01話-03 過去だって、思い出なんだから!
カン!カン!!と乾いた音が響いていた。
「ほら、シグマ!そんな動きでは、また負けるぞ!!」
スージーがシグマにけしかける。
そのあおり言葉を受け、シグマはムッとすると、
「いつまでも負けっぱなしでいると思ってるんだろ!」
そう言いながら、木剣を力任せに振り回してきた。スージーはそれを左手で持った木剣で軽くあしらう。
カンカンと小気味よい音が響いた。
執拗に振り回すシグマの剣戟を、何度も捌いているのにちょっと疲れてきたので、そろそろ決着をつけようと考え始める。
シグマが力任せに上段から切りかかってくる。それを確認すると左手に持っていた木剣を素早く右手に持ち替え、その空いた左手を軽く握り、勢いよくシグマの木剣を握る右手を払った。
どちらかというとシグマの右手が払われたというよりも、押さえつけた左手の勢いでスージーが右側へずれたような感じだったが、結果的にシグマの木剣は狙いから外れた。
「はい、シグマの負けー!」
素早くスージーがシグマの喉元に、右手に持ち替えた木剣の先端を突きつけた。
ニッコリとするスージーに対し、シグマは不服そうだ。
まったく完敗のその状況でシグマは右手を内側へ力任せに振った。
「えっ!!!」
小柄なスージーは、左手をシグマの右手に押し当てたような体制でいたものだから、そのまま なぎ倒されるが如くに地面に転がった。
「・・・あいたたた・・・」
左手で体をさすりながら体勢を整えようとしたスージーに、シグマが木剣を突きつける。
「俺の勝ちだ。」
ぶっきらぼうにスージーにそう言い放つ。
「ほえっ・・・?」
一瞬何が起こったのか理解できなかったスージーは呆然とその切っ先を見つめた。
そして思い返す、
”いやいや、これはありなのか?”
そう思ったが、シグマのまじめな表情をみて、なんだか可愛く思えてきた。
いつも悔しく思ってたのかしら・・・そう思うと
「ふふふ・・・」
クスクスと笑みがでてきた。
「そうね・・・今日は勝ちを譲ってあげるわ。」
楽しそうに答えた。
「あー、まるで俺がインチキで勝ったみたいに・・・」
いつも通り淡々とした口調でシグマの言葉が聞こえた。
心なしか嬉しそうな態度を見せる彼を見て
“・・・えっ・・・もしかして・・・ずっと負けてたのが悔しかったの・・・か・・・な・・・?"
スージーが苦笑いしながら心の中でそう思った。