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銀色ペルセウス  作者: 大和空人
第二章 金色アルテミス
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第十三話 心の底から叫ぶ言葉

 泣きじゃくるメリーを背後に隠し、ベルイットとソフィが両隣に立ち並ぶ。彼女達と共に和真は化け物の巨体を見上げた。バランスの取れない地面から生えたその巨大な身体の頂点に、半身を飲み込まれる形のブリジットの姿がある。

 素直になれず、助けも求めず。死にたくない癖に、死にたがってるふりをして。


「ひっぐ、えぐ……っ、ご、ごしゅじん、さまを……たすけてくださいっ!」


 背後から聞こえてくる泣き声に、和真は頭をかき、振り返りもせずに右腕を背後に伸ばした。伸ばした掌は、嗚咽を上げてボロボロと懇願を続けていたメリーの小さな頭を撫でる。突然のことにメリーは鼻を愚図り、和真の背を見上げた。


「みどう、さん?」


 弱弱しい声。

 自分達の前に立ち、自分達を倒すと向ってきた彼女達の弱さは今はこんなにも近くにある。覚えもない怒りをぶつけられ、蹴り飛ばされ、無茶苦茶を言われ。怒りはある。ぶつけたい言葉もある。

 だが、今はそんなもの全部放り投げてしまう。

 御堂和真という人間は、正義の味方の衣を失った彼女達を――やっぱり助けずにはいられない。


「言っただろ。俺達は世界中の誰よりもその言葉には弱い。とにかく弱い。だから心配すんな。んで、泣かなくていい。俺達が――助ける」

「……っ!」


 くしゃりと、メリーの顔が崩れる。彼女の嗚咽を背中で受け止めた和真は、隣に並び立っているベルイットに指示を飛ばした。


「ベル、メリーのことを頼む。それと、この場の避難の状況は?」

「うむ。ここに来るまでの間に他の怪人達に指示を出しておるし、別のアンチヒーローの関係者が避難誘導を進めておるぞ。じゃが、少々時間が必要じゃな」

「わかった。なら、そっちの時間は稼ぐ。んで、俺達が助ける相手はあそこにいる三人(、、、、、、、、)だけだな」


 そう言って和真は、目の前に聳えたつ巨大な化け物を見上げる。和真の言葉に眉をしかめたソフィは、小さな溜息をついて一歩歩みを進めた。


「……マスター、私が無茶をするのは駄目って言ったの覚えてる?」

「あぁ、覚えてる」

「だったら――」

「俺とお前がいるんだ。無茶はもう、無理じゃない。だろ?」

「……ロリコン」


 そっぽを向くソフィが唇を尖らせる。彼女の様子に軽く苦笑いを返し、和真はベルイットに目配せを投げた。頷いたベルイットは、自分達を守るようにして立っていた怪人と共に、メリーを連れてその場を退く。


「さて、と」

「マスター、分かってるとは思うけど、やっぱりまだ生体信号にブレが見える。変身は……」

「できない、だろ? 分かってる」


 ソフィの言葉を受け、和真は拳を握りしめる。自分の中から溢れ出した強い突然変異種としての力に、和真は瞳を閉じて自分自身を落ち着けた。

 握る拳は力強く、身体を支える足は強靭。だが、やはりそれでも自分の身体は、化け物になることへの僅かな恐怖に揺れていた。どれだけ助けようと思っても、まだ心はどこかでこの力を怖がっているのだろう。

 そして、このほんの僅かな震えこそが、自分がまだソフィと変身に失敗してしまう理由に違いない。


「マスター、少しだけ時間を稼いで。私のほうで、自分の記録の中からマスターとのコンタクトのリズムを調整する」

「できるのか? お前の記録は、お前のトラウマだろ?」

「マスターが戦うなら、私も戦うのが当然。私は貴方の変身ベルトだから。少しの間、時間を稼いでほしい。……必ず、やって見せる」

「わかった。任せ――」


 ソフィの腕を掴み、離れた距離にいたベルイットのもとに投げ飛ばす。突然のことにソフィが悲鳴を上げるが、そんなものを構ってもいられず、和真は崩れた体制で両腕をガードに回す。

