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いつまでも旅の途中  作者: カピパラ48世
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01話-04 過去だって、水には流せない!

「あいたたた・・・」

勝ちを譲ってあげたのはいいが、ちょっと地面へ転がった時のダメージはちょっと痛かった。

しかし、嬉しそうに去っていったシグマの顔を思い浮かべると、たまには負けなきゃいけないかなぁ・・・と、クスクスと笑った。

「あたた・・・」

笑いながら痛みを感じ、周りを見た。転んだせいで体が痛いし、汚れたし・・・。

「水浴びでもするか!」

少々弾んだ声を出し、嬉しそうに湖に向かって歩き始めた。



「・・・・」

シグマがトボトボと宿に向かい歩を進める。

まぁ、冷静に考えて、あれは卑怯だったかなぁ・・・

ムキになって無理やり倒したことを後悔し始めた。

「スージーは笑っていたけど・・・」

何やら胸に何かがつかえたように、胸が痛んだ。

なんだろう、年上の少年に、力でゴリ押しする自分に強い罪悪感を感じ始めた。

最近は特に・・・剣では負けるが・・・力では自分の方が強いし、体格も良い。またよく体調を崩す。そんなスージーを見ていると守ってやりたくなる。なんだか思い返すと理不尽なそんな気持ちにモヤモヤする。

眉間に皺を寄せただけのしかめっ面を浮かべ空を見上げた。


「・・・・」


シグマは思い返したように踵を返した。




「うーむ・・・」

先ほどの手合わせをしていた場所に来てみたが、そこにスージーはいなかった。

まぁ。ずっとそこに留まる理由もないから、いなくなって当然なのだが・・・

何気に地面を見たシグマが、スージーのものと思われる足跡を見つけた、

「湖にでも向かったのかな・・・」

湖へと続く痕跡を見てそう呟いた。



暫く歩いていると水音が聞こえてきた。

「こっちか・・・」

ゆっくりとその音に向かって歩をすすめる。

”どうやって一言目を出そうか・・・”

あまりにも我儘な勝ち方を押し付けた手前、言葉選びを慎重にしようと悩んでいた。

自分のタイミングでないところで見つかっても言葉が出せないだろうから、静かに近づくことにした。

あと少しの茂みを抜ける辺りで、スージーがこちら側に向いてバシャバシャと両手で顔に水をかけながら顔を洗っている姿が見えた。

「ぷはー!」

勢いよく顔を上に向け気持ちよさそうに、胸を張った。

”・・・えっ!!・・・・”

シグマが驚きのあまりに目を開き、動きが止まった。

”・・・あれっ・・・???”

顔は見慣れているのだが、身体は想像と違う状態にあったのだ、言葉を失い、呆然と目を見開いた。


そして・・・スージーと目が合い・・・露骨に気まずい表情を向けられた。



鼻歌交じりに服を脱ぎ、護身用に固そうな木の棒を持ってスージーは湖に入っていった。

木剣は水にぬらしてはあまりよくないからということで服と一緒に水辺においてある。

先程打ち付けた腰くらいまでの水位のあたりで湖の中央に背を向けて水浴びを開始した。

一通り水を体にかけ、

”気持ちいいわね・・・”

そう思いながら屈み、顔を水で洗い汗を落とす。

「ぷはー!」

気持ちよさそうに声を上げて前を見た・・・・途端、スージーの動きが止まった。

「・・・・・。」

目を見開いて言葉が出なかった。

そこには・・・なにやら見てはいけない物を見てしまったという表情をしたシグマの姿があった。



短めに長い時間が過ぎた。

おもむろにスージーが服のある方へと歩き始める。

シグマは表情を赤らめながら、目が離せなかった。

スージーは淡々とした動作で、濡れた体のまま下着、ロングパンツを履き、胸にさらしのようなものを強めに巻き胸のふくらみの存在感をなくし、その上にシャツを着た。

「・・・あ・・・あの・・・スージー・・・」

しどろもどろにシグマが声をかけてきた。

・・・途端・・・

スージーが我に返り、恥ずかしそうな表情でシグマを見た。


シグマからしてみると、いままで冷静に服を着ていたスージーが、目尻に涙を浮かべながら一気に顔を紅らめ、こちらを怯えるように見られては言葉が出なかった・


スージーはシグマから目をそらすと、うつむきながら街に向かって走っていった。

「・・・えっ・・・」

シグマは事の状況が飲み切れてない状態で置き去りにされた。


湖の方向から吹く風はとても涼しげだったが、シグマはなんだか体温が上がっていた。

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