01話-05 過去だって、思い出・・・よ・・・ね・・・。
「なんだお前、気付いてなかったのか?」
ロイがそう言った。
「・・・・。」
シグマは言葉を失った。
「ん~、まぁ確かに、女の子って言われたことなかったなぁ・・・」
ロイは言葉を付け足し、
「でもまぁ、普通に見てりゃわかるだろうに・・・」
そう追い打ちをかけた。
気付く気付かないの前に、そんな疑問すらなかった・・・はずなのだが・・・
「・・・あっ・・・」
たまに湧き上がる「守ってあげないと・・・」という気持ちを思い出した。
理由がわからなかったが、やっと合点がいった!
シグマはそのことを思い出し、顔を紅らめた。
あのあと・・・、
スージーが走り去っていったあと、ゆっくりと宿に帰ってきたシグマは、宿の入口で居心地が悪そうに座っているロイと会った。
「スージー・・・来た?」
シグマが小さな声できくと、ロイは親指で宿の扉を指さし、
「泣きながら帰ってきた。」
と教えてくれた。
ああ、それで外でスージーが落ち着くのを待ってたんだなぁ・・・
シグマはそう思った。
「スージーが水浴びしてたんだ・・・」
シグマがそういうと、ロイは短く考え事をして、察したように、
「まぁ、見られちゃ恥ずかしいだろうなぁ・・・」
わかりきったようにそう答えた。シグマは思わずロイに、
「・・・えっ・・・女の子って知ってたのか・・・?」
そう投げかけた。
ロイは短くため息をつくと、
「そんなもん、言われなくても気づくだろう。」
淡々とした答えが返ってきたのだ・・・。
シグマは呆然とした・・・・。
泣きながら帰ってきたスージーをファルスは、「なにがあったの?」と優しくなだめた。
スージーはファルスの胸にうずくまり、
「・・・見られた・・・」
と繰り返した。
部屋を一瞥する、今からゆっくりと逃げるように出ていこうとしているロイがいて、シグマがいない・・・
そして濡れた髪と服装・・・
なんとなく状況を想像したファルスが、スージーの頭を撫でながら声をかける
「性別のこと知ってもらいたかったんでしょ・・・」
スージーの呟きが止まった。
「・・・でも・・・」
「ん?」
ファルスの声を聴くとスージーはファルスに向かい顔を上げ
「でも、あんな知られ方、いやだもん!!」
駄々をこねる子供の泣き顔で言った。ファルスは困った表情を浮かべ「そうだねぇ・・・」とスージーの頭を撫でなだめた。
「まぁ、想像通りだったってことだねぇ・・・」
スージーを個室のベッドに寝かしつけたファルスは、そう呟きながら宿の入口にゆっくりと向かい、ドアに手をかけ開けた。そしてすぐさま わざとらしい口調で
「おお、探しに行く手間が省けたねぇ・・・」
と声を出した。
そこには気まずそうにたたずむシグマがいた。
「わかってたくせに・・・」
シグマの返事にもとれる言葉を聞いたファルスは、
「さあ、何から話そうかねぇ。」
笑顔でそう言った。