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プロローグ

 「……どうしてこうなった」


 俺こと伝馬和弥てんまかずやは溜息をつきながら、今置かれている状況に頭を抱えていた。

 時間帯は現在、深夜。窓の外を見れば暗闇が広がり、静かな時間が流れている。

 普通ならもう寝ていても可笑しくない時間なのだけど……

 未だに解決しない大きな悩みが、俺の眠気を妨げていた。


 そう、なにしろ俺、伝馬和弥は明日から先生という職業を全うしなくてはならないのだから。



 ……17歳という年齢で



 OK、分かってる。皆まで言うな。

 俺だって傍から聞いてたら、何馬鹿なこと言ってんだと思うだろう。

 17歳という年齢で先生という職業に就く。そんな漫画みたいなお話。

 

 しかし、現実は俺の意見を無視するように進む。いつのまにか勤める学校、住む場所。

 全ての必要事項が迅速かつていねいに行われ、気づけばもう明日が初出勤の日になっていた。

 それを証拠に、俺の目の前には明日着ていくスーツも用意されている。

 ここまでの物的証拠を並べられたら、事実として認めざるを得ない。

 

 

 俺は明日から先生になるのだと


 

 不本意ながらも……

 そこまで考えた所で、俺はこの事態の発端ついて思い出していた。

 やっぱり、俺があの時発した一言がこの一連の騒動の始まりなんだろうな。

 そんなことを思う。それはさかのぼること二ヶ月前。

 自分の師でもあるマーティン教授と話をしている時のことだった。

 


 俺は2ヶ月前までアメリカの某有名大学に通う大学生であった。

 このことを説明するためには、少し俺の生い立ちを説明しなければならない。


 伝馬和弥は日本のT県の平凡な家庭に生まれた、どこにでもいるような少年だった。

 顔も月並みだし、スポーツが出来るほうでもない。

 しかし、一つだけ他人と違う部分があった。


 

 それは頭脳……いわゆる俺は天才だった



 確かに勉強に関しては誰にも負けたことがなかった。

 覚えることも、理解することも周りの人達に比べて早かったように思う。

 でもそれが俺にとっての普通であり、気にすることはなかった。

 なので自分が他人と違うと気づき始めたのは、小学校高学年になった頃だった。


 それから程なくして俺は、アメリカに転校。

 自分の才能に目を掛けてくれた教授の下で勉学に勤しんでいくことになる。


 そして同級生の人達が高校一年生を全うしている頃、俺は大学の4年生を迎えていた。

 その当時の俺は、大学院に進むか教授に頼んで研究機関に入れてもらうかの選択肢に頭を悩ませていた。

 そんな俺の様子を眺めながら、教授は俺に向かってこんなことを聞いてきた。


 「和弥~。お前ってさ、昔なりたかった職業とか何だった?」


 唐突に投げかけられる質問。

 教授は良く意味もなくこうやって、問いを投げかけてくることがあった。

 いつものことか、そう思い適当にあしらうため


 「覚えてません」


 と一言。

 だが、そっけない態度が気に入らなかったのか


 「はぁぁぁああ!? 覚えてない? 何言ってんのさ、お前」


 バカでかい声で反論してくる。


 「俺がそんな回答求めてると思ってんの? もし覚えてなかったとしてもさぁ、可愛い可愛い教授さまのために、面白回答の一つでもしてくれないと!」


 相変わらずムカつく物の言い方だ。

 こんなんでも、世界が認める偉大な科学者なのだから困る。

 そこまで言われたら、黙っておく訳にはいかない。

 俺は頭の中で、思考を巡らせる。そして……


 「そうですね。学校の先生……になるのが夢だった気がします」


 そう、俺は答えていた。それを聞いた教授は


 「へぇ、先生ね。和弥が」


 少し驚いた表情でそう言う。


 「自分で分かってますよ。先生には向いてないことぐらい」

 

 少し自虐気味にそう言う。しかし教授は


 「でも、俺は受けてみたいぜ。伝馬先生の授業って奴をさ」


 「本気で言ってるんですか?」


 「マジ、マジ」


 フォローしてくれる。

 でも、どうも俺は納得できなくて


 「そう言われても、俺が先生なんて想像できませんよ」


 そんなことを口にする。

 すると、教授はその言葉を待っていたかのように


 「……和弥、言ったな?」


 ボソリと呟く。

 何かと思い、視線を教授の方へと向ける。

 そこには不適な笑みを浮かべる教授の姿があって


 「なら、実際にやってみれば良いじゃねぇか。先生っていう職業をさ!」


 この一連の会話がまさしく、俺が今おかれている状況を作り出した最大の原因になったのだろう。  

 これを機に俺の置かれている状態は一変し、それから2ヵ月後。 

 まさか俺が再び、生まれ故郷日本。T県に帰ってくることになろうとは。

 それも先生になるために……


 正直不満はたくさんあった。頭にくる気持ちもあった。

 あそこでまだ研究したい。そんな思いも……

 しかし、故郷にまた戻ることができたのは正直言ってうれしかった。

 もう帰ることの出来ないと思っていた場所。

 この地を踏んだ瞬間によみがえる記憶、思い出の数々。

 そう思えば


 「まぁ、こんなのもありかもしれないな」


 俺は一人、ボソリと呟く。

 もうここまで来てしまったのだ。考えていても仕方がない。

 俺は明日から先生。一人の社会人となるのだ。

 遅刻しないためにも、明日の準備を開始する。

 するのだが……



 一つ、嫌なことを思い浮かべてしまう



 これから俺が勤める学校は高等学校である。

 担当するクラスは事前に知らされており、2年生のクラスを担当することが分かっていた。

 高校2年生、年齢にすると16か17の生徒を俺は相手にすることになる。

 ちなみに俺の年齢は17歳。

 そこから導き出されるのは、必然的に俺と年齢の近い生徒に授業をするということ。

 これは……もう……


 「問題に、ならなきゃいいなぁ」


 そう思わずにはいられない。

 明日から大きな苦労を背負う予感を感じつつも、止まっている手を動かし明日の準備を再開するのであった。

はい、知らない人がほとんどでしょうがお久しぶりです。

再び書き始めたtakutoです。


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