残念系男子2
新しく芽吹いた葉々の間から差し込む暖かな木漏れ日を受けつつ、その男は
学校へ向かっていた。
彼の名前は鬼島零。青心第二高校へこの春から編入した男子高校生である。
モデルのような体型、神が贔屓して生み出したのではないかと思う程の美形、
纏うオーラは貴族かはたまた王族か。
陽光に照らされた日本人特有の黒髪は美しく輝き、時折艶かしく聞こえる呼吸音が
怪しい魅力を掻き立てる。
すれ違う女性達は振り返る余裕すらなく、心を奪われる。
「キャッw鬼島君だ。」
「カッコいい~(///」
「何の音楽聴いてるんだろ~。」
鬼島が通う学校の女子生徒達は、遠くから眺める程度の心の余裕が出来つつあった。
「おーい、鬼島ぁ。」
「あっ、木之下君だw」
「木之下君もカッコいいよね~。」
「あの2人が並ぶとホンット絵になるわ。」
鬼島と同じく女子生徒から黄色い声が上がるこの男は「木之下 修一郎。」
スポーツ万能、成績優秀、美形男子であり、人望が厚い男。
鬼島の幼馴染であり、転校して間もない鬼島唯一の友人である。
「鬼島、おはよーす。」
「・・・」
「てい!」
木之下は鬼島のイヤホンを強引に引っこ抜く。
「ぬはっ!これは木之下氏、拙者ついつい音楽に夢中だったでござるよw」
「そんな大ボリュームで何聞いてたんだ?」
「今週発売のねこニャン24(トゥエンティーフォー)のセカンドシングル、
『女の子の大事なひみチュ☆貴方だけに見てほしいの』に決まっておろうがっ(キリッ」
「・・・はぁ~・・・決まってねーよ。つか、いちいちドヤ顔すんな。」
「フヒヒwゆいこニャンの萌えボイスは堪らぬ!ハァハァwww」
「ブレない奴だなぁ・・・ほんっと。」
2人がそんな会話をしている中、同じく周りを歩いている女子学生達はというと、
「鬼島君と木之下君って仲良いよね。」
「あっ、木之下君が強引にイヤホンはずしてる。」
「鬼島君ビックリしてる。可愛いwww」
「木之下君も最初の返事で気づいて貰えなかった時、ちょっと拗ねた顔してた。」
「うそーw超見たかった。」
超絶美形男子、鬼島零。
彼は転校と同時に学校中の女性のハートを打ち抜いた。
しかしながら、打ち抜かれた彼女達は知らないのだ。
彼が超絶に残念系男子だという事に。