新宿編
「海を見たかい・迷走」で、冒頭の明良と直輝とカイの会話が少しBLちっくで始まっているのに気が付いた方はいないと思いますが、元のはかなり遊んでいます。仕事もバーテンではなく、ホストでした。直輝はあんなおとなしい性格じゃなく、遊び人です。
「助けたいんだ。君達を」
「カイ。君は自分を何様だと思っているんだ」
「…俺は、そんなつもりはない」
「何も出来ない君に、何を助けると言うんだ」
「カイ、君も僕を受け入れて楽にならないか?」
「イヤだ」
「辛い事は何も無いから、ここは。さぁ、僕を受け入れて」
「俺は君達を」
「助けてくれればいい。その生身の身体で」
「傍に来ないで」
「僕らには、生身の身体が必要なんだ。まだまだ、愛してあげたいからね」
「さぁ、僕を受け入れて」
意識が堕ちてゆく気がする。
嫌な事を忘れて、ただ楽しめばいい。
「嫌な事?忘れる?」
堕ちてゆく。
誰か助けて。
「カイ。君を抱く時は、直輝って呼ぶからね。僕は明良でいいから、呼んでみてくれる」
「明良」
「いいね」
「なんだ、泣いているの?そう、君は好きな人がいるのか、でも、今は、僕らのモノだから、諦めるんだ」
「そうそう、こんな所に無防備に飛び込んだ。君がいけないんだよ」
僕らは、お互いが彼らの代わりでしかない。
生身の身体が欲しかっただけの彼ら。
誰か、助けて。