表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤリナオシ 〜ヘイセイ32 世にも可笑しな異世界召喚〜  作者: ジャク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/16

chapter 12

「じゃあみんな、この世界に来て1週間が経ちそうだけど、何か変わったことはありますか〜?ちょっとしたことでも大丈夫」

 調子を取り戻してきた間野、集まったクラスの奴らに呼びかけた。全員、どうにか集まったみたいだ。

 「・・・」、彼女からの呼びかけがあったが、その後には沈黙が流れる。

「えーっと、挙手制でどうぞ!」

 間野の言葉に付け足したのは、羽山里菜子(ハヤマリナコ)。羽山もよく間野と一緒にみる女子の1人だった。背は女子の中でも低い。コイツとも、昔はよく話していた。

 羽山の付け足しにも、どうしたらいいか探り探りの面々。

「1人ずつ聞いてみるしかないか」

 友海が方法の変更を提案する。腰に手を当てる彼女の何気ない仕草が、それだけで様になっていた。行動的で周りからの評価も高い彼女だからだろうか。彼女らしく、すぐに周りとコンタクトをとりだしている。

 視界の隅で、そんな彼女を無意識に追っていた。

 頷く里田。間野が角屋に「チェック表お願いしまーす」と。

 「はーい」、角屋はあらかじめ用意されていたのか、自作の名簿表をバックから取り出した。

その表を抱えるとボールペンを右手に持ち、かけているメガネをくいっと上げる彼女。なんとも秘書みたいな雰囲気だ、さすが成績優秀者。

(あんなの、いつ用意したんだ)

 俺は半分感心、半分面白がりながら、その様子を眺めていた。



 順番もまだ回ってこない、暇そうだし、と、目を瞑って寝に入ろうとしていた時だ。

「ねえ宗?」

 その声の位置は少し離れたところからだった。友海に呼びかけられて、俺は目を開けた。

 里田の隣にいた友海。彼女に顔を向けて、表情で尋ねる。

「寝てるとこごめん」

 教室の窓際端に置いた椅子、そこにもたれた俺は彼女の歩み寄りと同時に体を起こす。今まで里田と何か話していたみたいだった。

「いや、別にいいんだけど。」

「…あのさ、宗は何を知ってるの?」

 唐突に提示された疑問。抽象的だが、ストレートに意味合いが伝わってきて、それを聞いた瞬間、俺は察した。何を聞かれているのか、なぜそんなことを聞くのか。

 ガヤガヤと騒いでいた周りはいつの間にか鎮まりかえっていた。それもそうか、俺は周りを見回す。

 それほどコイツらにとって、独立している俺の行動は不明確な点が多く、だが場を共有している時は嫌というほど変な目立ち方をしている。

 遺憾だが、確かに側から見たら疑われる点は多々あるとも思う。面倒な状況だ。クラス全員の視線が俺に向けられているのが、見ないでもわかる。こういう目立ち方は本当に嫌だ。

 俺は黙っている。

「答えられないの?」

 友海の口調がわずかながら強くなったのを感じる。

「何も知らない」

 淡々と答えた。

 友海は元の優しい口調に戻る、「そう…」。

 だが、わかった、と彼女の言葉が続く前に、遮った声が。

「知らないはずねーんじゃねーの?」

 声の主は日堂。

 俺は日堂や桐田たちがいる方を横目で見た。どちらかというと、睨む、の方が近いかもしれない。

「今日の朝のこともあるし、いつも俺たちを避けてるよね?怪しすぎでしょ」

 桐田もそれに便乗する。言葉の途中からは視線を外し、耳だけで残りの言葉を聞いた。見続けていたら今以上に気持ちが昂りそうだからだ。

 いつも俺たちを避けてる?避けさせたのは誰だ。

ウンザリしながら、俺はため息をついた。

 「そう言わないの」と、友海は桐田を制止してくれた。だが、

「でも、どうなの?私たちも疑いたくはないけど。宗、ホントのこと、話してくれないかな?」

 やはりはっきりさせたいらしい。でもな、

「…悪いけど、答えられない。」

 答えられない。光り輝く友海の影、今日の朝の保健室、俺の姿を模したバグ、あの教師が言った「キーマン」ということ。俺の判断は、答えられない、その結論に至った。

 俺以外の全員が視線を変え、俺の話は終わったと思っただろう。桐田もやれやれと手を上げていたさ。でも、俺も言いたいことは言わせてもらう。

「お前らが俺を信じられないように、俺もお前らを信じられない。だから俺は何も言いたくないんだ」

 こちらの言い分も少しは言っておきたい。

「私たちが、敵ってこと?」

 その場を離れようとした友海だったが、踵を返す。

「敵ってわけじゃない。ただ、敵と味方の判別がつけられない状況なんだ。信じてはもらえないだろうが、俺にはそういう出来事があった。もちろん証拠も何もないが。力になれなくて申し訳ない」

