどオオカミさんがいなくなり。

 ようやく見つけたオオカミさんは、他のオオカミと一緒で。

 しかもアウルを人間だからと拒みました。


 狼族になれば、オオカミさんに愛してもらえるかもしれない。

 半ば自棄になってアウルは、薬を飲んでオオカミさんとたっぷり交わり、とうとう狼族になりました。

 けれど、こんな酷い事をした自分が好かれるわけもなく、オオカミさんの気持ちがないなら空しいだけだと、逃がそうとしたようです。

 オオカミさんを解放して後は、死ぬつもりだったのだとアウルは告げました。


「オオカミさん、こんなぼくの事嫌いになったよね」

 全てを話して、軽蔑されるのを覚悟しているかのように、アウルの声は震えていました。


 しかしオオカミさんは。

 今までアウルがしてきた事の中心に自分があると思えば、されてきたことも怒る気にはなれませんでした。

 むしろ嬉しくて、幸せな気持ちが溢れてきます。

 

 自分のために人間であることを、アウルは捨ててしまったのです。

 ここまで愛されて、どうして嫌うことができるでしょう。

 ぺたんと折れた耳や、しゅんと下がった尻尾。

 全てが愛おしくて、しかたなくて。


「嫌うわけないだろう。アウル、愛してる」

 心から溢れてくるものを、オオカミさんは言葉にしました。

 それだけじゃ足りなくて、もっと伝わるようにアウルに口付けます。

 そうすればアウルもそれに答えて。

 どんどんと口付けは深まっていきます。


「ぼくも……オオカミさんが大好き。愛してる。ずっと好きだった」

 甘い蜜色の瞳に見つめられ、オオカミさんはたまらなく幸せな気持ちになりました。


 こうしてオオカミさんは、拾った黒ずきんの男の子に食べられて。

 今日も森の奥で、幸せにくらしているそうです。

 本来冬童話に投稿予定だった話。アウルが暴走して、童話ってなんだっけ(笑)という気持ちになり恋愛ジャンルで投稿。本当すいません。こんなつもりじゃなかったんです。ギリギリ……セーフですよね?


 次回から黒ずきん視点。腹黒さが分かり辛いかと思って付け足したのですが……予想以上に黒くエロく育ちましたが大丈夫かなコレ。

 それでもよければどうぞ読んでいってください。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