残念系男子3
身長180cm強のスラッとしたモデル体型。
イケメン俳優が裸足で逃げ出すレベルの超越した美形。
セクシーな口元、怪しげな魅力をかもし出す喉仏。
言葉を紡げば声音は清らかな清流を思い出させる。
全学年女子生徒のハートを鷲掴みし、恋とは何ぞや?と思っていた女性までも虜に
した、すべてがパーフェクトの超絶イケメン男子生徒「鬼島 零」。
そんな彼が今、精神的にギリギリの局面に立たされていた。
大丈夫だ。拙者ならやれる。この3ヶ月間牙を研いできたではないか。
漫画やラノベの新刊。新作ゲームにフィギュア。欲しかった。超欲しかった。
涙ながらに限定版を諦め、日々深夜アニメでハァハァwするだけの毎日・・・。
しかし!今日、この時、この瞬間にそのすべてをぶつける。
いざ行かん!敵は本能寺にあり!
「ぬおぉぉぉ・・・、またカスレア・・・。嘘だろ・・嘘だっと言ってよバー○ィ。
イベント期間中はガチャのSR+発生率3.2%だよね?なんで1枚も引かないの?
バカなの?死ぬの?」
「スマホ片手に何ぶつぶつ言ってんだよ、お前。」
「・・・木之下氏。戦場に散った若き一兵の悲しい話・・・、聞いて下され。」
この男は「木之下修一郎」。鬼島の幼馴染である。
付け加えるならば、この男も超絶美形男子生徒なのだ。
「・・・つまり、ソシャゲのガチャなるモノをしたが目当てのカードが出なかった
と、そーゆ事な訳ね。」
「チョコぽてと先生書き下ろしイラストのスク水verマジカルこのみんSR+・・・
ぅぅ・・・涙が出てきた。」
「まぁまぁ、ソシャゲなんてそんなもんなんだろ?俺はやった事ないからわからん
けど。」
「・・・60kもつぎ込んだのに。」
「???。60k?。ゲームのお金かなんかか?」
「リアルマネー6万円でござる。」
「なっ・・・」
「上位ランカーは20~30万は軽く使うと言う噂でござるよ。」
「・・・。鬼島よ、俺ちょっとリアルに引いたわ。」
「60k・・・ちょっと気分悪くなってきた・・・オェ・・・。」
ショックが大きく、突っ伏そうとた拍子に机がゆれ、シャーペンや消しゴムを
床に落としてしまう。
「おい、鬼島。ちょっとだいじょ・・」
高校生にとって莫大な大金を一瞬にスッてしまい、リアルに顔が真っ青になった
鬼島を木之下が支えようとした時、横から声が聞こえてきた。
「き・・鬼島ひゅん!ダイジョうぶ・・・ですか!」
緊張のあまりカミカミになってしまったが、鬼島&木之下の超絶イケメンオーラ
を掻い潜り、話かけるという偉業を初めて達成した女子生徒「白河琴音」である。
「はっ・・はのぉ!シャーペンとけっ消しゴム落としたみたいだよ!はい!」
琴音嬢は俊敏な動きでシャーペンを消しゴムを拾い上げると、顔どころか指先の先端
まで噴火直後の火山口の如く真っ紅に染め上げ、鬼島に差し出した。
鬼島はまだ気分が悪いのかフラフラしながらも、白河の方を向き、「ありがとう。」
と一言述べた後、シャーペンと消しゴムを受け取る。
その際に2人の指先が若干触れ合った。その瞬間である。
プシュポーーーーーーーーーーー!!!と白河嬢の頭上から機関車トー○スも
ビックリな程の蒸気があがり、彼女は「ほにゃぁぁああ!!」と叫びながら
教室を飛び出して行ったのだった。
「あーあ・・・白河さん、完全にやられたなこりゃ。」
「木之下氏!(キリッ」
先ほどまで青い顔をしていた鬼島はもういなかった。
「ん?なんだよ、無駄に良い声だすな、そしてドヤ顔をやめろ。」
「木之下氏!今、大変な事が起こったで御座る。」
「たしかにな。白河さんどこまで走って・・・」
木之下がしゃべり始めようとした時である。
「クラスでも1~2を争う美少女、白河琴音ちゃんの指に触ってしまった!」
「走っていったんだ・・・へっ?」
ん?こいつ何いってんだ?そんな顔で鬼島を見つめる。
「ほわぁああ!美・・・美少女にふれふれふれ・・・触れてしまった。これは指先を
ペロペロすべきか、それとも洗わずに温もりを思い出せるようにすべきか。」
「・・・」
「フヒヒwこれは今日のオナネタに困らない・・・ゲフンゲフン、違うで御座るよ
木之下氏、漏れは紳士であるからして決してそんな下衆い行為など・・・」
「・・・」
「しかし、拙者の指が当たっただけでキモがって逃げるなど。所詮キモメンに
人権など存在しないので御座る。人生ハードモード。お礼を言っても女子からは
このような非道の仕打ちを受けるので御座る。おのれぇ・・、全世界のイケメンに
死を!リア充滅びろ!ファッ○!」
「はぁ・・・。」
木之下は小、中学校時代からの幼馴染だ。
そして彼は知っている。
鬼島零なるこの男は、自分が超絶イケメン美男子であり、クラスNo.1美少女どころか全学年の女子すべてから好意を寄せられている事にまったく気づいていないのだ。
完璧にして超絶な美を誇る男子生徒。
彼の容姿、漂うオーラは一瞬にしてすべての女性の心を鷲づかみにした。
しかし彼女達は知らないのだ。
彼が、超ド級な程残念系男子だという事に。
そして彼も知らないのだ。
自分が超絶イケメン男子であり、超モテ男だという事に。