残念系男子5
「ごめんね。お待たせしました。」
鬼島は一言お詫びを入れて席に戻った。
「そんなっ!全然!全然大丈夫!(今の今まで変な妄想に耽ってたなんて言えない///」
白河嬢は頬を染めながら首を横に振る。
「(ほふぁ~~~!頬染め琴音たん萌えーーーwwww)」
美少女の照れた表情というのはすべての男スィ!にとって良薬であり劇薬でもあるのだ。
「(いかんいかん、某錬金術師の如くもっていかれる所でござった。とにかく、メニューを見たうえで注文しなければ)」
「しっ白河さん!メニューをどうぞ。」
「あ、ありがとう鬼島君(///」
多少テンパっていたものの、白河嬢にメニューを手渡した。
「(さてさて、拙者も何か注文を・・・)」
その時、鬼島青年は重大な事実に気がついたのだ。
「(このテーブル・・・メニュー表が1冊しかない・・・だと・・・)」
注文、雑談、食事、会計なる4つの重要工程が控えている中、
いきなりしょっぱなの注文段階で躓いてしまったのだ。
「(ここは琴音たんのメニューが決まるまで待つ、)」
そんな矢先、鬼島のスマホがブーッブーッと振動した。
アドバイスをくれた『流離の剣士さん』『出来る妹ちゃんさん』の書き込みがあった場合は、振動して知らせてもらえるよう設定していたのだった。
白河嬢がメニュー表とにらめっこしており、若干心細くなっていた鬼島は3ちゃんねるをひらいた。
11 :流離の剣士さん:20XX/5/XX(日) 12:57 ID:kinosita
メニューが1つしかない場合は、2人で覗き込みながら見るべし。
おいしいチャンスは見逃さずつかめよ。
「(なんと!そのような秘儀があったとは・・・。たしかに、名作恋愛シュミレーション『Three Heart2』のこよみちゃんルートで、ファミレスに行った際、仲良くメニューを選びお互いの視線が交差し良い雰囲気になっていたような・・・)」
ある意味恋愛経験豊富(?)である鬼島は本作戦を敢行すべく、軽く深呼吸を行い覚悟を決めた。
「俺も何か注文しようかな~。白河さんメニューいっ、」
少々ぎこちなく、わざとらしくメニューを見ようと行動を起こした鬼島だが、
「私、明太子クリームパスタにしよっと。あぁ!ごめんなさい鬼島君。メニュー1冊しかなかったんだよね。私がトロトロしてるばっかりに・・・。はいこれ!」
「しょにみよ・・・あ、ありがとう。」
華麗にタイミングを逃し、寂しくメニューを受け取った彼。
『やっちまったZE☆』などとうまく気分を切り替える事はできず、
しょんぼりと肩を落としつつ鉄火丼を注文するのであった。
お互いドリンクバーで飲み物を確保し席に着いた後、会話は途切れる事なく続いた。
同じクラスである利点を生かした、共通の話題作戦が功をそうしたのである。
3ちゃんねらーの助言があった事と、鬼島&白鳥嬢の両者共にガチガチの緊張状態であったため、
お互い会話が途切れた場合の、どうすれば良いか分からない沈黙だけは避けようとした結果でもある。
お互いの注文した品が届き、いざ食事がスタートした。
「(えーっと、拙者は別段変な箸使いでもないし、口をあけて物を噛むとかの初歩的は汚い食べ方さえしなければ大丈夫で御座ろう。)」
早速鉄火丼を口に運ぶ。
「(うーむ。日本人として生まれた事に感謝!米とマグロは日本の魂で御座るなw)」
柔らかな笑みを浮かべつつ、おいしい食事に舌鼓を打つ鬼島であった。
そんな中、白河嬢は鬼島という男がどれだけのハイスペック超絶美形男子だったのかを改めて思い知らされていた。
まず、食事のマナーが完璧なのである。
箸の持ち方から始まり、丼やお椀の持ち方、味噌汁の入ったお椀の蓋の取り方、
食事の食べ方、食べる順番、汁物の飲み方などなど。
もともと何気ない動作の一つ一つが優雅である鬼島が、マナーを意識途端、優雅さを一瞬で超越してしまった。
まるで、圧倒される程の美しい舞を目の前で披露されているような感覚に陥った。
そしてもう1点は白河嬢を食事どころではない状態にさせてしまう。
「(人が物を食べてる所をジロジロ見るのは失礼なのに・・・。でもでもっ!鬼島君の食事シーンって凄くあの・・その・・///)」
鬼島本人はまったく気づかない&無自覚なのであろう。
食べ物を食べている時に出る無意識の『これ美味しいw』という笑顔が、
女子の母性本能と保護欲を掻き立てまくる程可愛いのだ。
普段の超絶美形イケメンオーラとは真逆のため、凄まじいまでのギャップ力が発生する。
かといって、可愛いだけで終わる完璧美男子鬼島ではなかった。