 同時に、巨大な拳が和真の身体を捉えた。質量差に和真の身体は容易に地面から離れ、全身に走る衝撃に和真は歯を食いしばる。


「捉えたぞ!」


 藤堂の歓喜の声とともに、捕らわれたままのブリジットの悲痛な叫びが耳に届く。


「御堂さん!?」

「いき、てるよ……ッ!」


 身体が弾き飛ばされるより早く、自分を襲ってきた巨大な拳を両腕で辛うじて掴み取る。弾かれそうになった半身が宙でバランスを崩すが、掴み取った腕の力で無理矢理巨大な拳に張り付く。そのまますぐに身を翻した和真は、拳の上に膝をついて着地し、藤堂に視線を向けた。


「なっ、生身でこんなものを受けて生きていられる……!? 君も、突然変異種か!」

「ご名答! それよりあんた、もうこんなこと止めろ! 」

「うるさい! 私が守らねば、誰が息子を守ってくれる!? 忌み嫌う力だろうと、息子を守るためなら私は化け物にでもなってやるッ!」


 迷いのない藤堂の言葉に、和真は藤堂の隣で立っている少年を見る。小さな子だ。だが、その目にわずかな曇りを見つける。先ほどまでは、ブリジットや自分達を忌み嫌う敵のように見ていた少年の眼が、僅かに揺れているのだ。

 しかし、それ以上を考える暇などない。


「マスター、飛んで!」


 遠くから聞こえるソフィの声に、和真は慌ててその場を跳躍する。間一髪で自分を捕えようとしていたもう一つの巨大な掌から逃げ延び、和真は近くの地面に着地した。

 荒れる息を整えるべく胸を掴み、足りない酸素を必死になって身体に取り込む。だが、その時間すらも藤堂が作り出す化け物は許さない。


「うおっ!?」


 足場になっていた瓦礫が宙に浮きあがり、バランスを崩す。


「マスター、また大きくなってる……!」


 ソフィの声に、和真は周囲を見渡した。あの巨体が暴れるだけで周囲は簡単に崩壊し、崩壊した瓦礫はそのままあの巨体に飲み込まれていく。暴れれば暴れるだけ、藤堂の作り出したあの化け物が巨大になっていくのだ。


「……っ」


 このままでは、ブリジットがさらに遠くに行ってしまう。そうなれば、心の折れてしまった彼女はさらに、自分に助けを求める様な素直さなど、絶対に見せなくなる。

 そう思い、和真は化け物の頭の上で取り込まれたブリジットを見上げる。視線の先にいた彼女は、もはや体裁さえ気にもせずに和真に向って叫び続けた。


「もうお逃げなさい! 私なんて助けなくていい、助けなくていいんですの!」


 泣き叫ぶようにして嫌々をするブリジットの前で、和真は再び迫る拳から這い蹲って逃げ出す。だが、先ほどブリジットを助けた時に傷ついた右脹脛の痛みで反応が遅れ、巨大な拳が和真の半身に叩きこまれた。


「ぐっ!?」

「マスター!?」

「和真!」


 ソフィやベルイットの悲痛な叫びの前で、和真の身体が容赦なく地面を跳ねる。蹴り飛ばされた道端の石ころのように地面に落ちた和真は、定まらぬ視線を必死になって上げ、化け物を睨みつけた。


「もう、もうわかったでしょう!? 無理、無理なんですの! 貴方に人を助ける事なんてできませんわ! わたしを助ける事なんてできないんだから、だからもう……逃げて!」


