第7話【散歩】
「おい、秋葉原までどれだけの距離あるんだ?こうしてもう既に2時間は歩いてるぞ」
荒廃した砂漠の相貌を呈する旧神保町を歩きつづける二人。
「地図の通りだともう少しのはずだ。しかしなんだ...暑いな...」
東京の中心から半径20Kmほどにかけて大規模な空爆が行われたと聞いている。これにより日本の法は消え去ったということも。
「それにしてもよ、相変わらずひでぇもんだな。建造物と言えるもんもほとんどねぇ。本当にここに文明があったのかさえ疑っちまう」
歩いている最中、時折半身のない遺体が大雑把に捨てられているのがよく見えた。
「まだここの治安は良くなってはいないようだな」
そんな会話を交わしながら歩くこと3時間。
「やっと着いたか...ていうか遠すぎだろ!」
赤く光るラストNo.の横で、ロックが刀を地面に刺した。
「あと数キロメートルであいつの拠点に到着だ。さ、あともう少しだぞ、頑張ろう」
ロックは少し笑ってラストNo.の方に向き直る。
「ったく、俺だって疲れるんだぞ...?」
愚痴をこぼすラストNo.であった。
秋葉原のエリアに入ってから一気に倒れている人の数が増えた。中には最近やられたんじゃないかという人の遺体もあった。
何かあったんだな。そう直感した。戦争はまだ終わっていない。
「おい」
後ろから声がした。その声はとても低く、地の底から響いてくるようなものだった。
「...」
二人とも答えずに、返事の代わりとでも言うように立ち止まった。
「武器なんて取り出すなよ。その瞬間に頭が弾け飛ぶぜ」
またか。ここに来るまでにかなりの頻度で荒くれ野郎にこうやって足止めを食らった。
「(おい...どうすんだよ)」
頭に直接語りかけてくるラストNo.の返事の代わりのように、ロックは刀の柄に手を掛ける。その瞬間、
バシュッという音を立ててその男の後ろに立った。
最初からそこにいたかのように。
バンバンバンバンとそこにいたはずの男を狙った拳銃の弾丸が空を切る。
「なっ...」
全身継ぎ接ぎの服を着た男の後ろに立ったロック。
抜刀したかと思えば、その男の背中にばつ印を描いた。目の前の男は血を吐いて倒れたのだった。
「おいおい...お前結局また切りやがって、さっきほ切るのは面倒だって言ってたじゃねーか」
「仕方ないだろ、どうせこいつも人の数人は撃ってるだろうし」
呆れたようにロックを見るラストNo.であった。