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-1- 夢の始まり

――夢を持たぬ者に、この世界は存在を許さない。


 この異世界レヴェリスに降り立った時、最初に聞かされた言葉だった。


 人々は夢を抱き、その夢の大きさと純度によって力を得る。

 「剣聖になりたい」と願えば剣の加護が与えられ、

 「英雄になりたい」と願えば人を惹きつける才能を得る。


 それが、この世界の理。


 だが、俺のスキルは違った。


 《夢喰むくい》――

 他人の“夢”を喰らい、その力を奪う。

 この世界の理に逆らう、忌み子のスキル。


 


「お前は……存在してはいけない」

 そう言って、俺を追放したのは“夢騎士団”の長だった。

 理由は単純。俺の存在が、世界の均衡を壊すから。


 望まぬスキルを与えられた俺は、

 夢を持てない“空虚な存在”として、奈落の底――“無夢の地”へと落とされた。


 


 ……そんなはずだった。


 


「……っ、だれ、か……たすけ……て……っ!」


 叫び声に、足が止まった。


 砂の吹き荒れる荒野。

 そこに、ボロボロの服をまとった少女がいた。


 目を奪われた。

 白銀の髪に、空色の瞳。

 何より――“強い夢の輝き”が、彼女から溢れていた。


「……助けが、必要か?」


 俺の声に、少女は一瞬だけ目を見開いた。

 だがすぐに、震える声で言った。


「……こっちに来ないで……あなた、“夢喰い”でしょ……?」


「……知ってるのか、俺のこと」


「だって……さっき、夢騎士団の人たちが……あなたを“災厄”って……」


 


 ああ、やっぱりそうだ。

 この世界に、俺の居場所なんて、どこにもない。


 


 けれど――彼女の足元には、折れた剣。

 その肩には、深い傷。

 そして、背には朽ちかけた“夢の紋章”。


 夢を失いかけている。


 


「なぁ」俺は言った。


「お前の夢、なんだ?」


「……?」


「守りたいものがあって、戦ってたんだろう? なら、まだ終わってない」


 


 少女の瞳が揺れる。

 涙が零れ落ちた。


 


「……“世界を救う”って、夢だった」

「でも、誰にも信じてもらえなかった。私の力なんて、みんな笑ってた……」


 


 ――こんなにも眩しいのに。


 


「じゃあ、俺が信じる。お前の夢。だから――」


 俺は手を差し出した。


「……夢、喰わせろ。少しだけ。力が必要なんだろ?」


 


 少女は迷ったように俺を見て、そして――


 そっと俺の手を取った。


 


「……ありがとう。……私、リュミエル。あなたは……?」


「名乗るほどのもんじゃないさ。けど――」


 俺は初めて、誰かと“夢を分け合った”。


「俺の名前は、クロウ。……夢喰いの、クロウだ」


 


 こうして、“世界に拒まれたふたり”は出会った。


 これは、彼女の夢を守るために、

 そして、自分だけの夢を見つけるために戦う、そんな物語の始まり

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