 謝罪の言葉は一応のせておく。だが、胸の蟠りがまだ収まらなかった。床に置いてあるバックから財布を取り出しつつも、もう一度口を開く。

「…後、俺が疑わしいつったのはどいつだ?」

 立ち上がってそう言うと恐る恐る手を上げ出したやつが1人。大体予想はついていた。

「ハッまたお前か…」

 歩き出しながら呆れて吐き捨てる。友海が俺と話す前に話していた里田。どうやらこの尋問は彼女が発端らしい。

 この前の恩もどこに行ったのか。本当に腹が立って、つい一瞬、本気で睨んでしまった。

 里田にさっきまでの笑っていた面影はどこにもなく、ただ怯えているような目をしていた。

 散々な目に遭い、しかも疑われる始末。

 この世界に来てからの、いや、おそらくそのもっと前からの恨み妬みみたいなものの一片が出てしまったんだと思う。

 もしかしたら、その憎悪を示すということを、俺は無意識に望んでいたのかもしれなかった。

 居心地が悪くなった俺はクラスメートたちの群れを裂いて、教室を出ようとする。

「どこ行くの?」

「下の自販機で飲み物買ってくるだけだ」

 友海に聞かれると俺は振り返ってそう答えた。


「え、買えんの…??!」

 そこで突然、ヒリヒリとした空気を何の前触れもなく壊せる谷田。

「空気読め…」

 俺は谷田に指差しながら忠告する。だからなんでこう谷田は変な空気を180度変えてまた違う変な空気にできるんだ。

 横にいた実野が何やってんだと言わんばかりにバシッと谷田を叩くと、こちらを見て笑いながら敬礼をする。俺も手を上げて微笑み返した。

疑いはかけられているが、こうやって笑いかけてくれるやつやそういうことを気にしない谷田みたいなやつがいて純粋に嬉しかった。


…少し気が楽になったが、そういう感じではない奴らに向けて、されど全員にも向けてこうも言った。

「別に監視つけてくれても構わない。それじゃ」

 後ろ歩きで教室から一歩出ながら、手を広げ、自らを晒すように。

教室に背を向け歩き出す。


 ポケットに入れていない左手に握られた、赤く折りたためる財布。ふと見つめると脳内で言葉が再生された。


10のご縁で15円


まただ。


「誰に言われたんだか…」

その言葉の主はわからないままだった。



・・・



 学校の中庭でみんなが騒いでいる。陽が落ちて、学校の非常用倉庫から取り出してきたランプをいくつも置いて、それぞれ購買で買った、いやとってきたと言うべきか、食べ物を片手に団らんを楽しむ。

 

 低いブロック塀に座りながら、俺は缶のカフェオレを飲んでいた。そして穏やかに灯っているランプの明かり、楽しそうに騒ぎ立てるX組のやつらをぼーっと離れて眺めていた。


「ちゃんと食べてますか?」


 その声は、間野の声だった。俺が驚いて振り向くと、彼女は優しい目でこちらを向いている。

目が合って、目をゆっくりと逸らしてしまう俺。

「…ああ、食べてるよ」

 みんなの方に視線を戻しながらいった。

「そんなふうには見えないけど」

「じゃあ最初っからそう言ったらどうだ?」

「もう相変わらずだなぁ」

 そういう彼女は笑っている。あの時の、手を振り払った時のピリピリした感触はなく、どこか少し楽しくて、落ち着いていた。

「話し合いの時からなんも食べてないでしょ」

「ああ」

「隣、良い?」


 一瞬戸惑った。


 なんか距離が近い。この世界(ここ)に来たことで、久しぶりにこんなに間野と関わった。

関わり方がわからない。でも最初とは違う。胸が切ないが、憤りや蟠りというものがなかった。でも苦しい。この詰まるものはなんだ。


「…お好きにどうぞ」

 俺はやっとそう言えた。

「じゃあ失礼しまーす」

 彼女は俺の隣へと腰掛けてくる。そして俺と同じようにみんなの方を見た。

「ちゃんと食べないと倒れるよ?」

 「倒れない。…倒れたくても」、なぜかついつい出てしまう。

「え?」

「夕飯は帰ってあるもんを食べる」

「せっかくみんなでいるのに」

 「…わからないんだよ。関わり方が。」、俺は小さく呟く。でもおそらく、間野にも聞こえている。誰かにほんの少しでも知っていて欲しかったんだろう。

 間野が喋り出す前に俺はまた喋り出す。

「少しは元気になったみたいだな」

 そう言葉をかけると彼女は、先程の軽い感じではなく、小さく恥じらいもあるかのように反応した。

「あ、うん」

「よかった」

「…ありがとう、さっきは。ほっとした」

「どう致しまして」


「…ああ!そうだ!これ!これ食べて!」普段は見せないおとなしさをこれ以上は見せまいと、彼女は俺に持っていた菓子パンを差し出す。

「は?え、いや、これお前の…」

「いいからいいから!お礼だと思って!」

 そう言って彼女の手がまた俺の手に触れた。その手に菓子パンを握らされる。俺は固まって、されるがままにパンを受け取った。

 彼女の手から伝わる彼女の体温、直視できない彼女の瞳。


(なんだ、今度はなんだ…。なんでこんな緊張してる?)

 前は目の敵だったアイツが、今は俺の心を揺らしている。


「じゃあ、私むこう行くね!」

彼女が手を振って遠のいていく。


何かが、俺の中で変わり始めていた。


認めきれなかっただけで、俺はこの感覚を知っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