表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

勇者ケルサスの子

僕の父は勇者だ。

 20年前に魔王を倒して、世界から認められる偉人になった。


 家にはほとんど帰って来なくて、一緒に遊んだ記憶もあんまり無い。

 父はずっと外の世界で活躍していた。どこかで功績を挙げれば、父のファンだった友達がいつも一番最初に僕に教えてくれた。


「なんで知らないの? お父さんのことでしょ? 」


 友達はそう言って、馬鹿にしたような目で僕を見る。その子から僕はずっと父のことに興味が無いって勘違いされていた。否定しても意味が無くて、自分の親が有名人だから鼻にかけてるって言われたこともある。

 別に、僕だって父のことが気にならない訳じゃない。一番近くで見る父の背はとても高くて、憧れで、目標だった。

 カッコイイと思ったよ。僕が何か良いことをすればたくさん褒めてくれたし、間違ったことをすれば怒られた。


 だけど、父はあまり僕に関心が無かった。僕が街の外や外国での活躍を知りたいって手紙を送っても、帰ってくるのは僕や母の健康を気遣ったり、まだ帰れそうにないという謝罪だったり、テストで間違えた問題の解説ばかりだった。


 僕だって遠くで仕事している父に、わざわざ自分のテストなんか送りたくなかった。でも父は母に頼んでまで赤点の答案用紙を自分に送らせていた。近所の勉強が得意な幼馴染に頼めば、数分で教えてもらえるようなことをだ。

 父にとって、それが僕との交流になると思っている。


 ずっと、ずっとこんな感じ。


 父は僕の一番欲しいものを与えてくれない。ちょっとだけズレてる。

 家に帰っても、仕事の話はしてくれない。友達が聞きたがるのは、どこにも出回っていない父の冒険の裏話なのに。

 そしてだんだんと僕は、わざと口を閉ざしている意地悪な奴だと思われていく。


 父のことは嫌いじゃない。でも、大好きでも無かった。


 だって僕はどれだけ頑張っても、父には追い付けないから。僕は父とは違う人間で、きっと得意なことや苦手なことは違う筈なのに、皆は僕に父と同じになることを求めてくる。小さい頃はそれすら嬉しかったけど、僕が大人の父に近づいていくと途方も無い差に気づいてしまった。


 父が軽く振るう剣が重い。

 父が簡単に打ち解けられる人間関係が上手くいかない。

 父がすぐに理解できることが分からない。


 練習を続けたら、そのうちできるようになる。って父は僕を励ましてくれたけど、僕と同じ年の頃にはもうモンスターを倒したり、町の外へ冒険に行っていたりした。そんな話を父の古い知り合いから聞かされる度に、僕は父の廉価版なんだと言外に蔑まれた。

 

 よく初対面の人に言われるんだ。

 勇者ケルサスに息子がいるのは知ってた。でも、名前は知らないって。

 

 自分でもこれが悔しさなのか、悲しさなのか分からない。

 つくづく勇者の息子が嫌になる。


 僕の祖父は僕と同じで大したとりえの無い平凡な人だったけど、父が魔王を討伐すると”勇者の育て親”としてちょっと有名人になった。

 なんでだろう。祖父は自分の子が勇者なのに、とか本当に血が繋がってるのか? なんて言われない。僕は食事中の所作や歩き方ですら毎日毎日父と比較されるのに。

 そして、一度も父と”同じように”できなかった。


 ケルサスの子、勇者の子。

 僕の名前を憶えてる人なんかいないでしょ?





















今回は18禁無しで行きたい。

友人とどちらが先に10話投稿できるかゲームをしています。

毎日は無理ですが、数日に1話のペースで進めていきたいと考えてます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