 ブリジットの言葉を聞いて、なんだよ、と。和真は霞む視線で笑う。

 彼女はまるで、自分のことを心配して助けるなと言っているみたいじゃないか、と。


「まだ動けるか!」


 藤堂の指示で、化け物の巨体が雄たけびを上げた。辺り一帯を揺らすような爆音の雄叫びに和真は耳を覆い、苦痛に顔を歪める。そうして無防備になった和真の身体を、巨大な拳が完全に捉えた。

 呻き声もあげられない。ハンマーなんて生易しいものではなく、まるでトラックで殴りつけられるような衝撃に和真の身体は容易に吹き飛ぶ。宙で無造作に揺れる身体はそのままコンクリートに叩き付けられ、和真は為す術もなく地面に崩れ落ちた。


「御堂さん!?」


 ブリジットの悲鳴が響き渡る。


「さぁこれで終わりだ。これでもう、息子を脅かすものはなくなっ……」



 ――ゆっくりと。


 ブリジットや藤堂、その息子の目の前で、無様に地面に倒れていた和真の身体が起き上がった。


「あれだけの攻撃を受けて……まだ、立ち上がる!?」


 理解を超える驚きに、藤堂の動きが止まる。そしてそれは、和真を見つめるブリジットも同じだった。

 彼女はボロボロになりながらも立ち上がる和真を見て、頭を振って声を絞り出す。


「なんで、なんでそんなになってまで! 見捨てればいいのに! 見ないふりすればいいのに! どうして貴方はそこまで……!」


 化け物の巨大な掌が、和真の身体を掴み上げる。この身を握りつぶさんとするその力強さに、和真は口端から流れる血を拭うことも出来ない。


「逃げて、お願いだから逃げてくださいな!」


 ブリジットの言葉を、朦朧とする意識で聞いていた和真は自嘲した様に笑った。


「それが……できないから、トラウマなんだよ」


 そう答えると、ブリジットがキッと視線をきつくし、声を張り上げる。


「だったら、だったら! だったら、言ってあげますわ! 私は助けてほしくない! 助けてほしくなんてない! だから、もう……!」


 彼女の慟哭を聞き、和真は彼女が捕らわれる前に放った言葉を思い出す。



 自分はもう、大切な物なんて持ちたくないと。



(嘘つけ、バカ)


 ぎりっと。

 歯ぎしりが聞こえるほどに和真は湧き上がる衝動に駆られる。

 戦いたくもなくて、死にたくもなくて、大切な物を持ちたくもなくて。そんな風に言ってるくせに、どうして彼女は自分の身を心配する?

 どうして、そうやって張りつめたまま、一人で逃げ回ってるのか。ただ一言、助けてと言ってくれるだけで、自分達はどんな障害すらも吹き飛ばして見せるのに。

 助けてと、言ってくれるだけで。


(そうか、ようやく分かった。どうすればあいつを本当に助けられるのか)

 

 ドクンと。心臓が一度だけ高鳴る。先ほどまでは警鐘を打ち鳴らすように激しく動いていた心臓は、ゆっくりとその鼓動を弱めていき、握る拳は唯の人間の物に。



(自分で言えないなら――言わせてやる)


 そうして足掻くことを止めた最弱の生身は、化け物の握力の前にはまるで抗うことも出来ない。


「御堂さん!?」


 驚きに叫ぶブリジットの目の前で、奮っていた突然変異種の力を和真は自分の意思で押し込めた。その身体はもはや頑丈さもしなやかさも生命力もない、唯の人のものへと戻ってしまう。


「な、何をバカなことをやっているんですの!? わたしと戦った時とは違うんですのよ! こんな化け物相手に生身になるなんて、貴方は一体何を考えて――っ!」

「うる、さいッ!」


 叫ぶブリジットの声を、和真はそれ以上の怒鳴り声でかき消した。

 先ほどまでに喰らったダメージは、全身から次々と根こそぎ力を奪う。自分の身体を握りしめるその暴力的な力の前には、声を張り上げなければ、意識さえ保っていられる自信はない。