箸を持つ手の指がすらっと長く、指の付け根の関節のでっぱり具合や手の甲の少し浮きだった血管がある種のフェチジムとセクシーさを感じさせる。
食べ物を運ぶ時に開く口元が蠱惑的であり、うっすら付いた醤油ダレが唇に怪しい光沢を灯す。
その醤油ダレを食事のマナーに反しないギリギリのラインで、舌を出し舐めとる動きが艶かしく官能的。
最後に食事が喉を通る時に上下に動く喉仏がエロスを感じさせるのだ。
結局は、終始食事の味など分からずじまいであった白河嬢なのであった。
食事を終え、会計を済ませようとレジへ向かう。
「ここはせっ、俺が出すよ。(このようは場面では男が払う。それくらい拙者もしっているで御座るよwうはっwさすがw」
そう言って財布を取り出し、お金を出そうとしたのだが、
「そっ、そんなの悪いよ~。私の分はちゃんと払うよ。」
白河嬢はもともと自分の分を払おうと財布を取り出していた。
「大丈夫!ここは俺が出すから。(キリッ」
良い所を見せようとドヤ顔をしつつ、さっさと2人分会計を済ませてしまった鬼島。
「ぁうぁう・・・」
会計が済み、「ありがとうございましたー」とレジ店員から言われ、すごすごと財布を引っ込める白河嬢なのであった。
「(最後は男らしくカッコよく会計を済ませたで御座るwこれはフラグたつレヴェルw)」
1人満足している鬼島のスマホがここで振動した。
「ふむ。」
無事食事と会計を済ませた事を報告しようかなーと思い、3ちゃんねるに接続した所で驚くべきレスを目にした。
15 :名無しさん:20XX/5/XX(日) 13:42 ID:utr1ytur
今頃巨乳ちゃんと飯くってんのかな。羨ましいヤツ。
16 :流離の剣士さん:20XX/5/XX(日) 13:48 ID:kinosita
俺の経験則から言うと今回のパターンの場合は、
食事代に関して自分の分をお互い払うか割り勘にしとけ。
「俺が出すよ」は男としての常套句として言うべきだと思うが、
無理やりおごっても印象は悪くなるぞ。
相手が自分の分は自分で出すと言ってきたら、それに素直に従った方がベスト。
何かしら理由付けがあるおごりはOK。たとえば相手が誕生日だった場合とか。
17 :出来る妹ちゃんさん:20XX/5/XX(日) 13:48 ID:kijimaayaka
>>16
分かる。
付き合ってるわけでも、凄く仲良いわけでもない人に、
特に理由もなくおごられても戸惑う。
って言うか自分の分はちゃんと払うのが人として礼儀だと思うし。
男が払って当然だろって思ってる女の人の方が実は少数派だったりするんだよ。
18 :名無しさん:20XX/5/XX(日) 13:49 ID:eruw8ss2
>>17みたいな彼女欲しいwww
19 :名無しさん:20XX/5/XX(日) 13:49 ID:daoie785
男遊びしまくってる糞ビッチが悪目立ちしてるだけ
>>17みたいな女の子が実際多いのは事実
20 :名無しさん:20XX/5/XX(日) 13:49 ID:oizend885
>>17が女だと思い、良いカッコする>>18と>>19 ( ゜,_ ゝ゜)ップ
「(なん・・・だと・・・。)」
数秒放心したのち意識を取り戻す。
「(Noーーーーーーーーーーーーーーーー!!!やってしまったorzやってしまったで御座る。)」
マリアナ海峡よりも深く後悔する高校2年生鬼島零君の図である。
まぁ、実際おごってもらえてラッキーと思うパターンもあるので、
3ちゃんねらーの言い分がすべて正しい訳ではないのだが、
白河嬢はしっかりしている子なので、今回に限っては3ちゃんねらーの言う通だったのだ。
今回の数度の失敗を繰り返さないために、『piaキャ○ットへようこそ(全年齢版)』でファミレスについて再度勉強する事を心に誓った鬼島なのである。
「(・・・結局鬼島君にご馳走になっちゃった。申し訳ないなぁ・・・。でも、強引な所とか「俺が出すよ」って言ってくれた表情が超カッコよかった///)」
ただし超絶イケメンはどっちのパターンでも結果オーライになってしまうのだっ!マジでイケメン滅びろ!(←作者の叫び
「ところで、この後どうしよっか。」
白河嬢は鬼島に尋ねた。
深く落ち込んでいた鬼島だが、その一言で我に帰りハッとなる。
「(ファミレスに入った時までは木之下氏の完璧なまでのリードがあった訳だが、あれっ?次どーすればいいので御座るか?)」
家族以外の女子と、初めての2人っきりの食事というヲタにとってベリーハードなミッションを完遂させた鬼島。
しかし、この先の行動はまったくのノープランであった。
鬼島はこの先どうするのか?
続く!