 だが、それでもなお自分にはやらなければならない事があった。


「ごちゃごちゃごちゃごちゃ……! あぁもう、いい加減頭に来たんだッ!」

「っ!?」

「助けてほしくない!? 大切な物なんて欲しくない!? 生きていたくない!? あぁもう、そう言う言葉を聞くのはうんざりだ!」

「わ、私は唯……!」


 ブリジットの顔が困惑に歪む。彼女自慢の金色の髪の毛は瓦礫の粉塵でその輝きも失い、強い瞳は折れた心で涙を溢れさせて。

 そんな彼女の弱さに、和真もまた自分の弱さで真正面から向き合う。


「大切な物がないから戦えない!? 大切な物を持ちたくないから死にたい!? 大切な物がないから、助けてほしくない!? ホントにお前、大切な物全部なくしちまったのかよ!」

「そ、そんなの当たり前で……!」


 だが、ブリジットはそれ以上を口にしない。否、できなかった。

 だからこそ、満身創痍の身体だろうが唯の人間の身体だろうが。和真の胸の内はさらに闘志を燃え上がらせる。


「ぐっ……!」

「みどうさん……!」


 全身を締め付ける力の前に、思わず呻き声を上げる。体中の骨という骨が軋む音をたて、もうあと何分もしないうちにこの弱い身は砕け、息絶えるだろう。

 だからこそ、自分はこうしてとんでもない無茶で彼女に助けを(、、、、、、)求めること(、、、、、)ができる。


「ブリ、ジットォ! 俺に、死んでほしくなけりゃ……助けを、求めろぉッ!」

「なっ――――!?」


 彼女の顔が、吃驚に歪む。その顔を見て、和真は苦痛にゆがむ顔を痛ましくも歪んだ笑みに変えた。


「みりゃ、分かんだろうが! もう、逃げるなんて、できないだろ! 逃げようと、思ったらぁ! トラウマを口にする以外に、方法がないんだよ!」

「ふ、ふざけないで! 自分から突然変異種の力をきった癖に、なんで、私が……!」


 顔を歪めて否定するブリジットの目の前で、巨大な掌の締め付けがさらに強くなる。


「ぐ、ああああ!?」

「御堂さん!?」


 不安げに自分の名を呼ぶブリジットを見て、和真はその瞳に絶対に折れぬ意思を灯す。

 無茶だろうが、無謀だろうが、身勝手だろうが。そんなもの、知ったことか。

 自分は、助けずにはいられない人間なのだから。


「ブリジット! お前に大切な物が一つもないってんなら! そのせいで、生きていられないってんなら! そのせいで、その掌に大切な物を持てないってんなら!」


 吐き気も苦しみも痛みも、全てを微塵も見せぬ鋼の意思で彼女の弱気な瞳を和真は射抜く。

 その瞳に絶対の意思をもって。

 その声に絶対の宣言を誓って。


「俺が、自分からその掌に乗ってやる! 居座ってやるッ!」

「――っ!」


 ブリジットの瞳が大きく揺れた。戸惑いと困惑に揺れるその瞳は、だが決して和真からは離れない。和真もまた、彼女の視線をまっすぐと受け止め、巨大な掌の中で身動きできずにいた拳を握る。


「そんな、の……ぉ!」


 嗚咽交じりにブリジットの声に、和真は天を見上げた。

 輝く銀色の流星(ペルセウス)はもう――すぐそこにいる。


 だからもう、迷う必要も時間を稼ぐ必要もない。ただ、全力で叫ぶだけだ。


「俺が、俺達が、お前の大切な物になってやる! だから、お前の言葉で俺を助けてくれ!」


 和真の言葉に、ブリジットが唇を噛んで顔を伏せる。その口元からは耳を澄まさねば聞こえぬほどの、強気の言葉が漏れた。


「ほん……っとうに、貴方のやり方は……!」


 そうして、伏せていた彼女の顔が上がる。きらりと光る小さな粒が、彼女の頬を伝って宙に消えていく。それを見た和真はニヤリと頬を吊り上げ、自らを覆う姿を変えていく化け物の掌の中から全力で右腕を引き抜いた。

 勢いのままに右腕を天から迫る最強のパートナーへと伸ばし、和真はブリジットに最後の言葉を投げた。


「俺達が、お前の生きる理由になる! 俺達が、お前の戦う理由になるッ! だから、叫べ、ブリジットぉお!」


 和真の放ったそんな飾りのない言葉を耳にして。

 汚れていた金色は決意に輝きを取り戻し、曇っていた瞳は迷わぬ信念を取り戻し。

 弱さで滲んだその声は――初めて言葉を交わした時と同じ力強さを取り戻して。

 ブリジット・エインズワースは心の底から、助けを求める声を上げた。



「たす、けて……っ、御堂さん!」



 待ち望んだ彼女のその言葉に、痛みが劇的な生命力へと変化する。

 生まれたこの煮え滾る想いと溢れ出した生命力を、自分達の弱さであるこの言葉に乗せ、戦場に響かせた。



「「助けるッ!」」



 銀色と重なる叫びと重なる掌。見上げた視線と見下ろす視線が交わった。

 瞬間、和真を捕えていた巨大な腕がはじけ飛ぶ。周囲に聞こえるほどの力強い鼓動が、和真の全身へ力を行き渡らせ、見開く瞳は深紅に染まり伸びた黒髪は鈍い銀色の光を放つ。


 突然変異。


 化け物へと姿を変えようとする和真を、最強のパートナーが正義の味方へと導く。


「マスター、ようやく、いける!」

「あぁ、ソフィ!」


 落ちてきた銀色の少女は、こくんと頷く。その頷きに不敵な笑みを返し、繋がった掌を乱暴に引き寄せ、和真は天に向かって高らかに宣誓した。



「シグナル――コンタクトォッ!」



 瞬間、ソフィの身体が銀色の粒子となって宙に解けた。巻き起こる銀色の嵐は、辺りを埋め尽くす瓦礫の山を押しのけ、その場にいた全員の視線を釘づけにする。

 唐突なソレに化け物の巨大な掌が伸びるが、溢れんばかりの粒子がその掌を遮り、嵐の中央に近づく事すら許さない。

 そして、その中央で瞳を閉じた和真は身を包んでいく白銀のスーツと共に意識を集中させる。

 以前と変わらぬ、脳裏を突き抜けていく鮮烈な光景。目の前に映る絶体絶命。それらを全て希望で包み込む最強の正義の味方のイメージを。口にした言葉を違わず現実にする無敵の正義の味方のイメージを。


「バカな……! 突然変異種が、正義の味方に、なる、だと!?」


 慄く藤堂の眼前で、銀色の嵐が唐突に弾けとんだ。藤堂は思わずしゃがみ込んで傍に居た息子を庇う。だが、顔を上げた次の瞬間には、嵐の中央から流星が飛び出し、化け物の頭部を貫いた。


「なっ……!」


 弾けとんだ化け物の頭部の上で、威風堂々と少女を抱えて立つ青年を、藤堂秀樹は唖然と見上げる。


 そこには純白のスーツを翻す青年がいた。

 太ももまで伸びる黒いブーツは化け物の頭を踏みつけ、貴公子を連想させる煌びやかな装飾は風に揺れる。羽織った白い外套は、天高く上がる太陽を反射し、ピンとたった襟元と後ろ髪の跳ね上がる銀色の髪。見開いた真紅の両眼は鋭く敵を射抜く。


 その立ち姿は、折れることを知らぬ伸びた背筋で力強さを。

 その両腕は、瞬きの間に救い出した少女を抱えて優しさを。

 そしてその声は、この場の誰よりも強情であることを知らしめる、不敵な笑みと共に。



変身(マテリアライズ)完了(コンプリート)ッ……!」




 ――ここに、人を助ける正義の味方の誕生を宣言した。

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